竹心の魚族に乾杯

Have you ever seen mythos?
登場する団体名、河川名は実在のものとは一切関係ございません。

汗かきルールとセロトニン

2009年04月03日 22時12分06秒 | やまめ研究所
セロトニンの話が出たところでもうちょっと脱線して思うところを。

アメリカの映画を見ていると、学校で、できない子どもでも「こんなにうまくなった」とかやたらにほめています。これでは子どもがサボるのでは?とか、先生のいうことを聞かなくなるのではという心配もあるんですが。
日本では、お前のここがダメだとか、とにかく「ダメだダメだ」シャワーがその子が合格ラインに達するまで延々と続きます。
それでもやる気を出さない子どもには、「もっと努力しないと○○になるぞ」ときます。

この違いはいったいなんなんだろうと思いますね~。

ひどい時は母親からも同じことを言われてしまいます…。


さて、日本ならではの慣習に「汗かきルール」というのがあります。談合の時に最も苦労した、あるいは貢献した企業が優先的に落札できるというものです。この慣習がいいとか悪いとかという話ももちろんですが、代々、こういった仕組みがうまくいってきたから残ってるのでしょう。いろいろ利害の不一致がある中で、それらをうまく調停するという点では優れているという事実は見逃せないと思います。ですからこの方法が一番、異議を唱える人が少なく、こうした仕組みに落ち着いたとみるのが妥当なのかもしれません。

こうした慣習が出来上がった背景には、もちろんそれなりの理由があるはずです。
たぶん「これだけ耐えたんだからそれ以上の報いがあってよいはずだ、そうでなくちゃ納得できない」という気分が、誰でも深層に潜んでいるのではないでしょうか。

欲望を自制できた人が、後でより多くのものを受取る――そういえば、よく昔話や時代劇なんかでこれと似たストーリが出てきますね。

判官びいきという言葉があります。聡明で、政治手腕のある頼朝よりも、戦功を立てても立てても報われるどころか非運の連続の義経の方になぜか惹かれてしまう。それは、義経のように栄光に浸ることなく精進し続ける人は、きっといつか報われるはずだというメンタリティが無意識に働くからじゃないでしょうか。歴史上の人物というとやっぱり信長のように強い人物が人気ですけど、涙をこらえ、耐え忍ぶ人物の人気もなかなかです。平将門とか、やまとたける…、それにしても、日本人は悲劇のヒーローが好きですね~。

スポーツでも、やっぱりひた向きに努力する人は感動を呼びます。
(仕事でも最後まで残って残業している人には同情したくなりますね)


さて欲望の自制といえば、「おあずけ」。時々TVでもやってますけど、あまりしつけられていないイヌは、骨やオモチャを目の前にして、時間が経ってくると我慢できなくなり、ついに手を出してしまいます。けれどもよくしつけられたイヌは、目の前に骨があっても、飼い主の合図があるまで手を出しません。

こうしたイヌは頭で考えて自分を抑えているのでしょうか?

人間は事後的な損得や様々な影響までを考えに入れてで行動していますが、イヌという動物はそこまで深く考えて行動しているとは思えません。イヌがこれから自分がとる行動の与える影響を推し量ったり、主人の命令の背後にある心理を読んだりすることはまずありえないでしょう。純粋に、自分に対する報酬と処罰によって学習していると考えてほぼ間違いないでしょう。そうするとやっぱり脳内物質です。目の前に家畜の骨があるとします。主人は「待て」と命令します。訓練されたイヌは、骨をくわえたくなる欲求が起ってきますが、それを我慢して命令に従えば、後で主人にほめてもらえるということがわかっていますから、自分の欲求を自制します。そうしてイヌは自発的に目の前の小さな報酬よりもその後のより大きな報酬を選ぶわけです。

イヌをこうした状態に育て上げるのには、辛抱強く調教する必要があるわけですが、一つの可能性として、繰り返し繰り返し自制することを学習して、セロトニン系のシステムに変化が起きているというふうにも考えられます。

残念ながら、イヌの調教とセロトニンの関係について調べた情報はないようです。けれどもセロトニンは知覚とか記憶に関係があると言われていますし、人間の子供でもセロトニン量の調節がうまくいっていないと落ち着きがなくなってきたり切れやすくなるわけですから、かなり関連性が高いような気がします。たぶん「待て」と言われたときにどれだけ待てるかが、ある程度セロトニンで決まってくるんじゃないでしょうか。
サルの群れでも、ボスザルは態度が悠然としていて、下の方のサルは落ち着きに欠けている。血液を採ってみると上の方と下の方でセロトニン代謝物の濃度が違っているし、観察してみると予測に基づく行動と衝動的な行動との比率が違っている…。

で、意外な結論なんですけど、やっぱりセロトニンは「待つ」、「待ち続ける」という行為にとりわけ深い関わりがあるんじゃないかと思います。それを裏付ける研究報告もいくらか出ています(※)。

動物の調教で分かるように、たぶんセロトニン系の神経ネットワークを強化するにはひたすら鍛練しかなくて、そんなわけで日本人は古来より本能的に、持って生まれた才能に満足せず己を切磋琢磨していく英雄を尊敬し、また憧れてきたのではないかと…。


ドラマなんかでも、いつまでも恋人を待ち続けるヒロインにどうしても感情移入してしまいますし、いつ逢えるか分かんないような、海から遡上してくる鱒のために延々本流竿を振り続ける釣り人を見てると、かっこいいなあと思います。




※たとえば、
http://www.jst.go.jp/pr/info/info87/index.html
http://www2.bpe.es.osaka-u.ac.jp/coe/seminar/050905seminar-tanaka.pdf

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