海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

南燈慰霊之碑慰霊祭 2

2010-06-24 16:50:56 | 沖縄戦/アジア・太平洋戦争
 続けて名護高等学校の高安美智子校長が追悼の辞を述べた。

 追悼の言葉。
 6月中の梅雨は沖縄県民の思いを表しているかのように激しい雨となり、蒸し暑い日が続いていました。慰霊の日を前にその梅雨があけましたら、今日はどんよりとした小雨が続いています。本日ここに終戦65年目の慰霊の日を迎え、県立第三中学校、並びに県立第三高等女学校の在学生、卒業生の戦没者375名の御霊に対し、名護高等学校を代表して謹んで追悼の言葉を申し上げます。
 去る65年前、敗戦末期の昭和20年、わが沖縄は50万の連合国の艦船、(一部不明)に包囲され、第二次世界大戦最後の決戦場となりました。県土は凄惨な戦場と化し、県民は戦渦に巻き込まれて、20万余の尊い命、財産、及び文化遺産を失いました。当時在校生であった先輩方も、鉄血勤皇隊や通信隊、名護蘭学徒隊などとして戦場に動員され、90名もの若き命を散らしたのです。将来を嘱望された先輩方の無念に思いをはせるとき、深い悲しみとともに痛恨の念を禁じ得ません。
 6月23日の慰霊の日は、戦争による惨禍が再び起こることのないよう、人類普遍の願いである恒久平和を希求するとともに、戦没者の御霊を慰める日です。本校では去る15日、沖縄戦の激戦地であった摩文仁の地に平和の礎を建立し、世界に向けて非核・平和・沖縄県宣言を発信した元県知事、大田昌秀氏を講師に招いて、慰霊の日を考える講演会を実施しました。「沖縄戦を通して基地問題を考える」という演題で、大田氏自身が鉄血勤皇隊として動員された沖縄戦の体験や、沖縄の基地の現状について貴重なお話を伺うことができました。
 このような中で特に生徒の心を動かしたのは、長崎県長崎市でみずからも被爆し、重い傷を負いながら被爆者の救助に献身的に取り組んだ永井隆博士の著書『愛し子よ』で、博士が子どもに残した次のメッセージの朗読でした。
 「愛されるものは滅ぼさないのだよ。愛で身を固め、愛で国を固め、愛で人類が手を握ってこそ平和で美しい世界が生まれてくるのだ。愛し子よ、敵を愛しなさい。愛し、愛し、愛し抜いて、これらを憎む隙がないほど愛しなさい。愛したら愛される。愛したら滅ぼされない。愛の世界に敵はない。敵がなければ戦争は起こらないのだよ」という言葉でした。
 戦争が終わって65年の歳月が流れ、日本国民にとって戦争が過去のこととなりつつあります。しかし、私たち県民は、今なお敗戦の後遺症といわれる在沖米軍基地や、その基地から派生する問題とたたかい続けています。復帰から38年経った現在も、極東一の巨大な基地と隣り合わせの生活は改善されないままです。今年の慰霊の日を考える講演会は、次代に負の遺産を残さず、平和な沖縄を実現するために、みんなで沖縄の過去、現在、未来について考える機会となりました。
 それから本校の校内に移設され、身近になったこの南燈慰霊之塔は、沖縄戦を風化させることなく、生徒たちに平和についてしっかり考えるよう訴えているかのようです。また、私たち教師は戦火に巻き込まれ、短い生涯を余儀なくされた先輩方の無念さを嘆き、戦争のない恒久平和を願う若者を育てることが、先輩方へのご恩に報いることだと考えます。終わりに三中、三高女の英霊が、永久に安らかでおられますことを、また、後輩たちをしっかり見守ってくださいますことをお願いし、追悼の言葉といたします。
 平成22年6月23日、沖縄県立名護高等学校校長 高安美智子



 続けて生徒代表として生徒会長・又吉亜佳音さんが追悼の辞を述べた。

 追悼の辞。
 私たちは勉学や部活動に没頭することができる幸せな日々を過ごしています。しかし、この平和で幸せな生活は、なんの努力なしに、当たり前のように今ここに実現しているわけではありません。私たちが今、現在、このように幸せに暮らせるのは、今から65年前、沖縄であった地上戦以降、諸先輩方が、もう二度とこのように悲惨で(一部不明)された戦争を起こしてはいけない、という思いで、悲惨で残酷な戦争の実態を語り継ぎ、日々復興に力を注いでくれたおかげなのです。
 この沖縄という小さな島で、本土決戦までの足止めという理由のもと、激しい地上戦が繰り広げられ、住民合わせて30万人という多くの尊い命が犠牲になりました。私たち名護高生の多くが生まれ育ったこの北部でも、数え切れないほどの少年少女の命が散りました。戦争の真実は、とても苦しく、そして、沖縄の人々が大きく深い心の傷を負わされることになったのです。
 あの沖縄戦から65年の月日が経ちました。今ではもう65年前のような戦地の面影はほとんどなくなり、多くの県民が平和で幸せな日々を過ごしています。しかし今日、6月23日のこの日だけは、あの残酷で悲惨な過ちを振り返り、私たちと同じように幸せで平和な日々を送ることができずに亡くなられた先輩方へ、追悼する気持を改めて確認し、世界平和を願う日にしたいと思います。
 今でも世界のどこかで私たちと同年代の少年少女が、戦争に巻き込まれて苦しい思いをしています。私たちよりももっと幼い子どもたちですら、戦力として戦場へかり出されているというニュースなどをよく目にします。そういったニュースや映像を見聞きするたびに、悲しくなると同時に、なぜこれほどまでに人は争わなければいけないのか、という疑問が私の中で生まれます。
 さらに、最近問題になっている普天間基地の移設の件も、日本側がもっと強い意志を持ってほしいと思っています。基地は戦争のために訓練をする場所、多くの尊い命を奪う戦争に出陣する場所です。この沖縄に、日本に、そして世界で、65年前の戦争の悲劇をもう二度とくり返してはいけない。少しでもそのような危険にさらされる可能性があることはしてはいけないということを、再度確認してほしいと思います。
 日本だけではなく、世界が争いのない平和な世界になることを強く願います。人は人を愛することができる。その愛の世界に向け、争いのない世界になってほしいです。そんな世界になれるよう、貢献できる大人になることを今日ここに誓います。
 生徒代表、又吉亜佳音。

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