佐久の地は雪が舞うホワイトクリスマスとはならなかった。
ただ浅間山だけが白く淡く靄の向こうに浮かんでいた。
じっと眺めていると、すうっと引き込まれるような淡さだ。
ひと冬に何回か陸の凪とでも呼ぼうか、無風で空はあくまでも淡く青白く、そしてゆったりとした浅間山を拝むことができる。むしろこんなやさしい浅間山の姿のほうがクリスマスの日にふさわしいではないかとさえ思う。
ただ、そんなゆったりとした風景の中でも、冬の茶色染まった里では、師走と書く年末の活気が浅間山の淡白な姿とは対照的に息づいていた。