3月16日に開かれた県議会予算委員会に仲井真知事が出席し、総括質疑が行われている。知事出席の総括質疑は異例のことで、14年ぶりのことだという。県議会で野党が多数を占めるなか、県営林道開設、県立病院の独立法人化、泡瀬沖合埋め立て事業など、野党と対立する重要案件が多いことに対応したものだが、17日付琉球新報には県営林道開設について、次のようなやりとりが載っている。
〈仲宗根悟氏(社民・護憲) ヤンバルの林道整備率は全国の二倍以上だ。
知事 (林道は)造林、伐採のためにどうしても必要だ。最近は環境には注意を払いながら(整備)できる。
仲宗根氏 実際は林道周辺で材木が沢を埋めたり崩落が起きている。
知事 ヤンバルの人たちは保全措置を取っている。
仲宗根氏 伐採、下刈り、除間伐、植林にも補助金が出る。本当の意味の産業振興になっているのか。
知事 環境に注意しながら産業を継続し、安定的に拡大できるよう支援すべきだ。
仲宗根氏 自然を生かした振興はないのか。
知事 環境で食べられれば理想だが、伐採したり植えるのも生きた山だ。そういう(環境ビジネスの)手段としても林道は大切だ〉。
知事はあくまで林道開設を進める立場で答弁しているので、議論は平行線をたどっている。記事は要点を記しているだけだから細かいニュアンスは伝わらないだろうが、それにしても、知事の答弁は通り一遍で具体性に欠け、説得力がない。〈最近は環境には注意を払いながら(整備)できる〉〈ヤンバルの人たちは保全措置を取っている〉と知事は答えているが、実際には林道ののり面の土砂崩れ、沢への土砂、材木の流入・堆積、河川や海の赤土汚染などが発生しているし、環境破壊は止まっていない。さらに林道の拡大がマングースの移動を容易にしていることも指摘されている。林道工事によってヤンバルの希少生物の生存が脅されていることは、専門家から長らく指摘されてきたことだ。それに対して知事は、ただタテマエを述べているだけではないか。
〈環境に注意しながら産業を継続し〉と知事は言う。しかし、雇用対策として公共工事を進めるにしても、経済が右肩上がりの時代と今とでは状況が一変している。地方財政が厳しいなかで、費用対効果の面で本当に産業振興につながっているかが厳しく問われる。補助金を引き出すことが自己目的化された公共工事を、安易に〈継続〉できる状況ではないはずだ。
16日の県議会予算委員会総括質疑に先立って、仲井真知事は国頭村の県営林道予定地を訪れている。そのときの様子が、3月15日付琉球新報朝刊二面の「単眼複眼」で、外間聡記者によってレポートされている。県が建設を進めようとしている伊江原支線(700メートル)と伊江1号支線(550メートル)について、野党は予算削除を求めている。それに対応するために仲井真知事は現地を視察し、林道建設を求める国頭村森林組合などの訪問も行っているのだが、外間記者によれば〈自然環境への影響が指摘される既存の林道視察は見送った〉のだという。
〈知事は伊江原支線の建設ルートとなる約五十年前に開設された旧道を約五十分かけて登り降りした。周辺はリュウキュウマツの人工林とされるが、イタジイなど広葉樹を主体とする天然林に近い森のため、ちょっとした山登りのようだった。
目の前は、〇七年度に開設したばかりの伊江原林道だが、知事は入口に設置された看板を見ただけで、車で乗り入れることもなかった。わずか二キロ弱の林道だが、山肌をほぼ垂直に削るようなのり面が続き、いくつかの沢筋を分断して道路が造られている。工事期間には、沢筋に土砂が流れ込み、海岸を赤く染めた。野党が問題視する典型的な林道だが、この日の視察経路を設定した森林緑地課の長間孝課長は「知事から予定地を見たいという要望もあり、時間がなかった」と視察見送りの背景を説明する〉。
