漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

家庭でできる漢方「子どものアトピー」

2010年03月06日 17時48分59秒 | 漢方
仙頭正四郎 著、農文協(2007年発行)

アトピー性皮膚炎に対する漢方治療の一般向け啓蒙書・・・と思って購入しましたが、ちょっと違いました。
著者は漢方と云っても日本漢方ではなく中医学の専門家でした。

日本漢方:その昔、中国から伝わった医学が日本独自の発展を遂げて成立した伝統医学。
中医学:中国のオリジナル医学。

上記のように、一口に漢方と云っても2種類あると考えてください。
この本の中では「中医学=東洋医学」のように使用されています。

ですから、漢方医学をかじっている私には「あれ?こんな風に考えるんだ・・・」と戸惑うことしばしば。
まあ、理論の根っこは変わらないんでしょうが。
治療薬を選択する上で、同じ薬を使う場合もそこに至る背景理論が異なります;

(例)甘麦大棗湯
漢方的・・・赤ちゃんの「夜泣き」のくすりとして有名ですが、湿疹がかゆくてぐずって眠れないときにも使用することがあります。
中医学的(本書の解説から)・・・「脾」を助けながら、東洋医学で云う「心」におだやかな状態を提供します。小児には、諸機能の健やかな成長を引き出すための「心」の役割が重要です。また、体の土台をささえるのには「脾」が重要です。その両者を、甘麦大棗湯は、出しゃばりすぎずに補強します。「陰」を補い、騒いでいる「心」の働きを調整します。

中医学の方は読んでもよくわからないでしょう?
この調子でずっと続くので、一般読者には敷居が高いのではないでしょうか。
私も読後、十分理解できたとは言い難いです。
なぜわかりづらいかというと、いろんな理論が複雑に絡み合って解説されているからです。
複数のパラメーターが縦横無尽に出てきて理論を形成しています。
それらは・・・

・陰陽虚実
・気血津液(漢方医学では気血水)
・五行学説:木火土金水
・臓象学説:肺脾心腎肝

これらが組み合わされて「この患者さんは肌皮湿縕、衛気不暢、化熱生痒という状態です」なんて書かれてもちんぷんかんぷん(苦笑)。
中医学の基礎理論を勉強して理解した後で本書を再読すると、おそらく頷けるのでしょうけど。

くすりの使い方はさておき、生活指導というか考え方には共感しました。
「東洋医学の最終目標はくすりを使わずに済む体にすること」・・・なるほど。
生活習慣、食生活を自分の体にあったものにしていくことで、病気が入り込む余地を与えない。
難しく考えることはない、体が喜ぶ生活、食事を心がけていきましょう。
しかし、車も常に新車でいるわけにはいかないので、中古状態になっても修理しつつ走り続けましょう、とのこと。

私自身、漢方を使い始めたとき自分自身にいろいろ試しました。
すると「こんなときにはこのくすり」が大体決まってきました。
例えば、下痢のときは半夏瀉心湯、二日酔には五苓散、疲れがたまったら補中益気湯・・・あるとき、ふと気づきました。

「くすりを飲まなくて良いように生活を変えればいいのでは?」

そして水分の取りすぎ、アルコールの飲み過ぎに気をつけ、睡眠不足解消に努めるようになりました。
これって「養生」そのものですよね。

食養生についての記載も目にとまりました。

■ 春
 体の中では「肝」の働きが盛んになるので、この季節は「肝」に働きかけるような旬の食べ物を選びます。筍ご飯、わかめやシジミの味噌汁や吸い物、新キャベツや新タマネギを使ったスープ、甘鯛の塩焼き・・・。
 もしこの時期に「肝」の働きが鈍っていると、血の巡りが悪くなり、下半身は冷え上半身がのぼせてしまいます。
 また、春は新茶が出回る季節。ただ、緑茶には体を冷やす働きがあるので飲み過ぎはいけません。ほうじ茶か紅茶の方がよいですね。

■ 梅雨
 この季節は「湿」の勢いが盛んです。この「湿」をさばくために「脾」や「胃」など消化器系への負担が大きくなるので、それらの働きを助ける食材を選ぶようにします。
 おかかや生姜を添えた焼きナス、キャベツとトマトをスープにして、またキュウリやわかめの酢の物、貝の吸い物なども良いですね。

■ 夏
 この季節は「心」と「小腸」の働きが盛んになるので、それを促す食べ物を献立に盛り込みます。
 例えば、キュウリやミョウガの和え物、ナスや瓜の炒め物、レンコンやカボチャを天ぷらや煮物で、美味しくなるレタスも味噌汁やスープでいただくといったように。この時期ならスイカやメロンも結構です。

■ 秋
 「肺」の働きが盛んになる季節。「肺」と関わりのある鼻、大腸、皮膚の働きをフォローする食材を選びましょう。
 中国の家庭では、秋の初めに百合の根を食べる習慣があります。百合は漢方薬では「百合(ビャクゴウ)」として使用されます。夏の疲れを取り、「肺」を潤して呼吸器を守る働きを持つとともに高ぶった神経をしずめて免疫力を高める働きがあります。おかゆやスープに入れたりして食します。
 さつまいもに里芋、ほうれん草に椎茸などのキノコ類、大地の恵みをたくさん摂りましょう。

■ 冬
 「腎」や「膀胱」の働きが盛んになります。逆に負担も大きくなるわけですから、体を寒気から守るため、内側から温める働きのある食べ物を積極的に取り入れます。
 根のもの(大根やニンジン、ゴボウ、里芋など)をたっぷりと入れたけんちん汁、ふろふき大根、牡蠣や白菜、ネギを入れた鍋物など「聞いただけで体が温まりそう」といった感覚を磨くことが大切です。

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