未読の安部公房の作品。
こちら内容紹介。
脚本家と火星人を名乗る男との問答形式で話は進みます。小説ではなく戯曲にもできそうな内容。
火星人は人間そっくりで、地球人だと思い込む火星人(地球病)と火星人だと思い込む地球人(火星病)の間で論理的な問答を通して話は進みますが、最後はダイナミックな展開になります。
巻末の福島正美の解説が、日本のSF創世記に触れていて興味深い内容ですが、その中で紹介されている安部公房のコメント「ぼくが夢みているのは、文学の中での、SF精神の復権なのである。自然主義文学によって占領された仮説文学の領地を奪回することなのである」が、本作の思想をよく表していると思いました。仮説文学とは耳慣れない言葉ですが、安部公房がよく使うようです(朝日新聞1961.6.3のエッセイ)。
安部文学の底流に流れる思想なのかもしれません。こちらのサイトに詳しいです。
本作は、エンターティメントとしてのSFではなく、文学としてのSFを目指した意欲作だと理解しました。
発行は1967年に早川書房からで、「燃え尽きた地図」と「箱男」の間に発表された作品です。
作者プロフィール。
書誌事項。文庫化は1976年。
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