目の前にある二キロ弱の林道を視察するのに、どれだけの時間が必要だというのか。車で様子を見るだけなら、往復しても10分から15分程度だろう。それだけの時間も取れなかったというのか。多忙な知事が国頭村まで視察に出るのは、そう度々できることではないはずだ。ならば、この機会に予定地をはじめとして、既存の林道の状況も見ておこうと考えるのが普通ではないか。林道建設によってもたらされる利益だけでなく、生じている問題点も含めて現状を総合的に把握しておかなければ、正確な判断もできないはずだ。下手に問題の箇所を見てしまうと、県議会で野党に追及の材料を与えてしまうと「警戒」したのか。それとも、自分に都合の悪い情報は遮断してしまうことが習い性になっているのか。
視察経路を設定した長間課長がイエスマンとしての役割を果たし、視察経路から既設の伊江原林道をはずしたのだとしても、仲井真知事が見ようという気があれば、自ら注文をつけることもできるし、その場で判断することもできる。わざわざ国頭村まで視察に来ていながら、目の前にある既設の林道を避けてやり過ごすところに、仲井真知事の人柄というか知事としての器が現れている。何とも情けない話だ。
知事の視察は公費で行われている公務なのだ。嫌だから見ない行かないではすまされない。たとえそれが「不都合な真実」でも、直視しないでどうやって問題を解決するというのか。仲井真知事の人柄に加えて、周りにイエスマンが集まることにより、都合の悪い情報が上がらない仕組みができているのなら、仲井真県政の硬直化が進んでいるということだ。今年1月に仲井真知事は、ブッシュ政権の最末期だというのにピントはずれな訪米をしていたが、それもこういう硬直化の現れだったのだろう。苦言を呈して嫌な情報も突きつける側近がいなければ、どんな知事も裸の王様になるしかない。それによって知事が誤った政策判断をすれば、そのとばっちりを喰うのは県民である。
国頭村まで視察に行きながら、肝心の林道の問題点は見ようとしない仲井真知事は、そのことで自らの林道政策が結論ありきであり、信頼性に欠けるものであることを身をもって示している。外間記者の「単眼複眼」は、知事が何を視察したかだけでなく、何を視察しなかったかも記すことで、そのことを伝えている。
〈仲宗根悟氏(社民・護憲) ヤンバルの林道整備率は全国の二倍以上だ。
知事 (林道は)造林、伐採のためにどうしても必要だ。最近は環境には注意を払いながら(整備)できる。
仲宗根氏 実際は林道周辺で材木が沢を埋めたり崩落が起きている。
知事 ヤンバルの人たちは保全措置を取っている。
仲宗根氏 伐採、下刈り、除間伐、植林にも補助金が出る。本当の意味の産業振興になっているのか。
知事 環境に注意しながら産業を継続し、安定的に拡大できるよう支援すべきだ。
仲宗根氏 自然を生かした振興はないのか。
知事 環境で食べられれば理想だが、伐採したり植えるのも生きた山だ。そういう(環境ビジネスの)手段としても林道は大切だ〉。
知事はあくまで林道開設を進める立場で答弁しているので、議論は平行線をたどっている。記事は要点を記しているだけだから細かいニュアンスは伝わらないだろうが、それにしても、知事の答弁は通り一遍で具体性に欠け、説得力がない。〈最近は環境には注意を払いながら(整備)できる〉〈ヤンバルの人たちは保全措置を取っている〉と知事は答えているが、実際には林道ののり面の土砂崩れ、沢への土砂、材木の流入・堆積、河川や海の赤土汚染などが発生しているし、環境破壊は止まっていない。さらに林道の拡大がマングースの移動を容易にしていることも指摘されている。林道工事によってヤンバルの希少生物の生存が脅されていることは、専門家から長らく指摘されてきたことだ。それに対して知事は、ただタテマエを述べているだけではないか。
〈環境に注意しながら産業を継続し〉と知事は言う。しかし、雇用対策として公共工事を進めるにしても、経済が右肩上がりの時代と今とでは状況が一変している。地方財政が厳しいなかで、費用対効果の面で本当に産業振興につながっているかが厳しく問われる。補助金を引き出すことが自己目的化された公共工事を、安易に〈継続〉できる状況ではないはずだ。
