風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『実盛物語』 @歌舞伎座(4月13日)

2019-04-17 23:11:54 | 歌舞伎




仁左衛門さんが初めて実盛を演じたのは1972年、26歳の時だった。それは子供の頃からせりふをよく真似していたという憧れの役。「先輩方の素敵な舞台を拝見すると、パァーっと華やかになさっているんです」。実盛は思慮分別に富み、情理をわきまえた人物。時代物に登場する典型的な“爽やかで格好いい侍”の役どころだ。その華やかさを舞台に現出させるには技術が必要で、それを習得するには年月がかかる。「初役のときは、がむしゃらにやっていたら最後まで声がもちませんでした」と笑い、「せりふというのは言葉ではなく、心を伝えなければなりません。それをお客様の耳にスーッと馴染んでいくように届けなければならないのです」と、実盛という人物を演じる難しさを語る。・・・
実盛という人物の潔い生き様や作品の魅力について改めて訊ねると、意外なことに「あまり深く考えたことはない」という答え。「そうしたことにこだわってばかりいると、芝居がこせこせしてしまいます。芝居や役によってその度合いは異なりますけれども、このお役は掘り下げすぎるのはよくないですね」・・・「演目によっては深く掘り下げなければいけませんが、こういう演目は、ご覧になる方にもドラマや理屈ばかりを追い求めるのでなく、歌舞伎独特の雰囲気というものを味わっていただきたいですね。歌舞伎には役者の華で魅せる芝居というものもあるのです」。

(片岡仁左衛門 The New York Times Style Magazine: Japan, APRIL 28, 2019)

この演目は以前菊五郎さんで観たことがあるけれど、例によって演じる人が違うと印象も違うものですね。
菊五郎さんの実盛は立派で堂々とした印象だったけれど、仁左衛門さんは華やかで軽やか(ちょっと上方ちっくだったけど笑) 中盤の白旗を持った見得など美しくて惚れ惚れしてしまった。
実盛物語って私的には少々タイクツな部類の演目なのだけど(ファンタジー入ってるところなどは好きですが)、ニヤニヤできる演目でもあり。この日は妙にドスのきいた8〇3さんですか・・?な大向こうさんが、ラストの花道の七三で「待ってました!」「たっぷりと!」。ほぉ、やはりここはニヤニヤポイントということでOKなのかとニヤニヤ観ていたら、なかなか歩き出さないお馬さんのたてがみをそっと撫でるニザさまの美しすぎる仕草というまさかの不意打ち・・・ ニヤニヤどころじゃないですよ。はあ。。。本当に華やかな役者であるなあニザさまは。。。”役者の華で魅せる芝居”と自ら仰るだけある”花の人”ニザさま(そういうタイトルの本があるんですよ~ニザさまファン必読!)。おさすがでございます。

太郎吉は、先月に続いて仁左衛門さんと共演の眞秀くん。
「かかさまの敵!」場面は「実盛が悪い人じゃないことくらい見ててわからんかね?」とツッコミたくなる場面なのだけれど、今回はそうならず。眞秀くんって落ち着いてるのに無邪気というか嫌味がないというか、とても楽しそうに舞台にいるのよね。この腹の据わり方はさすがはしのぶさんの息子さん。

九郎助の松之助さんもとてもよかったのだけれど、途中で台詞がとんで幕見席まで聞こえるプロンプが。こんなにガッツリなプロンプはニザさまが四谷怪談をやった竹三郎さんの会以来だなあと思っていたら、あのときも松之助さんだったのだった

今回、井戸の底に向かって小万の魂を呼ぶ場面がなかった気がするのですけど(小万の遺体に直接呼びかけてただけだったような)、気のせいかな。私の意識がとんでた・・?

次回のニザさまは6月の忠兵衛
の前に5月の和史くんの初舞台のジブリの祝幕にもちょっと惹かれる。12月のナウシカ歌舞伎はすんごい楽しみ(菊ちゃんがんば!) って今気づきましたがナウシカは歌舞伎座じゃなくて新橋演舞場なのか。

平成最後の歌舞伎は昼の部の『鈴ヶ森』を観たいのだけれど、観られるかな。爽やかなニザさまで平成最後でもそれはそれでよいのだけれど。





歌舞伎美人より。ああ、とても素敵だ