文学2010 (文学選集) | |
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講談社 |
長嶋有 著 : 戒名
を、読みました。
主人公“私”は時々祖母と祖父の家に出かけます。
彼らは寝たきり老人で、30を過ぎた弟が介護しています。
祖母は、まだ存命というのに早々と墓を購入したうえに、
戒名を自分で勝手に考え、墓石に刻んでいるのですが、
その文字数が足りないから、マズイらしいと、弟は何度もつぶやきます。
そんな、何の盛り上がりもない、物語。
しかし、とても短い物語の中に、
老いてもなお、ボケてもなお、人であり続ける、生き続ける老人や、
それを介護している、引きこもりの青年や、
その両方との距離感を、見つけ出せずにいる主人公などの、
細かな心の動きを、描いていた、作品でした。
生きて死ぬということが、言うほど簡単ではない
ことを、改めてそっと見せてくれるような作品です。