Haste not, Rest not

二度と返ってこない今の自分の気持ちを積み重ねる部屋。

木下黄太ブログ 転載

2013-08-30 17:39:49 | 放射能
福島第一原発の近いエリアの方と電話でお話しました。

「町の名前を出さないでほしいんです。福島県の原発に近い町とだけ書いてください。
ここの病院には、原発事故が起こった時に、福島県立医大の鈴木教授がきて「原発は大丈夫」といわれました。だから対応しろと。しかしその時に、こちらにはヨウ素剤を渡されなかったですよ。福島県立医大は内部や家族には、ヨウ素剤は渡していたんですよね。それでもこういわれました。
『地域の人に怖がられたら困る。』
しがらみで身動きが取れない人。もう考えたくない、忘れたい人。心の中で何とかしたいけど言ったらどうなるのかわからないので言えない人。身の回りにはこういう人ばかりです。

運動会でこういうことがありました。父母の中で、屋外で昼食を地面に座って食べるのは危険だから屋内で食べさせてほしいと学校に要求して、結局希望者には場所が用意されて、食べられることに。しかし、実際には、その場所に食べに来たのは、学校中で2,3組みの親子しかいないんです。
要求した父母だけでも、もっと多くいたんですが、『ごめんなさい。そこに行くと、私だけでなくて、私の家族、一族が、生きていくことが本当に難しくなる。ここの地域で生きていけなくなる。』こんなふうに詫びてこられました。

反対者の方がいけない存在というような感覚。
まわりからの同調行為の要請が極めて強い感覚。
そして除染により、少しは安心している感覚。

計画的避難エリアともなっている、この自治体のある地区(1000人程度の人口)では、
原発事故後、50人程度の方が亡くなっていると聞いています。高齢者のみならず、白血病とか心筋梗塞などで40代から亡くなっている人もいます。
去年は3日も、4日もお葬式が続く状態だったと言います。
ここにも、目に見えない力が大きいんです。

震災のストレスとか、今年は暑いからとかで、お互いに流される。放射能を口に出せないんです。
とにかく何も根本的なことは見ないようにしているんです。」

こういう心理的なトラップから逃げられない人が本当に多数います。ここまで強固なトラップは、ある種の洗脳であると僕は本当に思います。

実は切り捨てているのです。圧倒的多数の人々を。

しかし、こうした危険は、福島の話だ、いやせいぜい柏や我孫子の話だと、枕をたかくして寝ている世田谷や横浜の人達も多くいると思います。「どこどこはねー、ひどい汚染だもんね」と、他人事と捉えて、自分のところは大丈夫だと思いたい、そんな心境の人ばかりのような気がします。

でも、これは時間差攻撃に他なりません。汚染度の差によって、時間差が生じているだけです。汚染地でのシビアな現実は変りません。認識が遅れると追いつめられるだけです。