漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

(拾い読み)皮膚疾患の漢方治療〜漢方水嶋塾講義録より

2017年10月21日 17時17分32秒 | 漢方
 水嶋丈雄先生の講演を2回ほど拝聴したことがあります。
 他の講師と違って、西洋医学の研究成果を漢方理論の説明に用いるところが斬新だと思いました。
 ただ、早口でまくし立てるので、2回とも後半は消化不良状態で煙に巻かれてお終いという感が否めず。

 その水嶋先生の講義ノートが本になりました。
 手元にある書籍「漢方治療の診断と実践〜漢方水嶋塾講義録」(水嶋丈雄著、三和書籍、2012年発行)がそれです。
 皮膚疾患の項目を読んでみました。
 漢方理論ももちろんですが、ところどころに顔を出す口訣が印象に残ります。

 しかしこの本の内容、日本語が変だし、誤字が混乱するほど多いですね。購入した際、読み始めたものの読みづらくてわかりづらくて挫折した記憶がよみがえってきました。もう少し校正に力を入れて欲しかったです。

******************<メモ>*****************

・湿疹の漢方治療を考えるとき、『傷寒論』だけでは間に合わず、『温病学』が必要である。
・『傷寒論』は「寒」という名前がつくように冷えが中心となっている。その冷えにおけるいろいろな生体の変化や疾患の変化をまとめたものである。
・冷えというのはウイルス感染を指し、一方の温病は細菌感染を指していると思われる。
・朝起きたら喉が痛い、ありは朝起きたら喉が痛くて熱が出てきた、などというようなとき、どうも『傷寒論』だけではうまく説明できない。
・衛分病の主症は「発熱、悪寒」であり、『傷寒論』では「悪寒、発熱」と悪寒が先に来る。温病は細菌感染だから、発熱の方が優先されるのである。
・衛分病には銀翹散を用いるがエキス製剤にはない。著者は「葛根湯+桔梗石膏」で代用している。
・血分病は敗血症類似病態である。



・「三焦弁証」には湿疹という病態が出てくる。風湿は舌に汚い苔を付けるのが特徴だが、滲湿(=滲性の汚い湿疹)が出る場合は消風散を使う。
・日本は島国なので、湿の絡んだ病態が非常に多い。



・夏に悪くなる皮膚病には消風散、冬に悪くなるような皮膚病には十味敗毒湯、少し熱が絡んできて丘疹が強くなってくるなど二次感染を起こしてきたら十味敗毒湯、掌蹠膿疱症には十味敗毒湯。

・白虎湯グループ(※)は、主が石膏で副が知母、目標は燥熱で、汗が多くて乾燥、脈が非常に強いことが特徴である。実証であることに注意すべし。
※ 白虎加人参湯、越婢加朮湯、消風散、小柴胡湯加桔梗石膏、桔梗石膏
・石膏の証:乾燥、微熱、脈圧が高い、腹力が強い、皮膚が乾燥(しっとりしている桂枝湯とはまったく逆)。
・白虎加人参湯は表皮の炎症性の乾燥型アトピー性皮膚炎に使うことが多い。皮膚表面の循環血漿量を増やすために人参が入っているが、人参を入れることにより炎症が強すぎる場合に悪化することがある。だから白虎加人参湯は炎症があまり強すぎるときには使えない

【消風散】
・白虎湯グループに属する、強い実証の方剤。
・かゆみの強いタイプ、特に貨幣状湿疹によく効く。
・ポイント:舌に汚い苔(白かったり黄色かったり)をつけること、むくみの傾向があること。
※ 舌に乾燥があるものには効かない。
・なんとなく地肌が汚い。
・掻き壊してケロイドに近い赤い線状痕がついているようなときによく効く。

【荊芥連翹湯】
・黄連グループ(胃熱グループ)に属し「煩躁不安・心下痞・悪心・舌黄膩苔」がポイント。
・実証。
・基本的には、アデノイド(咽頭扁桃)が非常に大きく、常に喉の炎症を伴うようなケース。
・温清飲は日光皮膚炎、ベーチェット病に使えるが、荊芥連翹湯も日光皮膚炎に使える。
・顔面の湿疹が主だが、にきび、アデノイド(扁桃)が大きい人、慢性炎症がある人によい。
※ 柴胡清肝湯は上半身の湿疹、竜胆瀉肝湯は下半身の湿疹が原則。

【柴胡清肝湯】
・温清飲(黄連解毒湯+四物湯)に柴胡がくっついていると考えればよい。
・目標:神経質でカンが強い、皮膚が浅黒い、やせ型、好き嫌いが多い、手足が湿っている、性格が気まま、靴下が汚い・・・要するに非常に暴れる子。
・くすぐったがり。腹を触るとくすぐったがる子は胸脇苦満である。
柴胡清肝湯はものすごくまずいのだが、カンが強くてくすぐったがりの子はよく飲んでくれる

【治頭瘡一方】
・一貫堂処方で実証。
・乳幼児の湿疹(くさ=頭にかさぶたのようなものができるもの)、とくに首から上の湿疹にはよく効く。
・成人の場合、脇の下と陰部のかゆみ、湿疹が残った場合。髪の毛の生え際にずっと湿疹がつくようなケース。
・川芎と大黄が入るので、犀角の方位(血分証)が入っている。
・舌に黄色い苔をつけるのが特徴(子どもでは付けない)。
・清熱には清上防風湯、解毒には治頭瘡一方(勿誤薬室方函口訣)。
※ くさ=小児の頭部湿疹で分泌物・かさぶたのあるもの。

【十全大補湯】
・補剤:人参、黄耆、白朮、甘草を含む。
・放射線合併症の予防に用いる。
・皮膚表面の免疫を上げる働きが強いので、皮膚のターンオーバーを強くする。
皮膚表面が希薄になって、皮膚に線状痕がついてきて、ステロイドの副作用が出てきたようなときによく効く
・アトピー性皮膚炎で皮膚が非常に弱くなってしまってどうしようかというときに使う。

<アトピー性皮膚炎の漢方治療>
(乳幼児期)
・陽が強く、しっかり清熱する必要がある。
・清熱には治頭瘡一方
・心身症になった場合、例えば夜泣きするとか、夜にバリバリ掻いたり、寝言を言ったりするケースでは甘麦大棗湯、胃腸が弱いケースでは小建中湯+桔梗石膏がよく効く。
(学童期)
・腹が冷えて、表皮の乾燥型には白虎加人参湯
・心身症が絡んできて、手の届くところだけ掻いているような、くすぐったがりの、靴下が汚いような子、疳の虫が強い子は柴胡清肝湯が効く。ただし、皮膚性状に合わせて、カサカサ肌には当帰飲子、ジュクジュク肌には消風散、膿痂疹には十味敗毒湯、かゆみだけになった場合には桂麻各半湯などをうまく加えていくのがコツ。
(成人)
・虚証で熱を持っている虚熱には三物黄芩湯。
・実証で熱を持っている実熱には梔子柏皮湯。目の周りがこすって真っ赤になるような人、猿みたいな顔をしている人、口の周りが真っ赤になっているケース、乳房乳頭が真っ赤になっているケースにも使える。

【十味敗毒湯】
・華岡青洲作。
・丘疹、膿痂疹によい。掌蹠膿疱症にも有効。
・分泌物が多いときは消風散、乾燥型には温清飲、化膿症には十味敗毒湯。
・本治と標治の両方に有効。
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