ハヤカワ文庫版「身代りの樹」の巻末文を、作家の小池真理子さんが書かれているのですが、これが大変的確にレンデルの持ち味や良さを紹介されていて、好い文章だなと思います。
<以下抜粋>
レンデルは悲劇の様式美に精通した作家である、と私は考えている。本書には狂気はもとより、小悪党の企み、愚直な理想主義、孤立した人間の恐怖など、あらゆる美と醜、善と悪が分離不可能なまま、混沌と描かれている。
「息苦しい」「体調の悪い時は読まないほうがいい」「読後感が悪すぎる」などの、いささか冷静を欠く論評が数多く見受けられるのは、一ファンとしていつも残念に思っている。
上手いですね~、これを初めて読んだ時は、小池さんの作品を何故今まで読まなかったのか、反省しました。
このお話は、立ち上がりから、息づまる苦しさが書かれます。主人公の母親が心の病を持っていて、それが原因となって起きた子供時代の事件、その恐怖や憤り、愛情との葛藤、そして自分に起きる不幸な出来事、それが引き金になって巻き込まれる幼児誘拐、しかもその子は母親から虐待を受けていて・・・と連鎖反応のように、予期せぬ出来事が起きて行きます。元恋人の出現、子供への愛情の為に犯罪者となる決意、誘拐された子供の母親と恋人、それに関わりを持ってしまったジゴロ気取りの男などが、複雑に絡み合って「結末」を迎えます。
この後の事を考えると「結末」によって急場は凌げたものの、実は何も問題は解決した訳ではなくて、母親も居るし、いずれは自分の出生を疑問に思うだろう「息子」もいるし、何より自分の犯した罪に耐え続けねばならない主人公が居ます。みな何かを抱えて生きて行く人々の物語ゆえに、私にとっては気持ちが励まされる一冊となっています。
レンデルの作品で一番有名なのは「ロウフィールド館の惨劇」でしょうか?このお話も、多種多様な心の病を抱えた人達が登場しますが、あまりの惨劇にグッタリするので、年一回くらいしか読めません(笑)1984年の作品ですが、現代の日本のあちこちで、身近に起きる事件との共通点があるように思えます。
「ウェクスフォード主任警部」を主人公とするシリーズも、何冊もありますので、一度挑戦してみては如何でしょうか?小池さんの仰る事に同意して頂けると思います。
<以下抜粋>
レンデルは悲劇の様式美に精通した作家である、と私は考えている。本書には狂気はもとより、小悪党の企み、愚直な理想主義、孤立した人間の恐怖など、あらゆる美と醜、善と悪が分離不可能なまま、混沌と描かれている。
「息苦しい」「体調の悪い時は読まないほうがいい」「読後感が悪すぎる」などの、いささか冷静を欠く論評が数多く見受けられるのは、一ファンとしていつも残念に思っている。
上手いですね~、これを初めて読んだ時は、小池さんの作品を何故今まで読まなかったのか、反省しました。
このお話は、立ち上がりから、息づまる苦しさが書かれます。主人公の母親が心の病を持っていて、それが原因となって起きた子供時代の事件、その恐怖や憤り、愛情との葛藤、そして自分に起きる不幸な出来事、それが引き金になって巻き込まれる幼児誘拐、しかもその子は母親から虐待を受けていて・・・と連鎖反応のように、予期せぬ出来事が起きて行きます。元恋人の出現、子供への愛情の為に犯罪者となる決意、誘拐された子供の母親と恋人、それに関わりを持ってしまったジゴロ気取りの男などが、複雑に絡み合って「結末」を迎えます。
この後の事を考えると「結末」によって急場は凌げたものの、実は何も問題は解決した訳ではなくて、母親も居るし、いずれは自分の出生を疑問に思うだろう「息子」もいるし、何より自分の犯した罪に耐え続けねばならない主人公が居ます。みな何かを抱えて生きて行く人々の物語ゆえに、私にとっては気持ちが励まされる一冊となっています。
レンデルの作品で一番有名なのは「ロウフィールド館の惨劇」でしょうか?このお話も、多種多様な心の病を抱えた人達が登場しますが、あまりの惨劇にグッタリするので、年一回くらいしか読めません(笑)1984年の作品ですが、現代の日本のあちこちで、身近に起きる事件との共通点があるように思えます。
「ウェクスフォード主任警部」を主人公とするシリーズも、何冊もありますので、一度挑戦してみては如何でしょうか?小池さんの仰る事に同意して頂けると思います。