エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

春の小川

2015年04月15日 | ポエム
春の小川が、サラサラと流れるのは本当だ。
とりわけ日本人は、季節を心の目や肌温度で感じるからそうなる。



啓蟄とはまた別に、生き物が蠢く。
それが体内にエネルギーを注ぎ込むのだ。







「ネコヤナギ川の行く手を遮りて」









「春の小川」~文部省唱歌メドレー「ふるさとの四季」より (根城中学校合唱部)




命を謳歌するとは、この事である。
この歌は、清純な女生徒の歌声が良く似合う。
そう、プラトニックな愛を信じて疑わなかった青春の日々に還るからである。



小川は流れていながら、鏡のように森羅万象を映しこむのである。
因に、川面に映る樹の影は「柳」である。
それがまた、シャープであって一分の隙も無い。

日本人の想像の中で、生き続ける美学である。



       荒 野人

食べる春

2015年04月14日 | ポエム
春を食べるのである。
風光る今でないと、食べられない。

何と云っても、嚆矢は「たけのこご飯」である。



筍だけでなく、鳥肉やら蒟蒻やら色々と焚き込んで頂いた。
ピュアな筍の味ではないけれど、これも美味い。

「柿の葉」「ユキノシタ」「ウコギ」の葉を夫々天ぷらにして頂いた。



左が「ウコギ」真中が「柿の葉」そして左側が「ユキノシタ」である。
丁度食べ頃であった。



この柿の葉。



このユキノシタ。



このウコギの葉である。



これだけでは寂しいので「マイタケ」も揚げた。



さらに「エノキ」も揚げてしまった。
春爛漫である。



天つゆは、ぼくの特製。
下に沈殿しているのは「麹」の粒々である。
これが旨味である。

さて、ぼくの知り合いに「タケノコご飯」が大好きな人がいる。
聞くと、今年はまだ食べていないとの事。
早く食べて欲しいものである。







「春筍の命いただくご飯かな」







唐突だけれど、その友人はコケ類が好きである。
とりわけ、今頃のコケは青々としている。
生命力に充ち溢れているのである。

タケノコご飯は、旬の味。
柿の葉もユキソシタも、更にウコギの若葉も同様である。

ウコギはお浸しでも食べられるけれど、やはり独特の香味がある。
天ぷらにすると、その味だけが際立ってくれるのだ。

正しく、春の命を体内に取り込む所業である。




       荒 野人

おきな草

2015年04月13日 | ポエム
おきな草(おきなぐさ)と読む。
「おきなそう」では無い。

誠に不思議な花である。
春に花開く。



白く長い綿毛がある果実の集まった姿を老人の頭にたとえ、翁草(オキナグサ)というのである。
ネコグサという異称もあるのだけれど、やはり綿毛が産毛に見えるからネコなのであろう。

おきな草でネット・サーフィンしていたら、島津亜矢の歌う「おきな草」があった。
彼女の歌は、最近の歌手の中では一つ抜けている。
男歌でも女歌でも、あるいはまた唸りも上手い。
演歌の歌手は総じて上手いけれど、彼女は格段に上手いのである。



島津亜矢 おきな草




聴いていて、感じた事・・・。
花の生涯を物語にしている。
そこが良い。



花の形から言って、歌にはなりそうも無いのに・・・である。
そもそも論で云うと、おきな草は母の思い出とは重ならない。

しかし、悪くは無い。







「色深む花の終わりの翁草」







全草にプロトアネモニン・ラナンクリンなどを含む有毒植物である。
植物体から分泌される汁液に触れれば皮膚炎を引き起こすこともあり、誤食して中毒すれば腹痛・嘔吐・血便のほか痙攣・心停止(プロトアネモニンは心臓毒)に至る可能性もある。

漢方においては根を乾燥させたものが白頭翁と呼ばれ、下痢・閉経などに用いられるのだ。



しかしながら山野にあって、得意な花であるし目立つ。
だからだろうか、絶滅危惧種である。
目立ってはならないのだ。



花の後、長いひげが残る。
この髭は、やがて綿毛となって種の保存に躍起となるのである。
けれども風の唸りを捉えるのは、上手い。



花言葉は・・・。
「何も求めない」「背信の愛」「告げられぬ恋」「清純な心」「華麗」である。

背信の愛・・・うん、そうだろうと思う。
花のオマージュは、背信の愛であるかもしれない。



      荒 野人

からたちの花

2015年04月12日 | ポエム
からたちの花が咲いた。
まだ蕾が多いけれど、ウキウキとする気分がどこかにあるのだ。

白い花だ。



棘をものともせず、咲こうとする。
その姿勢を良しとしたい。







「棘多きからたちの花まだ硬く」







森真季の、透明な歌声で聴きたい。
少しねばった印象のある声であるけれど、聴きこむと澄んでくる。
不思議な声である。

彼女の歌声は、この歌が似合う。
あと、NHKの坂の上の雲のテーマ曲だ。



からたちの花(Maki Mori)






枳殻の花言葉は・・・。
「思い出」「温情」「泰平」である。
因に、からたちの木は「悠揚とした」。
花は「貞節」「相思相愛」である。

まろいまろい金の玉、あの暖かな産毛でくるまれた金の玉が懐かしい。
秋、落合川の秘密の場所に実る。

そして、熟すのだろうか零れ落ちる。
それを拾う。
手の平で転がす。

産毛が優しいのだ。



      荒 野人

勿忘草・・・わすれなぐさ

2015年04月11日 | ポエム
忘れな草。
なんという美しくも、悲しいオマージュだろうか。



悲しい物語があってその物語が花の名前になっている。



ぼくは、この歌が大好きである。
去年のこの季節、同じように書いた記憶がある。



Non Ti Scordar Di Me - Andrea Bocelli & Domingo










「屈み見る勿忘草の濃き化粧」







昔、騎士ルドルフは、ドナウ川の岸辺に咲くこの花を恋人ベルタのために摘もうと岸を降りたが、誤って川の流れに飲まれてしまう。
ルドルフは最後の力を尽くして花を岸に投げ、„Vergiss-mein-nicht!“(僕を忘れないで)という言葉を残して死んだ。
残されたベルタはルドルフの墓にその花を供え、彼の最期の言葉を花の名にした。



Pavarotti - Non ti Scordar di me (Central Park Concert)




このような伝説から、この花の名前は当地ドイツで Vergissmeinnicht と呼ばれ、英名もその直訳の forget-me-not である。



花言葉は・・・。
「真実の愛」「私を忘れないで」だ。

最初の動画はドミンゴとボッチェリ。
二つ目は、パヴァロッテイである。

とりわけ、ドミンゴとボッチェリを聴いたとき滂沱(ぼうだ)として流れる涙を知った。
パヴァロッテイの歌声には、恍惚を体感するのである。



    荒 野人