「お父さんがね、酔うといつも言ってたことがあるの。人生は、小さな箱を開けるようなものだって」
「箱?」
「うん。それを開けるとね、その中にはまた箱があって、開けても開けても中には箱があるだけなんだって。 ひょっとしたら、結局その中にはなんにも入ってないのかもしれない」
「......」
「でも、そうしてあきらめて開けることをやめてしまった者は......もう、二度とその中を知ることはない」
~野島伸司『愛という名のもとに』(角川文庫)より
健吾と貴子がチョロの墓参りへ行くと、そこには彼を自殺へ追い込んだ一因でもあった証券会社の上司が花を持って訪れていた。組織の中で人を思いやる心や優しさを忘れてしまっていただけで、殆どの人間がそうであるように、彼も決して真から悪い人間ではないのだ。
これから社会へ出ようとする人たちに、そして社会のなかで生きる人たちに、オススメする一冊です。 貴子の生き方、 健吾の生き方、時男の生き方、それぞれの生き方の中から、きっと読んだ人それぞれが何かをみつけられるはず。 人はどんな風にでも生きられる。今の世界がすべてではない。これでもうお終いだなんていうことはないんです。
箱を開けることをやめさえしなければ。