後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔615〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑥ 昨年のリベンジ、ついにヘッヒンゲンでビンゲン祭壇を見ました。

2023年10月19日 | 美術鑑賞
 昨年のドイツ旅行の最終盤、奇跡的に1日だけ自由行動が可能の日が生まれたのです。ならばフランクフルトからビンゲンに行こうと決めたのでした。ウルム博物館で入手したニクラウス・ヴェックマンの図録にビンゲン祭壇のことが書かれていたからです。
 ビンゲン祭壇はヴェックマンの彫刻とバルトロマイオス・ツァイトブロムの祭壇画で構成されていますが、彩色がしっかりしていて実に美しいのです。
 心躍らしてライン川近辺のビンゲンに降り立ったのですが、ここにはその祭壇は存在しませんでした。ホーエンツォレルン城近くのヘッヒンゲンにあるというのです。

  今年は再度チャレンジ、リベンジのビンゲン祭壇になりました。
 マリア被昇天教区教会は手入れの行き届いた、素晴らしく美しい教会でした。堂内には私たち2人の他には、車で同行してくれたクラウスとシルヴィアしかいませんでした。心ゆくまで祭壇を堪能し尽くしました。






〔614〕閑話休題、池袋のジュンク堂でマティアス・ヴェニガーさん共著の翻訳本『ゴシック』を発見しました。

2023年10月19日 | 図書案内
 ドイツから来日中のシルヴィアを池袋のジュンク堂に案内しました。彼女は英語と生物の教師、日本の動植物にも興味があるということで、関連本を探しに訪れたのです。   
 私もついでに9階の芸術書コーナーを覗いたとき『ゴシック』という翻訳本が目にとまりました。以前にもこの本を手に取ることはあったのですが、ぱらぱらと頁を捲って眺めただけでした。



 しかし、現在の私は後期ゴシックにぞっこんで、「13世紀から15世紀にかけてのヨーロッパ絵画」(巻頭概論)として誰が紹介されているか興味津々でした。マルティン・ショーンガウアーなど三十数名(裏表紙に記載あり)の中に、彫刻家でもあるミヒャエル・パッハーが取り上げられているのは嬉しかったです。
 さて、著者は誰かと見てみると、なんとそこにマティアス・ヴェニガーさんの名前があるではありませんか。このブログ常連の、ミュンヘンのバイエルン国立博物館の学芸員のヴェニガーさんです。実は今年もドイツでお目にかかっている方です。ドイツではリーメンシュナイダーの単著も出版されていますが、まさか翻訳本が出ているとはおっしゃらなかったのです。敬意を表し早速購入したのは言うまでもありません。
 早速手にしたのですが、かなり専門的で難しいところがあります。しかしながら、発見したことも多々ありました。なんと巻頭の20頁になる概論を執筆したのはヴェニガーさんでした。しかも全体の半分以上は彼の執筆なのです。彼の研究領域はかなり広大であるようです。 
 *ロベルト・ズッカーレ、マティアス・ヴェニガー、マンフレット・ヴイントラム共著、インゴ・F・ヴァルター編集、タッシェン・ジャパン、96頁、2007年

〔613〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑤ ラーマーズドルフでグラッサーの磔刑祭壇を見る。

2023年10月19日 | 美術鑑賞
 8月13日(日)、ミュンヘン滞在の最終日、地下鉄で30分ほどのラーマーズドルフという街を目差しました。ここの聖マリア教会にある磔刑祭壇はエラスムス・グラッサーと工房の作品です。バイエルン国立博物館のヴェニガー博士からいただいたグラッサーの図録(ブログ既掲載)に掲載されていて、機会があれば是非拝観したいと願っていたものです。
 いつものことながら、お目当ての場所に首尾良く到着できるまでが難関です。難儀して「対面」できたときの感動は言い表すことができません。ミサのために集まっていたのでしょう、身なりを整えた老若男女に邪魔にならないように撮った写真がこれです。





 このあと、もう何回目になるのでしょうか、バイエルン国立博物館を訪れました。何回行っても発見があるものです。2人で舐めるように写真を撮りまくりました。

 ミュンヘンの後、ローテンブルク2泊、ヴュルツブルク2泊、フランクフルト1泊と続きます。子どもと孫たちはノイシュバンシュタイン城への日本語ツアーと、ミュンヘンから足を伸ばしてレゴランドを満喫しました。レゴランドで遊び倒し、ミュンヘンのラーツケラーで食べ尽くし満足の体でした。ローテンブルクとヴュルツブルクでは、リーメンシュナイダーの最高傑作についてお婆ちゃんの緑から話をしっかり聞いていました。
 2組のドイツの友人にも対面しました。
 金婚記念の子ども・孫孝行はこれでほぼ終了です。

