7月31日 愛宕神社 通夜祭
京都には、千日詣でという便利な日がある。その日にお参りすれば千日参ったのと同じご利益があると言うのだ。誠に都合の良い話だが、この日愛宕山には大勢の老若男女が登山する。
筆者は一度だけ昼間登った事があるが、ハイキング気分では相当後悔する。最後の石段が残りのエネルギーを完全に奪う。京都の西北、愛宕念仏寺の横の隧道をくぐり清滝口から登るのが表参道だ。
標高は924mなので、828mの比叡山よりも高い山なのだ。古くから「火伏の神」で有名だった為、「お伊勢七たび、熊野にゃ三度。愛宕参りは月参り。」と、度々登る信仰の山だった。従って、大正時代から戦前まで何と山上に遊園地があった。嵐山から鉄道もあり、ケーブルカーもあった。それほどの山だが、六甲山や比叡産のように大きな観光地にならず、今はこの「通夜祭」を中心に賑わう。
上方落語のネタにも「愛宕山」という話があり、大阪北新地で飲んだ旦那衆が愛宕山に繰り出すという場面が出て来る。また京都の人は、子供が出来ると3歳までにお参りするとその子は一生火難に合わないとも言われている。その様に庶民に根付いた信仰のお山だった。
さて、7月31日夕刻から登る通夜祭では、参道には山上まで裸電球に照らされ安心して登れるようになっている。そして京都らしいのは、登る人には、「おのぼりやす」降る人には、「おくだりやす」と互いに声をかける。その事でしんどくても元気が出るのである。
もう一つ、明智光秀は本能寺の変の直前、ここに参篭して籤を引いている。3度「凶」を引いたが謀反の決意をしたと言う。その後の歌会で詠んだ光秀の歌。「時は今 雨がしたしる 五月哉」光秀の本家土岐氏再興の思いを、「時(とき)」に掛けた決意の歌と言われている。再来年の大河ドラマは、「明智光秀」だ。今から楽しみだ。