引き続き、日本臨床漢方医会の動画シリーズから、
新型コロナ感染症の後遺症としての、
咳・呼吸困難の漢方治療についてまとめてみます。
わたしの従来の風邪に対する治療法と、
あまり変わらない印象です。
▢ 咳・呼吸困難の診察ポイント
・感染時の重症度、現在の肺損傷の程度(CT)を把握する。
・呼吸器系基礎疾患(間質性肺炎、COPD、慢性気管支炎、気管支喘息)の影響を評価する。
・痰の有無(気道炎症が残存しているかどうかチェック)
・呼吸困難が肺損傷だけによるものか、長期療養による筋力低下の影響がないかを評価。
▢ 咳・呼吸困難の時間経過を評価する
① 急性期:発症から4週間
② 亜急性期:4週間〜3ヶ月
③ 慢性期:3ヶ月以上
<long-covid の咳・呼吸困難に対する漢方治療>
◇ 解熱したが咳と痰が残る(① 急性期と② 亜急性期)
【小柴胡湯】
・感染における呼吸器症状に対する処方。
・咽頭痛があれば小柴胡湯加桔梗石膏を考慮。
・1〜2週間投与。
・薬剤性間質性肺炎の副作用に留意(短期間投与ではまれ)。
【柴胡桂枝湯】
・小柴胡湯より体力がない人に適用。
・頭痛・関節痛などが残る(遷延する)。
・咽頭痛があれば桔梗石膏を併用する。
◇ 1か月以上遷延する咳と痰(② 亜急性期と③ 慢性期)
【麦門冬湯】
・一度咳が始まると顔が真っ赤になるまで咳が止まらない(大逆上気)。
・乾いた痰が絡みつき、痰を出すのに苦労する。
【麻杏薏甘湯】
・痰があまり多くない咳で気道狭窄を伴う、喘鳴がある。
【清肺湯】痰が多い例。
・痰が多い慢性気道炎症に対して用いる。
・気管支拡張が強く痰が多い場合には第1選択薬となる。
【竹筎温胆湯】
・咳・痰だけが残り、夜横になると咳き込む。
◇ 1か月以上遷延する咳と痰(② 亜急性期と③ 慢性期)
〜全身状態(疲労倦怠、体重減少、筋量の低下)を評価して補剤を追加する。
【補中益気湯】
・疲労倦怠が強い例。
・ほかに微熱、寝汗、食欲不振など。
【十全大補湯】
・(補中益気湯の使用目標)+皮膚のつやがない、脱毛。
【人参栄養湯】
・(十全大補湯の使用目標)+呼吸器症状が強い、動悸がして眠れない。
◇ 3ヶ月を超えて呼吸困難が持続する例(③慢性期)
・補剤治療(補中益気湯、人参養栄湯)を主とする。
・食欲がなければ四君子湯・六君子湯などで体重を戻す。
・咳の症状が残る場合は麦門冬湯、清肺湯などを適宜加える。