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プーチンの国―ある地方都市に暮らす人々の記録
ギャレルズ,アン【著】〈Garrels,Anne〉/築地 誠子【訳】
価格 ¥2,700(本体¥2,500)
原書房(2017/07発売)
これ、チェリャビンスクというロシアの地方都市、日本でいうと広島や仙台くらいの位置づけの都市だが、そこで暮らす人々の状況を記したドキュメンタリーである。
ロシア人YouTuberのアシヤ氏がちょうどいま帰省しているのがこのチェリャビンスクのようだ。
まあそれはいいとして。
実はこの本、最初のほうはおもしろかったが、最後のほうになるともう読むのやめようかと思うようになっていった。
なぜか?
内容があまりに水戸黄門的なのだ。
この本には登場人物は4種類しか存在しない。
・プーチンの犬で汚職に手を染めて富を手に入れた政府筋の悪党
・政府の不正や汚職と戦い無実の罪で投獄されても不屈の精神で善良な一般市民のために戦いつづけるスーパーヒーロー
・そこそこ学がありプーチンに不満をいだくが何もする気がない極めて大人しすぎる一般市民
・学がなく政府報道を鵜呑みにしプーチンを絶賛するアタマの悪い一般市民
水戸黄門の第n話と第n+1話でビミョーに話が異なるのと同じくらい各章で内容が異なるだけで、金太郎飴のごとくどこをとっても展開は同じだ。
最初と最後の章をのぞく16章もそれなのだから、うんざりして読むのやめようかと思うようになるのはわたしだけではないと思うのだが、どうなんだろうね。
きっと本の厚さが1/3だったら我輩もいい本だったとここに書いてるだろうよ、たぶん。
でだ。
この本を読んでジャーナリズムの本質の悪い側面について気がついてしまったような気がするわけ。
「ロシアはこんなにステキな国なんです!」
と書いても誰も注目してくれない。
とくにロシアを敵対視しているアメリカならなおさらだ。
「ロシアはこんなに酷い国なんです! 政府の犬の悪党がこんなにのさばり、善良な一般市民はこんなに苦しめられているんです!」
と書いておけばジャーナリズムは銭になる。
嫌な世界だね。
この本にはロシアのいいところは1つも書いていない。
いや、あえていえば、善良な一般市民は存在するというくらいのことは良いところとして書いてあるといっていいかもしれないが、その程度だ。
本のオビには
> 「ウォールストリートジャーナル」「ニューヨーカー」ほか、各紙誌で絶賛!
と書いてあるのだが、どうなんよこれは。