戸隠は今、秋まっただ中である。どこを見ても鮮やかに色づいた木々が目に入る。戸隠神社奥社までの参道を歩けば、桂の木の落ち葉が甘く香っている。それはまるで綿菓子のような香りだ。落ち葉は桜餅の様な香りがしてみたり、少しアンモニア臭が鼻をついたり、カビっぽかったり、そんな香りが僕は好きだ。深呼吸をして吸い込みたくなる。僕はそれほど鼻の利く方ではない。キノコや、花の香りなどはよく解らなくて、人に指摘されて始めて色んな香りに気づく。だが、その僕が気づく位だから、枯れ葉の香りは相当強烈なのだろう。
昨年の今頃はパワースポットブームでこの戸隠神社奥社参道は沢山の若者で溢れていた。参拝の人の順番待ち行列が出来て、その長さは数百メートルに及んでいた。それでもそこに並ぶカップル達は楽しそうだった。だが今年はその気配は全くない。ブームが過ぎたのか、戸隠神社の霊力が失せたのか定かではない。永遠の愛を祈願しに来る若者達のその後はどのようになっているだろうか?などと考えながら参道を行く。
今日は曇り空。10月下旬だというのに、台風26号と27号が日本列島に接近し、その影響をうけてぱっとしないのだ。そう言えば秋晴れなんて今年はあまりないような気がする。しかも接近中の台風は中心気圧925hPa。中心の最大瞬間風速は70メートルの超怒級の強力さ。9月から台風が来る度最大級とか、最強とかそんな事を天気予報では言ってるし、いったいどうなっちゃってるんだろうね、僕らの地球は。
と言うわけでこのブログを書きながら次のツアーの日程調整に追われている。26日(土)は台風の影響が残りそうだし、27日(日)は何とかなりそうだから、荒倉山を諦めて、東山のみに専念して催行しようかとか辞めてしまおうかとか色々考える。僕の仕事はほんとにお天気相手なので、中止になることもよくあることで全く不安定な商売である。だけど、何とか生きてこられたし、これからもまだしばらくは続けて行くつもりでいる。話が大きくそれてしまった。いったいこれは何の報告なのか、大変申し訳ない。 たまにはこんな気の向くままにしか書けないこともあると言う事でご勘弁を。
登山道に入って心配していたのはやはり雨だ。戸隠周辺は雨の日はとても滑りやすくなるから。岩場以外は粘土質のところが多いから、靴底に泥が付くと岩場でやっかいだし、垂直に近い岩場の鎖はツルツルになる。特に最近のステンレスの鎖は、雨の日イヤな感じがする。女性など握力の弱い方には辛いかも知れない。幸い、濃いガスの中を行くことになったが、岩は道は概ね乾いていて不安は無かった。蟻の塔渡りもロープを張って安全に万全を期す。垂直の崖下はガスでけぶって見えなかったから、恐怖感も意外となかったのかも知れない。蟻の塔渡りを越えると本当にほっとする。
八方睨みを越えると戸隠山に至る。戸隠山は何とも目立たないピークで、一応ここら辺で一番高いのだが、展望もあまり良くないし、頂上の看板も立派なものではない。なにより、やっと登ったと言う感覚に乏しい。縦走路のなかの小ピークといった感じだ。やはり戸隠の主峰は八方睨なのだと思う。吹き付ける霧の為に粘土質の道は滑りやすい。下りは特にいやらしい。
一不動の避難小屋にはアサヒビールが出資したトイレブースが出来ていた。中には洋式便座みたいなものがあって、付属の弁袋を便座に装着して用を足す。戸隠牧場から登ってくる道沿いにある一杯清水の水質汚染をさせないために必要なことではある。臭いも残らないから快適なのだが、それを持って歩かなければいけないのは少し抵抗がある。だがこれは時代の流れなのだから受け入れなければねえ。
このトイレブースはアサヒビールの寄付により設置されたものだ。調べたところ、アサヒビールと長野県がタイアップして展開している事業で、2009年からの寄付金の総額は2600万円を超えるらしい。それで藪漕ぎ山の安平路山とか奥念丈山とかにアサヒビール提供の看板があったのだ。この前書いた、マムートの件と比べるとかなり好感が持てる。あまり宣伝にもならないところに地味に金を使っている感じ。どうひっくり返ってもマムートはトイレにあのロゴを付けるとは思えないし。。。。。。。ついつい出てしまうマムート批判。マムートファンの皆さんごめんなさい。
戸隠牧場へは谷沿いのいやらしい下りだ。晴れた日でもじめじめして気が抜けないのに、今日はなおさらだ。谷を下ると広々とした牧場に飛び出す。数頭の馬が、降り出した雨に濡れながらも草を喰んでいる。僕らを見つけ栗毛の一頭が近づいてきた。馬の鼻筋を撫でてあげると実に気持ちよさそうな顔をした。僕らが立ち去ろうとすると柵越しに着いてくる。実に人なつこい。いい子だなあ、穏やかで、寂しがり屋で。連れて帰りたくなる。馬と暮らす日々はきっと素敵なんだろうなと夢を見る。ありえんか?
戸隠牧場の牧草を集める機械
ルリミノウシコロシ
神告げ温泉にて入浴、雨で人出が少ない為か、いつもの「うずら家」も意外と空いていて待ち時間なし。今日は奮発して大盛りを頂く。長野駅解散。