〔612〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く④ 「アルトエッティングの扉のマイスター」の扉をガン見する。

2023年10月10日 | 美術鑑賞
 ライプツィヒ滞在の最終日、ドレスデン国立美術館を訪ねました。ここは2020年11月17日に世界を揺るがす大盗難があったところです。巨額の金銀財宝が盗まれたため、入場の際は厳戒態勢が敷かれていました。
 お目当てのペーター・デルの3枚のレリーフはまたもや見つからず、会場からの美しい町並みだけ撮影したのでご覧ください。





  8月10日(木)、私たちはドイツの臍といわれるアイゼナハに1泊しました。ここにお住まいの友人のエルケさんを訪ねました。お連れ合いのウヴェさんを亡くされたので、昨年に引き続いてお墓参りをしました。今年はミュンヘン在住のお嬢さんがいらっしゃいました。
 世界遺産のヴァルトブルク城でお仕事をしていたのがエルケさんです。お城が見渡せる丘の上で旧交を温めました。



 アイゼナハの次のミュンヘンで息子家族4人と合流しました。ここで3泊することになります。彼らがノイシュバンシュタイン城のツアーに行っている間、私たちはアルトエッティングに向かいました。
 アルトエッティングは日本のガイドブックにはほとんど出てこない町です。ミュンヘンの東約80㎞のところに位置する、昔からの宗教都市です。ドイツの彫刻関係の文献にたびたび登場した地名でした。「アルトエッティングの扉のマイスター」という表記も多く見受けられました。
 ミュンヘンから1時間40分ほどでアルトエッティングに着きました。教会が多いので目差す聖フィリップ・ヤコブカトリック教会がどれなのか判然としませんでしたが、人が多く集まる2つの教会のどちらかがそれでないかと狙いを定めました。
 ありました、ありました。素晴らしく彫りの深い扉のある教会がありました。暗いため撮影が困難な扉でしたが、2人夢中で撮影しました。




〔611〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く③ 世界遺産、ナウムブルク大聖堂で美しいウタ夫妻の彫刻に対面しました。

2023年10月09日 | 美術鑑賞
 リューベックから向かったのは3回目の訪問のデュッセルドルフでした。じっくり市内を巡るのは初めてでした。ここに1泊して次はライプツィヒに3泊です。
 デュッセルドルフでは美術博物館に所蔵されているオットーボイレンのマイスターによるクリストフォロスが目当てでした。イギリスの美術史家バクサンドールの本に掲載されていた像でした。写真で見る限り秀作と思われました。しかし、ようやく探し当てた博物館は閉館中でした。ぐったりした私たちを癒やしてくれたのは美味しいラーメンでした。デュッセルドルフは日本人が多く住んでいるところで、日本料理店が数多くあります。たまたま入ったラーメン店が大当たりでした。


*デュッセルドルフの街中を歩く

*街中のオブジェ

 ライプツィヒから足を伸ばしたのが、こちらは初訪問のナウムブルクでした。ナウムブルク大聖堂は2018年に世界遺産に指定されたところです。ここに、ナウムブルクのマイスターによる「ウタとエッケハルト夫妻」と「レグリンディスとヘルマン夫妻」の像は見事で、『地球の歩き方 ドイツ』にも掲載されています。


*ナウムブルク大聖堂

*ナウムブルク大聖堂の入場券

 そもそもここを訪ねるきっかけは、清瀬在住の詩(うた)さんが、以前に自分と同じ名前のウタ像を訪ねたことがあったと教えてくれたのでした。かつてご夫婦でドイツに住んでいて、一人でこの像を訪ねたというのです。
 大聖堂は12世紀に建造され、ウタ像は13世紀の作品ということで、いずれもロマネスク期のものになるようです。今回の旅はフランスロマネスクの傑作を数多く拝観する予定なので、格好の「予行演習」になりました。



*「ウタとエッケハルト夫妻」の像

*「レグリンディスとヘルマン夫妻」の像

〔610〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く②  まずは、「ハンス・ブリュッゲマンの旅」からスタートです。