16日の県議会予算委員会総括質疑に先立って、仲井真知事は国頭村の県営林道予定地を訪れている。そのときの様子が、3月15日付琉球新報朝刊二面の「単眼複眼」で、外間聡記者によってレポートされている。県が建設を進めようとしている伊江原支線(700メートル)と伊江1号支線(550メートル)について、野党は予算削除を求めている。それに対応するために仲井真知事は現地を視察し、林道建設を求める国頭村森林組合などの訪問も行っているのだが、外間記者によれば〈自然環境への影響が指摘される既存の林道視察は見送った〉のだという。
〈知事は伊江原支線の建設ルートとなる約五十年前に開設された旧道を約五十分かけて登り降りした。周辺はリュウキュウマツの人工林とされるが、イタジイなど広葉樹を主体とする天然林に近い森のため、ちょっとした山登りのようだった。
目の前は、〇七年度に開設したばかりの伊江原林道だが、知事は入口に設置された看板を見ただけで、車で乗り入れることもなかった。わずか二キロ弱の林道だが、山肌をほぼ垂直に削るようなのり面が続き、いくつかの沢筋を分断して道路が造られている。工事期間には、沢筋に土砂が流れ込み、海岸を赤く染めた。野党が問題視する典型的な林道だが、この日の視察経路を設定した森林緑地課の長間孝課長は「知事から予定地を見たいという要望もあり、時間がなかった」と視察見送りの背景を説明する〉。
目の前にある二キロ弱の林道を視察するのに、どれだけの時間が必要だというのか。車で様子を見るだけなら、往復しても10分から15分程度だろう。それだけの時間も取れなかったというのか。多忙な知事が国頭村まで視察に出るのは、そう度々できることではないはずだ。ならば、この機会に予定地をはじめとして、既存の林道の状況も見ておこうと考えるのが普通ではないか。林道建設によってもたらされる利益だけでなく、生じている問題点も含めて現状を総合的に把握しておかなければ、正確な判断もできないはずだ。下手に問題の箇所を見てしまうと、県議会で野党に追及の材料を与えてしまうと「警戒」したのか。それとも、自分に都合の悪い情報は遮断してしまうことが習い性になっているのか。
視察経路を設定した長間課長がイエスマンとしての役割を果たし、視察経路から既設の伊江原林道をはずしたのだとしても、仲井真知事が見ようという気があれば、自ら注文をつけることもできるし、その場で判断することもできる。わざわざ国頭村まで視察に来ていながら、目の前にある既設の林道を避けてやり過ごすところに、仲井真知事の人柄というか知事としての器が現れている。何とも情けない話だ。
知事の視察は公費で行われている公務なのだ。嫌だから見ない行かないではすまされない。たとえそれが「不都合な真実」でも、直視しないでどうやって問題を解決するというのか。仲井真知事の人柄に加えて、周りにイエスマンが集まることにより、都合の悪い情報が上がらない仕組みができているのなら、仲井真県政の硬直化が進んでいるということだ。今年1月に仲井真知事は、ブッシュ政権の最末期だというのにピントはずれな訪米をしていたが、それもこういう硬直化の現れだったのだろう。苦言を呈して嫌な情報も突きつける側近がいなければ、どんな知事も裸の王様になるしかない。それによって知事が誤った政策判断をすれば、そのとばっちりを喰うのは県民である。
国頭村まで視察に行きながら、肝心の林道の問題点は見ようとしない仲井真知事は、そのことで自らの林道政策が結論ありきであり、信頼性に欠けるものであることを身をもって示している。外間記者の「単眼複眼」は、知事が何を視察したかだけでなく、何を視察しなかったかも記すことで、そのことを伝えている。
大変残念なのですが、林道と地元の業社の声は無視できないことです。
しかし(漁業や農業にしろ)林業でも開発という自然破壊と再生事業の金のなる木を手放せない・・・。
基地とリンクした補助金がどれだけウチナーンチュ(沖縄の人)の心を駄目にしていることか!
林道開設推進派と反対派の溝は大きいです。
例えるなら水と油といってもいいです。
そこら辺をよそ者の私が無責任に言えない。
働くことをもっと大きな視野で公けの人たちが、提示していかないといけないということだけは言いたい