漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

漢方医学では「こころ」をどう捉えるのか?

2024年07月06日 07時13分05秒 | 漢方
漢方理論はいくつかの概念を導入して使い分けています。
初学者にはそれがピンとこなくて混乱するのですが・・・。

急性疾患には「六病位」や「気血水」
慢性疾患には「気血水」と「五臓論」
が使用される傾向にあると思います。
※ 五臓・・・肝・心・脾・肺・腎

漢方を多用する小児科医である私の最近の悩みの一つに、
・発達障害(ADHD、ASD)
・起立性調節障害(OD)
の「こころ」「気持ち」に対する処方があります。

こころは五臓論の「脳」に効く生薬を使えばいいのではないかと考えましたが、
残念ながらなぜか五臓には「脳」がありません。
因みに私が“こころの症状”よく使用する漢方は、
「肝」と「心」に分類されることが多いです。

では人間のこころの働きを、五臓論ではどう捉えてきたのでしょう。
あるWEBセミナーで、
「五臓論では“こころ“の部分部分を各臓器に分配した」
と説明されました。

なるほど!
だからわかりにくかったんだ・・・。

ではどのように分配されているのか、
チェックする必要がありますね。

こちらを参考に、
五臓の“こころ”に関する部分の抽出を試みました。


<総論>
 概要
・『黄帝内経』に「意識・思惟・精神・情緒は脳の機能である」と記載されている。
・五臓の生理機能が正常であってこそ、脳の機能も正常に機能する。
・意識・思惟・精神・情緒は五臓それぞれの生理活動と密接な関係がある。
(例)肝ー魂、心ー神、脾ー意、肺ー魄、腎ー志

<各論>
【肝】
■ 疏泄を主る・・・「情志」の調節
・中医学では人の情志活動は心とともに肝の疏泄とも密接な関係があるとしている。肝の疏泄機能が正常であれば、気機は正常に活動し、気血は調和し気持ちも明るくなる。
・肝の疏泄機能は情志に影響を与える。
・肝の疏泄機能が失調すると情志に変化(抑制と興奮)が現れやすくなる。
・肝気が鬱結すると抑うつ状態になりやすく、わずかな刺激を受けただけでも強い抑うつ状態に陥りやすくなる。
・肝気が興奮しすぎるとイライラしやすくなり、わずかな刺激でも怒りやすくなる。
・外界からの刺激を受けて起こる情志、とくに「怒」は肝の疏泄機能に影響を及ぼしやすく、これにより肝気の昇泄過多という病理変化が生じることもある。

■ 肝と五行との照応関係・・・怒は肝の志
・怒は一般的に生理活動に対して好ましくない刺激を与える感情で、気血を上逆させ、陽気を過度に昇泄させる。
・肝は疏泄を主っており、陽気の昇発は肝のはたらきによるものであることから、怒は肝の志とされている。激しく怒ると、肝の陽気の昇発が度を超すことになるので「怒は肝を傷(やぶ)る」という言い方もする。
・肝の陰血が不足すると、肝の陽気の昇発が過剰となり、わずかな刺激を受けても怒りを覚えやすくなる。

【心】
■ 心は神志を主る(心は神を蔵す、心は神明を主る)
・心には精神・意識・思惟活動を主宰する機能がある。
・「神」には広義と狭義の二通りの意味がある。
・広義の「神」・・・人体の生命活動の外的な現れを指す。
(例)人体の形象および顔色・眼光・言語の応答・身体の動きの状態など
・狭義の「神」・・・精神・意識・思惟活動を指す。
・心の機能が正常であれば精神は充実し、意識や思惟もしっかりしている。
・心が機能失調に陥れば、精神や意識・思惟活動が異常となり、不眠・多夢・気持ちが落ちつかないなどの状態になり、うわごとを言ったり、狂躁の状態になることもある。あるいは反応が鈍くなったり、健忘・精神萎靡となったり、昏睡・人事不省になることもある。
■ 喜は心の志
・外界の事物事象から受ける印象より起こる情緒の変化を「五志」という。
・「喜は心の志」とは、心の生理機能と精神情緒の「喜」との関係を言ったもの。
・「喜」は人体に対して良性の刺激を与える情緒で、心の「血脈を主る」などの生理機能に対してプラスに作用する。しかし過度になると、かえって心身を損傷することもある。

【脾】
■ 思は脾の志
・思とは思考・思慮のことであり、精神・意識・思惟活動の一つ。
・正常に思考する場合には、生理活動に対し悪い影響を与えないが、思慮が行き過ぎた場合、あるいは思念が現実化しないとしばしば生理活動に影響を及ぼす。最も影響を受けやすいのが気の運動で、気滞と気結を引き起こしやすくなる。
・脾の運化機能の失調は、思に悪影響を与え、ひいては生理活動にまで影響を及ぼす。例えば気結があるために、脾の昇清がうまく行えなくなると、思慮過度となり食欲不振・院腹の脹悶感・眩暈などの症状が現れやすくなる。

【肺】
■ 憂は肺の志
・憂と悲はともに肺志とされている。
・優秀と悲傷は、ともに人体に悪い刺激を与える情緒で、これにより人体の気は次第に消耗される。
・肺は気を主っているので、憂と悲は肺を損傷しやすい。
・肺が虚している場合には、憂と悲という情緒変化が起こりやすくなる。

【腎】
■ 恐は腎の志
・恐とは物事に対して恐れおののく精神状態。
・恐と驚は似ている。驚は意識せず突然受けるショック、恐は対象を明確に捉えた精神状態(いわゆるビクビク、おどおどした状態)。
・恐も驚もともに不良な感情で、ともに腎を損傷することがある。
・恐は腎の志であるが、心が主っている神明とも密接な関係がある。心は神を蔵しており、神が傷れると心が怯えて恐となる。恐により腎を損傷し、腎気不固となり遺尿が起こる。


・・・一読してみたものの、やはりよくわかりません。
理解するには「五志」、つまり陰陽五行説の、
 肝ー怒
 心ー喜
 脾ー思
 肺ー憂
 腎ー恐
も視野に入れてかみ砕く必要がありそうです。

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