2023年10月08日 | 美術鑑賞
 7月31日(月)、2人はフランクフルトに向かうJALの機上にいました。緑は18回目のドイツ旅行、私は16回目でした。
 昨年の2月にロシアがウクライナを侵略し始めてから、ロシア上空を通らない飛行ルートに変更されています。行きは北極海上空へ迂回するため、以前より2時間ぐらい飛行時間が増して、15時間くらいになっています。ちなみに帰りはロシアの南を通るルートで13時間ぐらいでしょうか。戦闘が続けられている黒海なども通って13時間、なんとも不気味な、実に複雑な感情がわき起こってきました。
 フランクフルト空港に無事到着し、珍しくここで1泊しました。
 今回の長旅は、「ハンス・ブリュッゲマンの旅」からスタートです。
 ハンス・ブリュッゲマンについてはブログ〔517〕に詳述しました。昨年の旅で初めてブリュッゲマンに出合いました。ロストックに住む友人のヨーラとヘルヴィックに車で大祭壇のあるシュレスヴィッヒに案内してもらいました。その時に手に入れたブリュッゲマンの図録が今回の旅の手引き書になっています。

 「ハンス・ブリュッゲマンの旅」は、まずフランクフルトから初めての陸路でデンマークのコペンハーゲンに入りました。コペンハーゲンに2泊、ドイツのシュレスヴィッヒ近くのタープに2泊、リューベック1泊までがそれになりました。




*コペンハーゲン駅


*チボリ公園

 コペンハーゲンのデンマーク国立博物館では雄大なブリュッゲマンのゲオルク像に出合うことができました。一部屋に頭上高く展示されているのですが、あまりに巨大すぎて、どうしてもその全体像を写しきれないのです。まさに勇敢に戦うゲオルクと竜の迫力は凄まじいものがあります。ボーデ博物館にあるリーメンシュナイダーの穏やかなゲオルク像と対比すると実に興味深いものがあります。昨年も訪れた、シュレスヴィッヒ大聖堂のブリュッゲマンの大祭壇〔ボルデスホルマー祭壇〕や巨大なクリストフォロスとキリスト像と相通じるリアルで迫力ある造形です。




*シュレスヴィッヒ大聖堂

 リューベックの聖アネン博物館に伝ブリュッゲマンの「跪く使徒像」を目差したのは大正解でした。著名な作家の彫刻があるわけではないのですが、リューベックを中心とした地域の彫刻家の作品が多数所蔵されているのです。バイエルン国立博物館のヴェニガー博士はかつてここで仕事をしていたことがあったと後日聞いてびっくりしました。ここで出している図録『聖アネン博物館の祭壇』を購入してホテルのベットの上で穴が空くほど眺めたのでした。





*カタリーネン教会、エルンスト・バルラハの作品、外壁上部に設置されている。

*カタリーネン教会、ゲオルク像

 あっ、シュレスヴィッヒのホテルが満室で予約できなくて、電車で十数分のタープに居を構えたのは大正解でした。とても静かな美しい街で、ホテルの人も親切でした。お手頃価格で広く綺麗な室内でした。

〔609〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く① まえがき

2023年10月07日 | 美術鑑賞
 今年2023年、この猛暑の夏に、今までで最長50日間のヨーロッパ旅行を決行しました。このブログ連載ですでに報告済みの、昨夏の「後期ゴシック彫刻を歩く」旅を3日上回る長さでした。我々の結婚50周年、金婚記念ということで、この旅行の途中に子どもや孫たちを招待する一世一代の大旅行になってしまいました。

  訪れた国は、ドイツを中心にフランス、イギリス、デンマーク、オーストリア、イタリア、スイスの7カ国になります。ユーレイルパスをフル活用しての旅です。イギリス、デンマーク、スイスはユーロが使えないので難儀することになりました。


*ドイツ鉄道の車窓から

 旅の最大の目的は、まだ見ぬドイツ後期ゴシック彫刻 を追いかけることです。リーメンシュナイダー作品をほぼ訪ね終え、さらにシュトースなど同時代の作家の作品もかなり訪ね歩きましたが、まだまだ気になる作品が存在するのです。そして旅を続けるうちに、どうせならロマネスク彫刻も見てみようということになり、今年はフランスロマネスクの傑作を目差すことになったのです。
 緑の計算によると、訪れた教会は40箇所、美術館・博物館は36箇所です。

 記憶が薄れないうちに「 ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く」ブログを開始しましょう。どうぞお付き合いくださいませ。