琵琶湖の畔に立ち、水鳥の浮かぶ姿を眺めていると、なんだか羨ましくなる。
彼らには、彼らなりの苦労があるのだろうが、人間ほど複雑ではないのだろう。
大体に、人間は自分で求めて苦労を作っている。
じっとしていても税金がかかってくるし、払ったからといってさほど暮らしは良くならない。
所得税や市民税など、結構な金額になるのだけれども、受け取り者から礼状ひとつ来るわけではない。
当然のように請求書が来て、忘れていると督促状に遅滞金が加算されてくる。
こうやって支払ったお金のほとんどが、役人と議員の給料になる。
こんな不都合もないだろう。
琵琶湖に浮かぶ水鳥が、税金を払ったという噂も聞かない。
呆然として湖を眺めていると、次第に自分がわからなくなる。
しかたなく歩き出そうとして、驚いた。
長く間延びした黒い影が、じっと私を見つめている。
誰だ!
何のことはない、自分の影だ。
おかしいな。
12月の影は、人を驚かすのか。
それとも、慰めてくれるのか。
少なくとも、自分の影くらいは自分に優しくあって欲しいものだ。