せっかく池袋まで出るのなら、あれもこれも見てしまおうと思う私です。今回は東京国立博
物館(上野)で開催中の特別展「縄文―1万年の美の鼓動」を見てから岩波ホール(神保町)
に回り、映画「ゲッベルスと私」を鑑賞しようという魂胆でした。
東博の「縄文」展は、何と言っても、縄文の国宝6件がすべて勢揃いするということが目玉
でした。土偶5体と、火焔型土器です。期間限定の土偶があるため、2体は見られませんでし
た。「縄文のビーナス」は小学校の移動教室引率の折に、茅野市尖石縄文考古館でよく見てい
たので良いのですが、同じところに保管されている「仮面の女神」は拝観した記憶がないので
す。それとも既に見ていて、あとから国宝に指定されたものなのでしょうか。
いずれにしても、これだけの縄文芸術が一堂に会することは初めてとのことです。その質量
ともにびっくりさせられますよ。
そうそう、あの宇宙人みたいな遮光器土器はなぜか国宝ではないのです。不思議ですね。
■特別展「縄文―1万年の美の鼓動」 / 平成館 特別展示室 2018年7月3日(火) ~ 2018年9月2日(日)〔HPより〕
縄文時代が始まったとされる約1万3000年前。狩猟や漁撈(ぎょろう)、採集を行っていた縄文時代の人びとが、日々の暮らしのなかで工夫を重ねて作り出したさまざまな道具は、力強さと神秘的な魅力にあふれています。本展では「縄文の美」をテーマに、縄文時代草創期から晩期まで、日本列島の多様な地域で育まれた優品を一堂に集め、その形に込められた人びとの技や思いに迫ります。縄文時代1万年にわたる壮大な「美のうねり」をご体感ください。
●躍動感あふれる《火焰型土器》やユニークな姿形をした《遮光器土偶》は、縄文時代の造形美を象徴するものとして広く知られていますが、1万年続いた縄文時代には、まだまだ知られていない多彩な造形が数多くあります。
●「縄文の美」が集結
縄文時代は約1万年ものあいだ続き、東西3000㎞を越える日本列島に広く展開しました。
本展では縄文時代のスケール感をそのままに、その始まりから終わりまで、北は北海道から南は沖縄までを取り上げ、かつてない規模で「縄文の美」を紹介します。
時期や地域を飛び超えて縄文の美を総覧し、その移り変わりや広がり、そして奥深さを体感していただきます。
縄文人が生き抜くために生み出した簡素ながらも力強い形、森や海への感謝や命への敬いのなかで作りだされた神秘の形に圧倒されることでしょう。
昼食を済ませ、連れ合いと上野から神保町に向かいました。
ゆったりと見られる今回の岩波ホールでした。どちらかというと我々世代が多かったようですが、若い人もちらほらといったところでしょうか。
ナチスドイツの№2の宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として数年過ごしたブルンヒルデ・ポムゼルは103歳、30時間に及ぶインタビューに答え、彼女の視点から戦中のドイツを鮮やかに蘇らせます。苦悩の人生を物語る深く刻印された彫刻のような皺、ゆっくりとした語りの美しいドイツ語。十数回の渡独歴のある私にはそう映りました。ことばを選びながらの淡々とした独白と思いきや、時として言葉を詰まらせながらの語りの合間に当時の映像がふんだんに配置されていきます。
このインタビューで「証明」されたのはまさにハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」でした。ナチスドイツや戦前の軍国日本にしないために、いま私たちのしなければならないことは何か、深く考えさせられたのでした。
■岩波ホール「ゲッベルスと私」(HPより)あらすじ
終戦から69年の沈黙を破り、ゲッベルスの秘書が独白する。
若きポムゼルは、第二次世界大戦中、1942年から終戦までの3年間、ナチスの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として働き、近代における最も冷酷な戦争犯罪者のそばにいた人物である。本作は彼女が終戦から69年の沈黙を破って当時を語った貴重なドキュメントである。“ホロコーストについてはなにも知らなかった”と語るポムゼルの30時間に及ぶ独白インタビューは、20世紀最大の戦争と全体主義の下で抑圧された人々の人生を浮き彫りにする。
彼女のあらゆる表情と証言は、ナチスの時代を甦らせる。
いくつもの高精度カメラは、ポムゼルの深く刻まれた顔の皺や表情だけではなく、瞳の奥に宿す記憶をも鮮明にとらえる。幼少の頃の父親の思い出、初めて出来た恋人の話、ユダヤ人の友人の面影、そして“紳士”ゲッベルスについて、103歳とは思えぬ記憶力でカメラに語りかける。“いわれたことをタイプしていただけ”と語りながらも、時折、表情を強張らせて慎重に言葉を選ぶポムゼル。それは、ハンナ・アーレントにおける“悪の凡庸さ”をふたたび想起させる。
世界初公開のアーカイヴ映像が、戦争の真実を明るみにする。
本作品には、当時、世界各国で製作されたアーカイヴ映像が数多く挿入される。ナチスを滑稽に描くアメリカ軍製作のプロパガンダ映画、ヒトラーを揶揄する人々を捉えたポーランドの映像、ゲッベルスがムッソリーニとヴァカンスを楽しむプライベート映像、そして戦後、ナチスのモニュメントを破壊する人々やホロコーストの実態を記録した映像。それらは、戦争という人間の愚行はいつでも繰り返されることを語り、紛争の続く今日に警鐘を鳴らしている。