平野啓一郎の新刊が出たので読んでみました。
こちら内容紹介。
5篇からなる短編集です。うち、「富士山」は、新潮に掲載されたときに読んでいます。
「富士山」は、ひょんなことから誘拐されそうになった少女を助ける行動をとった女性が、その行動への協調を躊躇った男性に対して幻滅する心理状態が書かれていますが、その男性が後日に別の子供を救助した行動を通して、女性の男性に対する認識についての葛藤が描かれています。
「息吹」は、中年健康診断ネタかと思われるほんわかした出だしから、緊張感が徐々に高まって、恐怖に襲われる小説です。サイコホラーって言うのかな?エンディングには息を吞みました。「決壊」と似た雰囲気の怖さです。
「鏡と自画像」は、死刑を希望する男が、人間を3人殺せば死刑になるということを信じ、それを実行に移す過程で様々なファクターに影響されるという話です。
これら3篇に共通するのが、内容紹介にも記されている「些細なことでわたしたちの運命は変わってしまう」というテーマだと思います。このパラレルワールド的な運命分岐は、平野啓一郎の作風という気がしてきました。
例えば、三島由紀夫なら三島調、安部公房なら公房調といった、同著者の作品を多く読むとその作者らしいスタイルを感じるようになります。平野啓一郎の場合はこれまでいくつもの作品を読んでも、平野調というのが私にはいまいちピンと来ていませんでしたが、この3編を読み過去読んだ作品を思いだすと、なんとなく平野調というのを感じられるようになった気がします。
「手先が器用」は、超短篇です。これはなんだろう?、、ほのぼのとした話だというのはわかるのですが、作者がこの作品を通して何を言いたいのかいまいちわからなかったです。
「ストレス・リレー」は、ストレスがウィルスように人から人へと伝わって、広がっていく様子をコミカルの描いたもの。ターミネーターの自由さが羨ましい、と思わせられました。
初出一覧。
著者プロフィール。
初版本です。
p.s. もう10月も終わりかぁ、、時間の流れを早く感じる。
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