知り合いから以下のようなメールが届いた。
「CO2ガスと地球温暖化の話題についてですが、私の知識では、ガス濃度と温度変化の近年の一致は偶然の事象であって、因果関係があるのではないことが、良識的な科学者の認識であると思ってきました。クライメートゲイト事件とさえ言われるデータねつ造行為があり、未だウソが通っている分野もあるものの、良識ではすでに顧慮されていない。といえるのだと思っています。もっとも大気論にも気候論にも直接関わってはいないので、ランダムな情報と社会の通説とから、自説ができているだけですが。」
文献のPDFが添付されていたので見ると、2013年2月1日週刊朝日に掲載された池田清彦氏「温暖化論店じまいしたらどうですか」と言う記事と、集英社から刊行された広瀬隆の「二酸化炭素温暖化説の崩壊」の新書本のコピーだった。まず、クライメートゲイト事件について調べてみた。以下wikipediaからの引用である。
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2009年11月17日にクラッカーがCRUのサーバーに格納された個人ファイルを入手し、そこで発見した電子メールをオンラインで公開した。1996年以降[10]の1000通以上のメールと3000以上の文書が流出し、懐疑論者達によって、地球温暖化を人為だとするための国際的陰謀の証拠であるとして取り上げられた。断片的で選択された文面を根拠にして、気候変動懐疑論者から、気候研究者らに多くの非難メールが寄せられた。地球温暖化に対する懐疑論者はスキャンダルとして喧伝し、ウォーターゲート事件になぞらえクライメートゲートと呼んだ(従ってClimategateという語は中立的ではなく懐疑論者により用いられる。) メールを巡り疑惑となっている個別の争点は、下に記す。研究界、気候変動研究者らは疑惑を否定し、メールでは、間違った事は行われていないとしている。関連する科学者の所属する各機関は、この事件についての調査を開始すると発表した。 イギリスの新聞ガーディアンは、デンマークで行われた気候変動枠組条約締約国会議(COP15)への影響が懸念されると報じた。
データの再分析[編集]
カリフォルニア大学バークレー校の物理学者Richard A. Muller(en:Richard A. Muller)らが新たな解析手法によるデータの再分析に乗り出した。彼は以前から気候学者の解析手法に批判的で懐疑論者に理解を示していたため、懐疑論を支援するKoch Industriesは彼がCRUのデータを否定してくれるものと期待し、研究資金も提供した。2011年にその結果が発表され、再分析はCRUとほぼ完全に合致する結果となり、温暖化に疑いはないとし、議会でも証言するなど話題となった。またMuller自身がその結果には驚いたとしており、同年10月、自身の懐疑論をウォール・ストリート・ジャーナルで正式に撤回した。
IPCCの対応[編集]
暴露された電子メールには、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書の編著者が報告書への文献の採用などに関する意見を述べていたものが含まれており、2009年11月ごろから活発となったIPCCの評価手続きへの批判の材料のひとつとなった。2010年3月、国連事務総長およびIPCC議長は、インターアカデミーカウンシル(InterAcademy Council, IAC)に、IPCCの評価手続きに関するレビューを要請した。その声明の中でIPCC議長は、第4次評価報告書の「厳密さと信頼性を確信している」とした上で、さらに批判に耳を傾けて改善に取り組むと述べた。
2010年8月、IAC[31]は独立レビューの結果を発表した。「IPCCの評価手続きは全体的に成功を収めてきた」(the IPCC assessment process has been successful overall)と述べた上で、組織体制強化や透明性向上等の勧告を行った。
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次に、池田氏と広瀬氏の評価について調べた。何のことはない、二人とも気象学や環境学の専門家でもなく、自分でデータの解析をした人でもない。いわゆる他人の褌で相撲を取っている人たちだった。メールをくれた私の知人は京都大学の物理学科を出て、それなりに見識のある人だが、このような根拠のない文章を鵜呑みにする人とは思わなかった。その意味では、週刊朝日や新潮新書にも責任があるような気がする。声の大きな人の不確かな意見に流されるのではなく、事実に基づいた冷静な判断をしたいものだ。
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池田清彦:専門外の地球温暖化や外来種問題に関して、一般向けの著書において批判的な主張を行っている。このうち地球温暖化問題に関しては、その根拠には池田自身の世界で広く認められた学術論文は示されていない。また当該分野の専門家から不正確であるとの指摘を受けており、IPCC第4次評価報告書の結論とも異なる。たとえば温暖化はヒートアイランド現象以上のものではないと主張しているが、ヒートアイランドの影響範囲は地球全体のごく一部のため、ヒートアイランドの影響量は産業革命以降に観測されている温暖化の2~4%程度に過ぎないと見積もられている。
広瀬隆:東京生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。大学卒業後、メーカーの技術者を経て、執筆活動を開始、医学文献等の翻訳に携わる。2010年に刊行した『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(集英社新書)では地球温暖化に言及している。広瀬の主張について、安井至は日本経済新聞の記事(「地球の気候当面『寒冷化』」2009年2月2日朝刊科学面)と共に批判している。また、本書で言及されているクライメートゲート事件については、調査報告によれば気候研究ユニット(CRU)には捏造などの不正は無かったとされ、調査結果を受け関係者は復職している。本書では環境破壊について、(地球にとって)一番悪いのは「毒物」と「熱の排出」と「機械的な自然破壊」であるとしている。 また、原発の温排水が発電量の2倍の熱量で海を加熱し生物に悪影響を及ぼしていることが主張されている。ただし、あらゆる人為的な廃熱(原発に限らない)の影響は人為的な温暖化ガスの影響2.9 W/m2のおよそ100分の1(0.028 W/m2)であり、全地球的な温暖化への寄与は小さいとする推定がある。
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