180420 電力の地産地消 <電力事業 参入の自治体増>を読みながら
あることに集中していると、別のことが見えなくなる、そういたことがよくあります。今日は交通事故の告訴案件や借地問題、土地売買をめぐる紛争、傷害事件の弁護事案、などなどを頭を切り換えながらやっていくのですが、なかなかスイッチの入り換えがうまくいきません。あることに没頭しすぎると、なにか抜け落ちるのでしょうかね。あるいは神経パルスが固くなって、柔軟性を失うのでしょうかね。
地産地消という長く普及してきた言葉、さまざまな意味合いをもつ含蓄のあるものと思うのですが、他方で、その一面だけとらえると見えない落とし穴に入るかもしれません。
今朝の毎日記事<電力事業参入の自治体増 大企業と連携も 住民サービスの向上狙う>は、なんとなくわかったような気がしつつ、どうもはっきりしないとタイトルを見て感じてしまいました。
とりあえず記事内容を見てみましょう。
<自治体が大手のエネルギー企業と組んで、電力事業に参画するケースが広がっている。電気の販売や運営管理などのノウハウを提供してもらい、安定した事業基盤を築きながら、住民サービスの向上や地場産業の育成を進める狙いがある。>
自治体の電力事業への参画ということ自体、自治体サービスとしてどのような意味があるのか、ある種の想定をしつつ、それが大手のエネルギー企業と共同することの意義はどこになるのかが気になります。
その方向性が、<安定した事業基盤>とか、<住民サービスの向上や地場産業の育成>となると余計イメージが生まれてきません。
記事は<奈良県生駒市が昨年7月に設立した新電力「いこま市民パワー」には、大阪ガスが34%出資した。>件をとりあげています。共同出資ということですね。
その事業内容は<販売する電気の大半を大ガスが供給することで、調達価格が安定するのが利点だ。電気の需給管理も大ガスが担う。市の施設のほか、今年に入って南都銀行の店舗にも電気を送っている。>ということは、生駒市が大手需要者として、大ガスからの安定かつ少々廉価に手電力提供を受けるということのようです。市の施設を中心にさらに銀行など他の民間部門にも供給しようと言うことでしょうか。
その収益を見込み、その使い道について<収益は市民サービスの充実に使う方針で>というのは当然でしょうね。ただ、<今年2月に第1弾としてストレッチ講座を開いた。市の担当者は「収益の活用法は、市民が参加する会合で話し合って決めたい」と話す。>ということになると、収益の使い方まで十分検討せずに、共同出資事業を開始したということでしょうか。それ自治体経営として大丈夫とつい思ってしまいます。
大ガスがいま関電と電力事業部門で激しい競争をしているようですが(実際は地域を問わず、様々な主体間で競争が行われているようですね)、生駒市はどのような収支計算や市の将来計画を打ち出して、この事業を始めたのでしょうか、市民の賛同をどのような形で得たのか、気になります。
他方で、<三重県松阪市も東邦ガスと組み、昨年11月に新電力を設立した。>というのは、主体的な取り組みというふうに評価できる部分があります。<市のごみ処理施設で発電する電気を供給し、エネルギーの「地産地消」を目指す。>こういった再生可能エネルギー、あるいはそれに準ずるような電力供給、それも市が発電者であることから、それ自体は地産地消の一つのあり方と評価することは可能ではないかと思うのです。<電気の販売や調達など主な業務を東邦ガスが引き受け、安定した運営体制を構築した。>と民間企業の経営能力を借りるというのも一つの有効な選択とみてよいかと思います。
その次に紹介されている<山梨県は東京電力エナジーパートナーと共同で県内企業向けの割安な電気料金メニュー「やまなしパワー」を2016年度から手掛け、企業誘致や地場産業の育成を進めている。>も、生駒市とあまり変わらない、印象ですね。
どうも自治体側に、きちんとした電力供給構造の将来に対する考え方が定まっていないというか、検討もしていない印象を受けてしまいます。政府がベース電力とか云々しても、一向に将来を見通せない中、本来は地産地消の担い手、主体である自治体こそ、自分で考えることではないかと思うのです。
安定した少し割安の電力が供給されるからといって、飛びついていいのでしょうか。大量の電力の供給を受けて、それを地域振興に役立つ事業に、低廉で?小口供給するといった発想なのでしょうか、そんなことでよろしいのでしょうか。
地域全体の電力供給のあり方を本気で考える時代にきていませんか。山間部の森林地帯では、遠くから送電線をつないで送電ロスも多いのに、現在の電力供給のシステムでよろしいのでしょうか。森林を有効利用してバイオエネルギー・バイオ発電で、地域全体の共同供給システムを確立するといった発想はなかなか生まれませんが、それこそ地産地消ではないでしょうか。
日本の川は滝だと言われた山間部の急流は小規模水力発電としても活用できるように思うのですが、そのような活用は一部には行われていても、有機的な連携がなされているようには思えません。
太陽光発電や風力発電は増えてきたようですが、環境影響も無視できない状態です。それは立地への配慮が十分考慮されていないからではないでしょうか。
それにしても、大規模事業体からの電力供給だけに頼る地産地消では、本来の地産地消とはいえないように思うのですが、いかがなものでしょう。
そろそろ一時間となります。今日はこれにておしまい。また明日。