風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『ムーミン谷の十一月』 3

2016-08-08 20:37:44 | 

 ああ、家ってやつは、どれもおんなじだ、と、スナフキンは思いました。下のほうが、水の中にきえている、小さな階段にこしかけました。灰色の海は、しずかにないでいて、島々のすがたは見えませんでした。すがたをかくした島を見つけだして、もとどおりのところにひきもどすのは、たいしてむずかしくないでしょう。どの島も、海図にちゃんとのっているんですからね。ボートのあなもふさげたことだし。でも、そんなことをしたって、どうなるんだ、と、スナフキンは思いました。ほうっておいたらいいんだ。島だって、のんびりしたいにちがいないんだから。
 スナフキンは、もう、あの五つの音色を、やっきになってさがそうとはしませんでした。やってきたくなったら、きっと、音色のほうからやってきます。ほかにも、曲なら、たくさん持っているんです。今夜はちょっぴり、ハーモニカをふこうかな、と、スナフキンは思いました。

(トーヴェ・ヤンソン 『ムーミン谷の十一月』)

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