地震リスク delphis manta blue

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<復興を願い 2011.3.11東日本大震災>
<未曾有の巨大災害 記録>

地震時の政策金融機関等融資支援

2006-11-06 | 地震リスク
国の財政再建による政策金融改革が始まり、平成20年度には日本政策投資銀行、商工組合中央金庫が完全民営化され、公営企業金融公庫の廃止、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行がひとつの新機関に再編され新体制に移行される。

国の「簡素で効率的な政府」への取り組みの方針のもと平成1 8 年6 月に政策金融改革推進本部が決定した「政策金融改革に係る制度設計」によると、「官から民へ」の観点から、民業補完に徹し、① 政策金融として必要な機能に限定し、これを残した上で、政策金融機関を再編し、政策金融の貸付残高の対GDP比を半減するとともに、② 民間金融機関も活用した危機対応体制を整備し、③ 効率的な政策金融機関経営を追求する、との基本原則に基づき取りまとめられた。

先の特殊法人改革により平成19年4月から独立行政法人住宅金融支援機構となる住宅金融公庫は、民間金融機関による長期固定金利型住宅ローンの供給を支援する証券化支援業務が主な業務となる。直接融資業務としては住宅資金の直接融資は原則として廃止し、災害関連、都市居住再生等の民間金融機関による融通が困難な分野に限り行うことになる。これまでの地震時における災害復興住宅融資の実績は平成16年の新潟県中越地震では310件、3,566百万円の申込を受理し、平成17年の福岡県西方沖地震では166件、1,031百万円の申込受理を行っている。

完全民営化される日本政策投資銀行は、世界初の防災格付融資制度を導入し、また非常時の資金調達手段として地震災害時発動型のファイナンスの組成と震災対策に積極的に取り組んでいるが、民営化後も引き続き震災時における社会のセーフティーネットとしての役割を果たすと宣言している。これまでの関連投融資額は平成15年度で約3,000億円、昭和30年代後半からの累計では10兆円を超えており、平成18年度では防災関連分野における投融資活動の強化を重点課題の一つと捉え、各種制度(防災格付融資の創設、危機管理対応金融普及促進融資の創設、防災新技術開発融資の創設、都市防災不燃化促進融資の継続、港湾地区の地震津波対策促進融資の拡充)の創設等に努めている。


統合される農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行の5つの金融機関のうち国民生活金融公庫は、個人事業者、中小企業中心の融資業務を行い、地震時では直ちに特別相談窓口を設置し、影響を受けた小企業の融資や返済条件の緩和などの相談に迅速に対応してきた。阪神淡路大震災のときは件数2万7,522件、2,176億円の災害融資を行った。平成17年3月の福岡県西方沖地震では213件、11億円の災害融資を行っている。

今後の制度設計において、ひとつに統合される新政策金融機関に掲げた「民間金融機関も活用した危機対応体制を整備」の具体的方策を検討する上で、民間のリスクファイナンスを活用した制度づくりに期待したい。