海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

米兵の性暴力事件に抗議する

2008-02-19 19:29:56 | 米軍・自衛隊・基地問題
 昨日は「住基ネットに反対する市民ネットワーク沖縄」(反住基ネット沖縄)の会議に参加した。北谷町で起こった米兵による女子中学生への性暴力事件に関して、反住基ネット沖縄でも2月15日付で抗議声明を出した。以下に引用して紹介したい。
 
               米兵女子中学生暴行事件に抗議する声明
 またしても恐れていた事件が起こってしまいました。2月10日、在沖米海兵隊所属の二等軍曹が、女子中学生を連れ去り暴行するという痛ましい事件に心から憤りを覚えずにおれません。「助けて!」と友人に電話した少女の恐怖、絶望感はいかばかりであったでしょうか。想像するだけで胸がえぐられる思いがします。1995年の少女暴行事件は、今なお私たち沖縄県民の脳裏から消え去ることはありません。事件が起こるたびに米軍司令官や関係者は何度となく「綱紀粛正」を表明しました。しかしながら米兵による事件事故は後を絶ちません。アフガニスタンやイラクへの出撃、訓練基地として日々戦闘訓練が行われている沖縄の米軍基地。人殺しの訓練をしている米兵に「綱紀粛正」「教育の徹底」といっても何の意味も持ちません。米戦闘機の墜落の恐怖、実弾演習の流弾の恐怖、爆音等々。私たちは、もうこれ以上軍事基地と隣り合わせの生活を強いられるのはご免です。怒りは限界に達しています。
 町村官房長官は、主要な場所への「防犯カメラ」の設置や米軍と警察の合同パトロールの実施を検討したいと表明しています。これまでも沖縄市の中の町公園に「スーパー防犯灯」が設置され、また事件が起こったミュージックタウンでは「防犯カメラ」が異常なほど設置されています。しかし犯罪防止には効果を挙げていません。カメラは一般市民をも見張るだけでなく、反戦、反基地運動を取り組む人々をも監視することになると識者は懸念しています。監視社会に反対してきた「住基ネットに反対する市民ネットワーク沖縄」は、人権と活動の自由を犯す恐れがある「防犯カメラ」の設置には強い疑念を抱かざるを得ません。犯罪の温床となっている軍事基地そのものをなくさない限り、事件事故はなくならないと考えるからです。しかしながら、日米両政府は、今回の事件が米軍基地再編の推進に支障をきたすことを恐れ、その対処策に腐心しているとしか思えません。私たちは、今回の女子中学生暴行事件に強く抗議するとともに、このような事件を繰り返さないためにも一日にも早く犯罪の根源となっている軍事基地の撤去を要求します。
 宛先 ①駐日米大使 J・トーマス・シーファー殿 ②在沖総領事 ケビン・メア殿
③在日米軍海兵隊司令官 リチャード・C・ジルマー中将殿 ④総理大臣 福田康夫殿
⑤外務大臣 高村正彦殿 ⑥防衛大臣 石破茂殿 ⑦沖縄防衛局長 真部朗殿
                 2008年2月15日
                 住基ネットに反対する市民ネットワーク沖縄

 事件が起こってから十日になるが、この間にも飲酒運転や民家への侵入で米兵が逮捕され、偽ドル札を使った事件も明らかになっている。声明にもあるように「綱紀粛正」「教育の徹底」をいくら打ち出しても無意味であることを、米軍自らが証明している。
 会議で議論になったことだが、被害者の問題をあげつらうことによって、問題の本質をずらしていくことが意図的にやられているのを感じる。米兵の犯罪だけを大きく取り上げるのはおかしい、という主張もそうだ。問題は犯罪を犯した米兵にあるのであり、被害者にあるのではない。そして、日米安保条約の負担を沖縄に集中的に押しつけている日本政府と日本人の問題こそが問われなければならない。第二次大戦から63年も経つというのに、異国の軍隊が沖縄並みの規模と機能で駐留している地域が世界のどこにあるか。その異常さを解決するためには米軍基地の撤去しかない。それなくして米兵による犯罪を防止することなどできないのは、沖縄の歴史と現実を見れば自明のことだ。
 また、米兵による犯罪は日本のそこかしこで起こっていることではない。沖縄のほかには岩国や厚木、横須賀など、やはり米軍基地の過重負担を負わされている地域で起こっているのだ。特定地域に米軍基地を集中させることで、日米安保条約の問題が全国民の関心の的になることを回避し、基地問題について思考停止させるのが日本政府のやり方だ。被害者の問題をあげつらい、米軍だけが性犯罪を犯しているのではないと主張するのは、米軍基地の負担をそれらの地域に強いている現実から目をそらさせるはたらきをする。
 なぜ沖縄や岩国、厚木、横須賀などに米軍基地があり、そのために地域住民の生活が脅かされ、苦悩を強いられなければならないのか。その苦悩は日本国民全体の意思=政治判断でもたらされているのだ。自分は米軍に生活を脅かされることがない地域に住んでいるからと、他人事のように事件を語ってすませていいのだろうか。米兵による事件は日本の政治のあり方がもたらしている構造的問題であり、個人の問題ではないのだ。
 かつて「国体護持」と「本土防衛」のために沖縄を「捨て石」にしたように、今は日本「本土」の平和と安全のために沖縄を日米安保の「捨て石」にしている。ヤマトゥに住む人たちはそのことに恥ずかしさを感じないのだろうか。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『語りつぐ戦争 第1集』より2 | トップ | 高江の基地建設 »
最新の画像もっと見る

米軍・自衛隊・基地問題」カテゴリの最新記事