先日、「日本臨床漢方医会」なるものに入会しました。
定期的に啓蒙動画配信をしており、
その動画をアーカイブしてあるので閲覧できるのが魅力です。
今回、新型コロナ後遺症として有名になった、
「味覚障害」と「嗅覚障害」を扱った動画を視聴しましたので、
そのポイントをメモしておきます。
▢ 嗅覚障害の分類
・呼吸性:鼻炎・副鼻腔炎等により臭い物質が嗅細胞に届かない。
・末梢性:嗅粘膜の炎症・障害、嗅糸の炎症・障害・断裂(頭部外傷時)。
・中枢性:嗅球・嗅索より中枢側の障害(単純ヘルペスなど)。
→ COVID-19の嗅覚障害は末梢性が主体で、一部中枢性の可能性がある。
▢ COVID-19後遺症としての嗅覚障害
・1ヶ月後までの改善率は、
(嗅覚障害)60%
(味覚障害)84%
→ コロナ感染症の治癒に伴い大半の人で早急に消失。
・多くの味覚障害例は、嗅覚障害に伴う風味障害の可能性が高い。
▢ COVID-19後遺症の嗅覚障害の経過
(診断後退院まで)(診断後3ヶ月)(診断後6ヶ月)
(嗅覚障害残存率) 37% 10% 6%
(味覚障害残存率) 38% 9% 9%
▢ 嗅覚障害・味覚障害の特徴
・COVID-19の重症度とは無関係に起こる。
・女性の方が多いとされるが、女性の方が匂い・味に敏感。
・味覚障害は嗅覚障害による風味障害で起こることが多いが、単独で残る場合もある。
・味覚・嗅覚が低下するだけでなく、異臭症や味覚異常もある。
▢ 嗅覚障害の漢方治療
・急性期から用いることで嗅覚障害の回復は早まる。
・使用される方剤例:荊芥連翹湯(50)、小柴胡湯加桔梗石膏(109)、葛根湯(1)/葛根湯加川芎辛夷(2)、五虎湯(95)、柴陥湯(73)、五苓散(17)、参蘇飲(66)、竹筎温胆湯(91)、麦門冬湯(29)、当帰芍薬散(23)
<嗅覚・味覚障害の漢方治療>
①上気道に炎症が残っている場合(発症後2ヶ月くらいまで)
【葛根湯/葛根湯加川芎辛夷】急性期で用いる。解熱しても鼻炎症状/鼻閉が残る場合
【麻黄附子細辛湯】高齢者/体力がない人で鼻炎症状が残る場合
※ 2週間以上継続処方が必要な場合は桂枝湯と併用する(桂姜棗草黄辛附湯)
【小柴胡湯/小柴胡湯加桔梗石膏】咳・痰などが残る場合
【柴胡桂枝湯】小柴胡湯より体力がない場合
②嗅覚・味覚障害のみが残存する場合(2ヶ月を超えて症状が固定)
→ 漢方的見方で全身状態を改善する
【補中益気湯】倦怠感・食欲不振
【十全大補湯】倦怠感+脱毛、皮膚のつやがない
【四君子湯/六君子湯】食欲不振、胃腸虚弱
【柴胡加竜骨牡蛎湯/桂枝加竜骨牡蛎湯】自律神経の乱れ(腹部動悸)
【加味逍遥散】不安・不眠
【当帰芍薬散】体力がない・冷え・むくみ・・・嗅覚障害診療ガイドラインに掲載されている