【マーラー:交響曲第10番 嬰へ長調(デリック・クック補筆版)】
マーラー10番を聴くのは初めて。
「補筆版」ってどうなのだろうという気持ちがあってあまり食指が動かなかったのだけれど、”インバル都響のマーラー”は都響名物のように言われているので一度聴いてみたくて。
そして予習でyoutubeで数年前の同コンビの演奏を聴いてみたら、、、なんて良い曲。聴かず嫌いはいかんですね。
今日の演奏は、マーラー特有の諧謔味や可愛らしい音やしっとりとした美しさとかはあまり感じられなかったけれど、それを補って余りある重く濃く暗く、そして開放感のある音。高音の突き抜け感。改めてインバルは都響に良い音を出させますねぇ。。。
特にヴィオラとチェロの美しさが印象的でした。
全体的には速めで推進力があって、もう少しゆっくりひたらせて〜と感じることもあったのに、最後の長い長い一音の深みと静けさにやられた。。。。
あの終楽章、それまでの楽章で描かれたマーラーの葛藤や苦悩やアルマへの様々な感情(全てひっくるめての愛情)を最後に彼が音楽の世界の中で静かに美しく昇華させたような、そんな感覚を覚えながら聴いていました。
カテコのインバルも、とても満足そうだった
この日はヴィオラの店村さんの最後の日で、終演後に花束とご趣味の釣り竿が送られていました。今日のヴィオラの音、本当に素晴らしかった。真ん前の席(今日も最前列笑)で堪能させていただきました。
インバルの次回の来日は、6月の都響1000回公演のブルックナー9番とのこと。
お元気で来日してください!今回のご様子だと全く心配はいらなそうですけれど
※参考:グスタフ・マーラー(1860~1911)交響曲第10番 補筆5楽章版(千葉フィル)
インバルが語るマーラー10番(クック版) Inbal on Mahler's 10th-Cooke Version
【マーラーが遺した最後の言葉 最もマーラーらしく 最上の「クック版」】
作曲家が遺した未完の作品が、常に完成されるべきものとは限りません。けれどもマーラーの交響曲第10番には、大いにその価値があります。なぜならそれはマーラーが書いた交響曲という自叙伝の続きであり、彼の人生と願望、世界観についての長編小説の続きだからです。
マーラーは何回も「別れ」(Abschied)を告げています。《大地の歌》では「永遠に、永遠に」と。第9交響曲で彼は人生に別れを告げ、死を受け入れます。そして第10番は、まるで死後の世界で書かれたような、非常に不思議な強い印象を受けます。死後に彼が復活し、人生や死について回想しているかのような。
楽譜には、彼の妻に宛てたたくさんの書き込みがあり、妻への愛を表しています。2人の生活は大きな問題を抱えていたのですが、マーラーは音楽の中で愛が完全に成就するようにしたのです。最終楽章は、彼が人生に求め、得られなかったすべてのものへの熱望で、心が張り裂けるようです。
完成されていたら、これは非常に偉大な交響曲だったでしょう。肝心なのは、彼がすべての小節を書き、全曲を通して欠落はなかったということです。作品の半分はオーケストレーションまで完成し、残りも四段譜に各声部が書かれていましたが、いくつかの箇所はハーモニーを完成させる必要がありました。
シェーンベルクやベルクなどの作曲家は交響曲を完成させる勇気がありませんでした。デリック・クックだけがまるでマーラーが乗り移ったかのように取り組み、何年もかかって演奏可能な状態にまで仕上げました。
私がロンドンのBBC交響楽団で演奏した際、クックがリハーサルに立ち会い、いくつかの箇所で代替のオーケストレーションを話し合いましたが、彼はその後改訂版(第3稿第1版)を出版しました。彼の死後、助手が小さな修正を加えた新しい版(第3稿第2版)も出ましたが、私はいくつか同意できない変更点は前の版に戻しています。それが最も満足できる、マーラーの精神に忠実なものだと思うからです。
クックの作業は、すべてマーラーのスケッチに基づいています。その後、他の研究者などによる別の完成版も作られましたが、私はクック版が最もマーラーらしく、信頼できる、最上のヴァージョンだと考えています。
この演奏をお聴きいただくことは非常に重要なことで、これによって彼の全交響曲シリーズが完結するのです。ちょうどマーラー最後の言葉のように。
(エリアフ・インバル)
(曲目解説(都響)『月刊都響』2014年7・8月号の原稿を改訂)
#都響
— Harumi TAKADA (@Harulin9) February 24, 2024
前日に引き続き、渾身のマーラー。最後の静寂に向かう時間はとても長く、お客様と共に会場がシーンと張り詰めた雰囲気に包まれました。
弾いている間は濃密でとても長いような気もする一方、最後まで行くともう終わっちゃった!と意外に短く感じると言う矛盾した時間感覚になりました。 https://t.co/ouMBg6o7NT
今日は、5楽章の美しいFLソロに視界が滲み、カーテンコールではMo.インバルから店村先生へ花束が渡されてまた視界が滲みそうになったところに、めで鯛登場で🎣、ステージが笑顔に包まれました🤭
— 小池郁江 Ikue Koike (@ikue_koike) February 23, 2024
素晴らしい音でいつも私たちを導いてくださった店村先生、本当にありがとうございました🥹 #都響 https://t.co/nWPNgd770N
店村さんがついに都響を去る日が来た。今日のマーラー10番随所で出るヴィオラの旋律は都響ヴィオラチームが店村さんに感謝を捧げるような、特別なsoliだった。
— tomoyuki HIROTA 広田智之 (@TomoyukiHirota) February 23, 2024
その大きすぎる存在故、店村さんがいない感をこれからじわじわと感じるのだろう。
ありがとう師匠!春になったらまた釣りに行こう!! pic.twitter.com/maKFWV4HIS
Photos of today’s concert 📸
— 東京都交響楽団 Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra (@TMSOnews) February 23, 2024
2/23(金・祝) #都響 スペシャル
東京芸術劇場
指揮 #エリアフ・インバル
【インバル/ 都響第3次マーラー・シリーズ①】
マーラー:交響曲第10番 嬰へ長調
(デリック・クック補筆版) pic.twitter.com/ZkF5x0VMxm
【インバル/ #都響 第3次マーラー・シリーズ】のプランについてhttps://t.co/XFghBkHhLB… pic.twitter.com/kCegYosQnV
— 東京都交響楽団 Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra (@TMSOnews) February 28, 2024
長年に渡り #都響 の活動に大きな貢献を果たし、2024年3月末付で退団するヴィオラ特任首席奏者 #店村眞積 より、応援してくださった皆さまへメッセージです✉… pic.twitter.com/vdAFtPJXf4
— 東京都交響楽団 Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra (@TMSOnews) March 16, 2024