橋の上にねそべって、流れていく水をながめるのもいいものだわ。思いっきり走ってみるのも、赤い長ぐつをはいて、ジャブジャブ沼をわたるのも気持ちがいいわ。からだをまるめて、屋根の上の雨の音に、じっと耳をすますのもいいものよ。たのしくすごすって、ほんとにわけのないことよ。
きょうも、また、十一月の一日がしずかにくれていきました。ミムラねえさんは、羽ぶとんの中にもぐりこみました。足をのばすと、こつんとつま先がぶつかったので、つま先をまげて、あんかをはさみました。
おもては雨でした。一、二時間たてば、ちょうどいいかげんにおなかがすいて、フィリフヨンカのお料理が、おいしく食べられるでしょう。おしゃべりしたい気も出てくるでしょう。いまは、ぬくぬくと、なにもかもわすれて、あったかにしていればいいんです。ミムラねえさんには、いま、すっぽりとからだをくるんでいる、大きなやわらかいふとんだけが、この世の中のすべてでした。ほかのことは、みんな関係のない、よその世界のことでした。ねむたくなればねむり、おきたほうがいいときにはおきる、それがミムラねえさんなのです。
(トーヴェ・ヤンソン 『ムーミン谷の十一月』)