DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

どうする(62)

2015-01-05 17:52:32 | ButsuButsu


2015年の新年早々に、国際陸水学会(SIL)事務局長のTamar Zoharyさんからメールが飛び込んできました(http://www.limnology.org/news/index.shtml)。

内容は、中国香港ニカラグア運河開発投資有限公司(HKND)が、ニカラグア政府と共同で、太平洋と大西洋を結ぶ中米2番目の運河の建設に取り掛かったというものです。

面積が琵琶湖の約12倍、平均水深が約13mあると言われるニカラグア湖を横断する大洋間運河の建設は、この湖の生態系を大きく変化させるだけでなく、この国の政治・経済・生活・文化を大きく変えることになると思われます。

個人的な立場から言えば、陸水学者としては反対すべきだと思いますし、実際にそのように対応しようと考えています。

しかし、少し陸水学から離れて考えた時に、なぜ中国資本がこの地に運河を開こうとしているのかが気になるところです。

最も大きな理由は、南シナ海有事の際の燃料輸送航路の確保だと思われます。

夏季には北極航路も使えるようになっていますが、年中利用が可能とは言えません。

中国にとって、燃料の安定確保は目下のところ最優先の課題なのでしょう。

ではアメリカ政府はどのような対応を考えているのでしょうか。

冷戦時代であれば、中国が資本投下した運河を中米に作らせることはなかったでしょう。

キューバとの国交を回復しようとするアメリカの隙を突く巧みな戦略なのかもしれません。

逆に言えば、この運河ができれば、中国は南シナ海への進出をより積極的に展開するのかもしれません。

いずれにしても、陸水学を志す私たちの周りが、次第にきな臭くなってきていることは確かです。

水の問題が経済発展と密接な関係を持つようになれば、それぞれの場面で意見を求められるのは必定であり、専門家としてそのような場面から逃げ出すわけにはいかないからです。

今回の声明文の中で強調されているのは、「工事を開始する前に環境アセスメントをきちんと実施して、内容を吟味し、結果を公表しなさい。ニカラグア政府は、十分な研究が実施され、公的な議論が終了するまで、工事を中止しなさい」というものです。

このような大規模工事は、往々にして大きな利権を生み出します。

地球の反対側で起ころうとしている環境破壊が、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのかは明らかではありませんが、一部の人間たちの利権で、豊かな自然が失われていくのは残念なことです。

そのようなことにならないように、少しおせっかいかもしれませんが、私たちも中米最大の湖に関心を持ってみませんか。

良心的な人々の介入は、時には紛争の緊張を緩和する効果もあるのかもしれません。

小さな元気玉でも、集まれば大きな元気玉になるはずです。