女子高生が友人を殺した話。
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長崎県警は7月27日、同県佐世保市の高校1年、松尾愛和(あいわ)さん(15)を殺害したとして、殺人容疑で同じ高校のクラスメートの女子生徒(15)を逮捕した。
生徒は「全て自分1人でやった」と容疑を認めている。
松尾さんは、女子生徒が1人で暮らす市内のマンションの部屋で、首と左手首を切断された状態で発見され、複数の工具も発見された。
学校側は、2人の間にトラブルはなかったと主張。
県警は動機や生徒の精神状態を調べている。
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今日のテレビ番組に中で、ある人が、この女の子が殺人を犯したのは100%親の責任だと言っていた。
そんな短絡的な話なのだろうか。
マット・リドレーの「やわらかな遺伝子」の中に次のように書かれている。
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統合失調症が器質性疾患であり、発達による病気であり、第4の次元―つまり時間の次元―の病気だという点では、研究者の意見はほぼ一致している。
この病気は、脳の発達と分化に異常が生じることによって起こり、身体が-そして脳が―模型飛行機のようにただ部品を組み合わせて作られるものではないという事実を、改めて強く思い出させてくれる。
身体は成長するのであり、成長を命じているのが遺伝子なのである。
しかしそうした遺伝子は、お互い同士や環境要因、偶然の出来事に対して反応する。
遺伝子が「生まれ」でそれ以外が「育ち」だというのは、どう見ても間違いだ。
遺伝子は、「生まれ」を表現する手段であると同時に、「育ち」を表現する手段でもある。
(中略)
統合失調症は、世界中のどの民族でも同じくらいの頻度で見つかり、およそ100人に一人の割合で発生する。
しかも、オーストラリアの先住民でも、イヌイットでも、症状はほぼ同じだ。
これは特別で、遺伝子に影響される多くの病気は、一部の民族に特有であるか、ほかよりはるかに多く見られる集団が存在するものである。
ひょっとしたら、統合失調症になりやすくする変異は古く、アフリカにいた祖先がアフリカを出て世界各地に散らばる前に生じたのかもしれない。
統合失調症は、石器時代には、子育てはもちろん、ただ生きながらえるのにも障害となるはずだから、それが普遍的に見られるのは不思議だ。
なぜ、この遺伝子変異は死に絶えなかったのだろうか?
統合失調症患者が名家や頭のいい家計に現れることには、昔から多くの人が気づいていた。
軽度の障害がある人―「統合失調症型」人間と呼ばれたりもする―は、並はずれて賢く、自信と集中力があることが多いのだ。
(中略)
ジェームス・ジョイス、アルバート・アインシュタイン、カール・ダグラス・ユング、バートランド・ラッセルには皆、統合失調症の近親者がいた。
また、アイザック・ニュートンとイマヌエル・カントは、どちらも「統合失調症型」人間とされている。
(中略)
統合失調症は、良いものを持ちすぎる結果、患うのかもしれない。
通常は脳の機能に有益な遺伝的・環境要因が、あまりに多く一人の人間に集まりすぎたせいなのだろうか。
(中略)
統合失調症について確実に言えることが二つある。
冷淡な母親のせいだとするのは全くの間違いであることと、この症候群にはかなり遺伝的なところがあるということだ。
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この考えが正しいとするならば、遺伝的な異常気質が潜在的に存在し、何らかの外的な要因でスイッチが入って発症したと考えるべきなのだろう。
それが何であったのかについては、今後の報告を待たないといけない。