風薫る道

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12月文楽公演『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』 七段目~十一段目(12月4日)

2016-12-29 22:05:18 | その他観劇、コンサートetc




今年の観劇記録は今年のうちに!あと2つ(歌舞伎座&レント)、続けてあげます!

国立劇場開場50周年記念の文楽第二弾、『仮名手本忠臣蔵』の夜の部に行ってきました。
4日のチケットを買っていたのに、間違えて3日に行ってしまって。。。劇場入口でチケットを財布から出して気付きました
ダメ元でカウンターに相談してみるも「本日は満席なので・・・」と。そうよね、人気公演の初日だものね・・・。「明日お待ちしています」の笑顔に慰められ、帰宅。
そして、翌日再び国立劇場へ。

今月の公演は昼と夜を通しで10:30~21:30まで11時間!江戸時代さながらですね~。通しで観劇された方も多かったようで、尊敬。
私は昼の部のチケットはとれなかったので夜の部のみの観劇となりましたが、9月の『一谷~』に続き、皆さん気合い入ってました~

【七段目 祇園一力茶屋の段】
文楽の仮名手本を観るのは今回が初めてです。
玉男さんの由良之助は、存在感が薄めで。なのでその分、この段は「おかると平右衛門の物語」なのだなぁということがよくわかりました。
玉男さんもですが、咲太夫さんの由良之助(前半)も祇園の夜の空気というのとはすこし違ったような。私が吉右衛門さんの七段目の由良さんを好きすぎるせいかもですが。

今回夜の部をとった理由の一つ、簑助さんのおかる
おかるの周りだけが祇園の夜の空気が漂ってる(語りではなく人形の威力がすごい)・・・・・。遊女のけだるい酔態、あだっぽさと勘平を愛する健気さ、軽率な行動もしてしまいそうなトんでる感じ。私の理想のおかるだ。。。
人形が酔ってる。熱い息を吐いて、ほてった肌を風に当ててる・・・。
ずっとお軽ばかりを見ていたかったけど、困ったことに簑助さんって「目が合ったように錯覚させる」系の人形遣いさんなのよね・・・。いつも「私ばかり見ていないでちゃんと後輩達も見てやってください」と凄まれてる気分になるの・・・。いや、ご本人は完璧なポーカーフェイスなので、私の勝手な思い込みなんですけど。
勘十郎さんの平右衛門との兄妹の師弟共演、見られて嬉しかったです。
そして初めて簑助さんの人形を観たときに玉三郎さんと似てると思ったけど、今回の簑助さんのおかるの可愛らしさも玉三郎さんのおかると似ているなぁと思いました。

平右衛門を語ったのは、咲甫太夫さん。私は少々苦手な太夫さんなのですが、今回は熱い語りが平右衛門になかなかにお似合いでした。下手側に仮の床を作って、本なしで語っていらっしゃいました。
文楽の七段目は入れ事もなくさくさくと進んで、スマートでいいね。

【八段目 道行旅路の嫁入】
これは私は歌舞伎で観たことがないので、観るのは初めて。
和生さんの戸無瀬、似合うだろうなぁと思っていたけれど、やっぱりこういうお役がお似合い~。落ち着いた、でもまだ若いお継母さん。

【九段目 雪転しの段・山科閑居の段】
雪転しの段。
これ、一度観てみたかったから嬉しかったです。雪玉 そして空から降る雪がキレイ(でもやっぱり△じゃなくて□だった・・・)。

山科閑居の段。
素晴らしかった
9月ラストの陣屋もそうだったけど、皆さん熱入ってますねぇ!
一番感動したのは、勘十郎さんの本蔵!微妙な心の動きがすごく伝わってきましたし、抑えた演技での存在感が抜群。九段目は本蔵が主役の話であることが初めてわかりました。歌舞伎で観たときは吉右衛門さんの由良さんが存在感ありすぎて、由良さんが主役に見えちゃったのよね^^;
和生さんの戸無瀬。品があって、これまた抑えた、でもうちに秘めた熱さが素敵。曽根崎心中のときのお初ちゃんを思い出しました。
他の皆さん(玉男さんの由良之助、簑二郎さんのお石、玉佳さんの力弥、勘彌さんの小浪)も、本当によかったです。

山科閑居の床は、前半が千歳太夫さん×富助さん、後半が文字久太夫さん×藤蔵さん。
どちらも素晴らしかった。特に後半は圧巻でした。
藤蔵さんの三味線、熱い~~~  真ん前の席でたっぷり堪能させていただきました。演奏の合間に何度も糸を調整してらして熱演しすぎで切れたとか?と思いながら見てたんですけど、これは糸を繰るという作業のようですね。ほぉ。この光景時々見るけど、三味線の調子でも悪いのかな?と不思議に思っていたので、スッキリしました。
そして歌舞伎でもそうでしたが、九段目は舞台の色合いがすんごくお洒落。家の黒に、雪の白。由良之助とお石の黒、戸無瀬の赤、小浪の白、力弥の紫、本蔵の黄。ウットリ

というわけで私はものすごく楽しかったんですけど、近くの席の方達は終わった後に「舞台の上の人数が多くて、なんかごちゃごちゃしてたね~」と。確かに人数多すぎて庭の雪灯籠も見えにくかったくらいではありましたけど笑。
でもすっごく楽しかったからいい!
はぁ、、、、大満足。幸せ。

【十段目 天河屋の段】
こちらも初めて観る段。
この段は「平成10年12月公演以来18年ぶりの上演で、国立劇場では開場以来2度目となる上演の稀な場面」とのこと。
大興奮な九段目の後なので気が抜けて観てしまいましたが、貴重な上演、観られてよかったです。あまり面白いお話ではありませんでしたが。。
文楽では了竹って出ないんですね。床本にもない。歌舞伎だけなのかな?
「天河義平は男でござる」はさらっと流れた感じで、聴いている方にも待ってました感は薄めでした。私も今回の予習でこれが有名な台詞と知ったくらいですしね・・。「遅かりし由良之助」(台詞じゃないけど)なんていう言葉も今では全く言われないですものねぇ。昭和初期までは一般的に普通に使われていたみたいですが。ちょっと寂しい気もしますね。
義太夫のラストで「忠臣蔵」という言葉が出るところは、ワクワクいたしました。合言葉は「天」と「河」に決まり、いざ討入りへ!

【十一段目 花水橋引揚の段】
文楽なので討入り場面はなく、討入り後。この事件の発端の一人、若狭助(幸助さん)が爽やかに再登場。
この場面も観るのは初めてなので、観られてよかったです(歌舞伎座の杮落としでもやらなかった)。
夜明けの雪の江戸(設定は鎌倉だけど^^;)の街の書割に、当時はこんな感じだったのかな~と楽しく見ました。雪のお芝居、大好き。

平成も28年の師走に、文楽の仮名手本忠臣蔵の全段通し上演を観る。
これ以上の贅沢がありましょうか。
企画してくださった国立劇場さん、ありがとう!

配役表

国立劇場開場50周年記念12月文楽公演『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』が開幕

※文化デジタルライブラリー『仮名手本忠臣蔵