千六本の読みがわかるだろうか。
「せんろっぽん」とも読むが、正しくは「せんろふ」というのだそうだ。
マッチ棒のように大根を切ることを指している。
中国における調理法のひとつだ。
もともと、繊蘿蔔(せんろふ、せんらふく)の唐音「せんろうぽ」の音変化から千六本があてられた。
繊は「こまかい」をさし、蘿蔔は大根である。
つまり細かな大根という意味か。
大根を千六本に刻む、という使い方をする。
ちなみに「千切り」は、もっと細かいのだそうだ。
料理の多くの用語は、中国から来ているものが多い。
「包丁」というのは、「庖丁」と書いて調理場で働く人(丁)、つまり料理人を意味する。
紀元前450年ほど前に中国にあった「魏」という国の料理人(庖丁)が、肉を調理するのに使った刀を包丁と呼ぶようになったという。
「養う」というのは、「羊を食べる」から来ている。
では、「美しい」というのは「羊が大きい」から来ているのだろうか?
実際、古代中国では、大きい羊は「美しい」と思われていた。
これは彼らが西方から来た根拠となっている。
美丈夫という言葉もあることから、確かに「美しい」とは「大きい」につながる。
ちなみに、太宰治は好んで「美丈夫」という言葉を使っている。
こうして食につながる道も奥が深い。
ところで、私のお気に入りの大津の割烹が、また一つなくなる。
お互い、年を取ってきたのだ。
とても残念だ。
チェーン店ばかり増える昨今、本当にうまいものを食べさす料理店がなくなることは淋しいことだ。
「割烹」とは、中国語で「肉を割く」という意味で、古くは牛や羊の料理方法だった。