売刀買山住 (刀を売り山を買うて住む)
閑臥独恰恰 (閑臥して独り恰恰たり)
多病雖辞客 (多病客を辞すると雖も)
寸心豈負時 (寸心豈時に背かんや)
作書昼更拙 (書を作せば昼更に拙)
深句句成遅 (句を探せば句成ること遅し)
恨我少年日 (恨むらくは我少年の日)
学兵不学詩 (兵を学んで詩を学ばざりしを)
(古川 薫 『わが風雲の詩』)
高杉晋作が主人公の本。
なかなか良かったです。
たまに、?と感じるところもあったけれど。。。
たとえば、やたらに「これは晋作の死の○年前のことであった」とか「晋作にはあと○年の月日しか残されていなかった」という文章があるのは、あまり私の好みではありません。後からみればそうだったというだけで、本人はそうと知って行動しているわけじゃないのだから、こういう文章にはあまり意味がないように感じるのです。1~2回程度なら嫌いじゃないけど、この本はちょっと多すぎかな・・・。
高杉晋作がその短い生涯で膨大な数の詩歌を詠んだことは有名ですが、それでも晋作というと、伊藤博文が彼の顕彰碑に書いたように「動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し」というイメージがやはり強い。
けれどこの本の晋作は詩人に憧れている繊細な若者である。奇兵隊創設や功山寺決起と派手に行動しながらも、「離れ牛」である彼はいつもどこか孤独で、そこに詩人晋作の姿が重なってみえた。
上記は彼が死の直前に病床で詠んだ詩だが、あれほど軍事面で鮮やかな活躍をした人が「恨むらくは我少年の日 兵を学んで詩を学ばざりしを」と言っているところがとても興味深い。
そして「面白き こともなき世を 面白く」というあの有名な辞世もまた、一層味わい深く感じられてくるのでした。