2月18日に沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)の浜比嘉勇会長や下地幹郎議員が、北沢俊美防衛相を訪ねたという記事が2月19日付琉球新報に載っている。〈2012年の次期契約更新時を機に、従来20年間としてきた賃貸借契約の期間を10年に短縮することや、賃料の値上げを求める要請書を手渡した〉ということだが、国民新党や民主党が画策しているキャンプ・シュワブ陸上案についても土地連会長は言及している。
〈北沢氏との面談後、浜比嘉会長は、普天間飛行場の移設案として浮上しているキャンプ・シュワブ陸上案について触れ、「キャンプ・シュワブの借料は1平方メートルあたり138円。月額11円ほどだ。仮にキャンプ・シュワブ陸上部に移設が決まっても、今のままの安い地代では地主は駄目だと言うだろう」と述べ、借料の値上げを求めた〉
キャンプ・シュワブ陸上案が報道されたかと思うと早速、土地連が当該地の〈借料の値上げ〉を求めている。こういう素早い対応は北沢防衛相との面談を根回しした下地議員による事前の情報提供がなければ無理だろう。
キャンプ・シュワブ陸上案については、名護市ではこれまで辺野古現行計画を推進してきた人たちからも反発や疑問の声があがっている。住宅地上空の飛行を回避する、という受け入れの前提がひっくり返されるのだから、当然のことだろう。市長選挙で稲嶺進氏が当選して、これで辺野古への新基地建設は不可能になった、と喜んだ市民たちは、今度はゾンビのように浮上してきた陸上案に対峙を強いられようとしている。
13年余の分断と対立が終わるかと思ったら今度は陸上案。このことに怒りや不安を覚えている名護市民は多いと思うが、土地連や下地議員にとっては、そういう市民の思いや苦しみなどどうでもいいようだ。これをチャンスとばかりに〈借料の値上げ〉を求め、自分たちの利益を計ることしか考えないその姿の浅ましさよ。
強制的に土地を奪う米軍とそれに抵抗する住民、という土地闘争の歴史も半世紀前の話になってしまった。今でも反戦地主や米軍から土地を取り返したいと考えている地主はいる。しかし、それ以上に、軍用地料を安定した収入と考える地主が増えた。日本復帰後に軍用地料が大幅に値上げされ、バブル経済がはじけて全国の土地価格が下落しても、軍用地料は毎年上がっていった。それらが地主たちに意識の変化をもたらしたのだが、そこには沖縄に基地を固定化することをねらった日本政府の軍用地主に対する「政治的配慮」があった。それによって軍用地は、確実に値上がりする物件として資産投資の対象となっている。金利の安い銀行に預けるより、軍用地を買った方がもうかるのだ。
今や軍用地はインターネットを使って売り買いされ、基地被害のない那覇やヤマトゥに住んで軍用地料を手にする者が増えている。そして、そういう人たちほど基地から得ている既得権益を守るために基地撤去に反対する。同じ軍用地主でも、基地周辺に生活して日常的に基地被害を受けている人と、被害は受けずに軍用地料を手にする人との間には、意識の違いが生じる。
マスコミはよく、基地がなくなると困る人たち、ということで軍用地料に頼って生活しているお年寄りのことを取り上げる。けれども、軍用地主には公務員や高額所得者も多い。また、基地周辺に住む住民で軍用地主はごく一部だ。大多数の住民はただ一方的に基地被害を受けているだけなのだ。
沖縄県の持ち家率や住宅一戸あたりの面積は全国の最低水準である。その背景には中部の人口密集地を巨大な米軍基地が占拠していることがある。アパート住まいで基地被害を強いられているだけの住民からすれば、基地が返還されたら困る、という軍用地主の主張は贅沢な悩みでしかないだろう。
国や地方の財政危機が問題となっている時代に、軍用地料をいつまでも右肩上がりで値上げするのはもうやめるべきだ。周辺地価の動向にあわせて値下げもすべきなのだ。軍用地料の値下げを主張すれば、沖縄では反発を受けるのが落ちだろうが、基地固定化のために政府が行っている政策に当たり前のように乗っかっていれば、自らの利益のためには基地周辺住民の被害などお構いなしという精神構造になっていく。
