読む日々

テーマばらばらの読書日記

アントンー命の重さー

2012-11-16 | 絵本
「アントンー命の重さー」エリザベート・ツェラー作 中村智子 訳


作者の叔父をモデルにした おそらくほぼ実話。

第二次大戦中の、ドイツが舞台。
優秀な遺伝子のみが正しいドイツ人、との、ヒトラーの気違いじみた妄想のもと、有名なユダヤ人弾圧だけではなく、精神病患者や知的障害者を、保護すると騙して処置(=殺す)していたナチ。

事故の後遺症で、言語障害と右手の自由を失った子供、アントンを守るために両親や近所の人があの手このてでナチを欺こうと努力し、またアントン自身も自らの立場を正しく理解して必死に生き延びようとするお話。

市民中には、ナチよりの無知な人、もともと意地の悪い人間多数で、アントンは学校で、教師から、同級生から様々な嫌がらせや暴力を受けます。最後は田舎の遠い親戚を頼り、逃げ延びるんだけと、その間の人のこころや戦争の理不尽さ、狂った指導者をいただく国がどれだけ悲惨か、など、考えさせられる事がたくさん。

最後、ハッピーエンドかと思いきや、神経使ってボロボロになった両親が、戦後まもなく相次いで亡くなるという悲劇が。
このあたりが実話なんだわねぇ。

涙なくしては読めないけど、たくさんの人が読むべき本だと思います。子供にかぎらず、私達大人も。

ドイツは、辛すぎる体験をしているせいか、深い内容の児童書が多い気がします。

家族疲れ

2012-11-15 | 
小笠原紘子「家族疲れ」

2年半の単身赴任から栄転で戻った49才の男が主人公。

子供は大学4年の長男と名門私立高校3年の長女。

家族のために働いて来たのに、子供が成長し、好き勝手言うようなり、そのせいか妻が様々な不満を抱え、自由になりたいだの自立などいう、

最後は屋久島で生きるんだ、と妻が言い、離婚。


昨夜の愚痴の記事のあとにこの本の感想

ってのもなんだかね、ですが、

この妻は身勝手かと。
今まで専業主婦させてもらってたんでしょ?なりたいよ、私も。家事をする時間たっぷりあるならいいじゃん
それで。

まあ、妻よりの意見も多数でしょうが…。

つまりは、夫婦間に愛情があるかないか、だと思います。

作中、新潟市内が出てきますが、バス停とかがリアルでした。
が、
主人公、20年以上ぶりに訪ねた設定で、時は97年頃だから前回は70ねんだい半ばでしょ?

今の市役所前を20年前の記憶でも市役所前としてましたが間違い。
当時は県庁でした。

まあ、どのみちフィクションだからいいんだけど、惜しいなぁと思って。

満足度70

ファミリーツリー

2012-11-14 | 
小川 糸「ファミリーツリー」



この表紙の絵が、物語の世界観を表してます。


関係がややこしい主人公たち。

主人公はリュウ。本名は流星。
ヒロインはリリー。本名は凛々。

2人はそれぞれ、菊さんというお婆ちゃんの、ひ孫と孫。

流星のひいじいさんとリリーのじいさんは、同一人物ではなく兄弟。
最初の夫が戦死して、その弟と再婚したらしい。昔はよくあったみたいですね。
私の祖母も、祖父が早死にしたので、弟と再婚しろ、と婚家に迫られ実家に逃げ帰ったらしい。
ま、それは置いておいて。

信州穂高を舞台に、夏休みの間、濃密な時を過ごした親戚の子供達が、菊の経営する旅館の火事や、愛犬の死を体験しながら、惹かれあっていき、傷つけあい、様々な感情を乗り越えて結ばれるまで。

菊をてっぺんに、系図を書くとツリーのようだ、と。
私も読みながら、かなり早い段階で系図書いたもんね。

穂高の自然が素敵です。
山と海がある種のテーマになってる物語ですが、山の暮らしが圧倒的に
たくさん。

私も山での暮らしがしてみたいです。定年になったら、と思うけど、山暮らしのない6*才が、急に、は、無理だよね。

読んでいて様々な子供時代の感情が甦りました。

満足度100

キッドナップ

2012-11-13 | 
藤田宜永「キッドナップ」


親子関係が上手く行かない18才の真人は、家のお金200万を持ち、昔自分を誘拐し40日間育てた女を探しあて、その女、愛子がやっている真鶴の食堂で住み込みで働く。

そこで、愛子や、その友達、幸子、愛子の夫の元嫁の連れ子 美佳、愛子に恋心をいだく愛子の夫のユウジン林田などとの関係を通し、最後は母の死で内面の変化が完了するまでのお話。

ヘビーだけど、漂う空気感がいい。
正しい小説、って感じがする。

親子って、という、複雑な心理をかなり的確に突いてる気がします。

面白いです。満足度100