早朝にお客さんが宿泊しているグリーンプラザにお迎えに上がる。朝5時半集合だというのに、この宿では朝食を出してくれて、お見送りまでしてくれて、僕は泊まってはいないのだけれど、なかなか感じの良い宿だなあと思う。お客さんにどうだったかと聞くと、食事も美味しくてボリュームもあって大満足だったと言う事だ。こういう情報は大事で、そんな生の声や体験があって、僕の使う宿や食事処リストが出来上がってきた。お客さんと山行を終えたとき何処で風呂に入って、何処で食事をするかというのは重要で、そこが上手く行けば良い感じで山行の余韻を持ち続ける事が出来る。幸せな気分のまま家に帰る事が出来るのだ。そこでいやな思いをすると、山行全体が味気なく感じてしまう。僕みたいな個人ガイドは、そんな穴場情報を持っていて、ガイド同士情報交換したりもする。最後にそんなお気に入りのところにお客さんを案内して、
「美味しいですね!」
と言ってもらうと、こちらもおもいきり鼻の穴ふくらまして
「そうでしょ?」
と、とても幸せな気分になるのだ。大手のツアー会社では絶対に立ち寄れない素敵な店を僕は結構知っている。山の帰りや、何かのついでに気になる店に入ってみてリサーチしたりもする。いつも通りすがりに見ている気になるラーメン屋などもチャンスがあれば行ってみるのだ。そんなところを探すのもガイドとしての僕の楽しみだ。
ヌメリスギタケ。。。。。かな?
10月も半ば過ぎ、阿弥陀岳南陵はこの時期日帰りで出来るバリエーションルートだ。北アルプスではそろそろ雪が降り始め、山小屋も大きなところを残して殆どが店じまいのシーズンだ。半端に降った雪は日中溶けて、また夜には再凍結するので、岩場はツルツルだったりするし、かといってアイゼンをずっと着けて歩くほどでもなかったりする微妙なシーズンだ。八ヶ岳は日本海から遠く内陸に位置するため、雪が来るのはもう少し後の事になるし、日だまりの山行をまだまだ楽しめる。
青ナギ
P3
舟山十字路から林道を入って南陵に取り付く。直ぐ尾根に登り上げるが、周辺は岩場とザラザラとした砂地がある松の森のだ。明らかに松茸が生えそうな場所だ。しばらく行くと「キノコ山につき、立ち入り禁止、罰金十万円」の看板。一帯は地元の共有林となっているようで、毎年の山周りの人達がたてた、境界をしめす札があちこちに束になって立っている。苔むした森の中は全くバリエーションらしくもなく普通の登山道を行くのと何ら変わりない。P1、P2も難なく越えて、いよいよ核心のP3だ。P3には尾根を行くルートと、西側のルンゼを行く岩溝コースがある。尾根ルートの方が難易度は高い。岩溝コースには常にチョロチョロ水が流れていて、11月にもなればこれが凍結を始める。こうなると完全にアイゼンピッケルの世界で、簡単には登れないのだが、この日はまだ凍結していなくて簡単に登ることができた。もちろん、ロープは必携だが。
ワンピッチ目のルンゼ
2ピッチ目の急な草付き
ここを過ぎるとあとはザラザラとした尾根を行けば阿弥陀岳に到着だ。頂上で赤岳の展望を待ったが、濃いガスの中とうとうその姿を見せてくれることは無かった。木漏れ日の御小屋尾根を下って舟山十字路へ戻った。
阿弥陀岳南陵はアプローチも短く冬ルートとしても人気のあるところ。今度の冬には一度訪れてみようかと思う。