DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

どうする(64)

2015-01-14 18:18:31 | ButsuButsu


La déci-sion rapide manques.

貴様は果断に欠くる

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このフランス語は、浅田次郎の「赤猫異聞」の中に出てくる。

明治の時代に、フランスの士官学校へ留学した徳川の残党、岩瀬七之丞が教官からこう言って叱られる。

岩瀬は思う。

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積極にして果断、迅速にして果断。

軍人の心得であります。

時には拙速を尊ぶのであります。

そんなことは百も承知ですから、まさか腕を組み首をかしげて考え込みはしません。

しかし教官に言わせれば、「決心した後も物を考えている」らしいのです。

長いこと外敵と戦争をしたことのない日本人は、それくらい呑気にみえたのでありましょう。

外国との戦争は300年近くも前の朝鮮出兵、その前はまた300年さかのぼって蒙古襲来、ヨーロッパにはそんな平和な時代など、あるはずもなかったのです。

だからフランス人の教官の目には、日本人の将校がみな果断に欠くると映った。

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こうして、岩瀬は、おのれの本性は、やはり果断に欠くるのではないかと疑うのです。

考えてみるに、私もまた、果断に欠けている気がします。

決断しても、本当にこれでよいのか、自分で迷い、悩みます。

「どうする」

そう問いかけ、やろうと決めても、なお踏み出せない自分を鏡に映したような話です。

ここのところが、西欧の人々と、日本人の気質の違いなのでしょう。

やはり、日本人は心根まで残酷にはなれないのです。

そのことを浅田次郎は、この本の中で描いています。

甘い民族なのかもしれません。

しかし、それはそれでよいのかもしれません。

私は果断に欠くる。

胸を張って答えられる世界が来て欲しいと思います。