普天間基地のキャンプ・シュワブ陸上部への「移設」を口実に〈借料値上げ〉を求めている浜比嘉土地連会長の姿は、沖縄への基地固定化のために軍用地料を上げ続けた政府と、それに味をしめてきた土地連のもたれ合いが生み出したものだ。この時期に土地連会長がこういう発言していることの問題は、もっと追及されていい。
〈北沢氏との面談後、浜比嘉会長は、普天間飛行場の移設案として浮上しているキャンプ・シュワブ陸上案について触れ、「キャンプ・シュワブの借料は1平方メートルあたり138円。月額11円ほどだ。仮にキャンプ・シュワブ陸上部に移設が決まっても、今のままの安い地代では地主は駄目だと言うだろう」と述べ、借料の値上げを求めた〉
キャンプ・シュワブ陸上案が報道されたかと思うと早速、土地連が当該地の〈借料の値上げ〉を求めている。こういう素早い対応は北沢防衛相との面談を根回しした下地議員による事前の情報提供がなければ無理だろう。
キャンプ・シュワブ陸上案については、名護市ではこれまで辺野古現行計画を推進してきた人たちからも反発や疑問の声があがっている。住宅地上空の飛行を回避する、という受け入れの前提がひっくり返されるのだから、当然のことだろう。市長選挙で稲嶺進氏が当選して、これで辺野古への新基地建設は不可能になった、と喜んだ市民たちは、今度はゾンビのように浮上してきた陸上案に対峙を強いられようとしている。
13年余の分断と対立が終わるかと思ったら今度は陸上案。このことに怒りや不安を覚えている名護市民は多いと思うが、土地連や下地議員にとっては、そういう市民の思いや苦しみなどどうでもいいようだ。これをチャンスとばかりに〈借料の値上げ〉を求め、自分たちの利益を計ることしか考えないその姿の浅ましさよ。
強制的に土地を奪う米軍とそれに抵抗する住民、という土地闘争の歴史も半世紀前の話になってしまった。今でも反戦地主や米軍から土地を取り返したいと考えている地主はいる。しかし、それ以上に、軍用地料を安定した収入と考える地主が増えた。日本復帰後に軍用地料が大幅に値上げされ、バブル経済がはじけて全国の土地価格が下落しても、軍用地料は毎年上がっていった。それらが地主たちに意識の変化をもたらしたのだが、そこには沖縄に基地を固定化することをねらった日本政府の軍用地主に対する「政治的配慮」があった。それによって軍用地は、確実に値上がりする物件として資産投資の対象となっている。金利の安い銀行に預けるより、軍用地を買った方がもうかるのだ。
今や軍用地はインターネットを使って売り買いされ、基地被害のない那覇やヤマトゥに住んで軍用地料を手にする者が増えている。そして、そういう人たちほど基地から得ている既得権益を守るために基地撤去に反対する。同じ軍用地主でも、基地周辺に生活して日常的に基地被害を受けている人と、被害は受けずに軍用地料を手にする人との間には、意識の違いが生じる。
マスコミはよく、基地がなくなると困る人たち、ということで軍用地料に頼って生活しているお年寄りのことを取り上げる。けれども、軍用地主には公務員や高額所得者も多い。また、基地周辺に住む住民で軍用地主はごく一部だ。大多数の住民はただ一方的に基地被害を受けているだけなのだ。
沖縄県の持ち家率や住宅一戸あたりの面積は全国の最低水準である。その背景には中部の人口密集地を巨大な米軍基地が占拠していることがある。アパート住まいで基地被害を強いられているだけの住民からすれば、基地が返還されたら困る、という軍用地主の主張は贅沢な悩みでしかないだろう。
国や地方の財政危機が問題となっている時代に、軍用地料をいつまでも右肩上がりで値上げするのはもうやめるべきだ。周辺地価の動向にあわせて値下げもすべきなのだ。軍用地料の値下げを主張すれば、沖縄では反発を受けるのが落ちだろうが、基地固定化のために政府が行っている政策に当たり前のように乗っかっていれば、自らの利益のためには基地周辺住民の被害などお構いなしという精神構造になっていく。
普天間基地のキャンプ・シュワブ陸上部への「移設」を口実に〈借料値上げ〉を求めている浜比嘉土地連会長の姿は、沖縄への基地固定化のために軍用地料を上げ続けた政府と、それに味をしめてきた土地連のもたれ合いが生み出したものだ。この時期に土地連会長がこういう発言していることの問題は、もっと追及されていい。