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一瞬の光 |
白石 一文 | |
角川書店 |
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白石一文 著 : 一瞬の光
を、読みました。
超一流企業のエリートサラリーマン橋田浩介は、
38歳という若さで、前例のない人事課長に就任した。
東大を出て、就職したこの財閥系企業のほかに、
日銀にも幹部候補として、内定をもらったほどの浩介は、
対立する派閥に属している、部長から
4年制大学採用の審査メンバーから外され、
短大卒の面接をする羽目になるが、そこで中平香折を面接し、
その晩、部下と立ち寄ったバーで、シェイカーを振る香折と再会する。
その日を境に、ほんの少しずつ、しかし決定的に変わってしまう、
浩介の人生。時の流れのかなで、生きている私たち。
しかし、その時の流れは太い一本の線ではなく、
ほんの細かな点のような、一瞬のつながりかもしれない。
エリートサラリーマンでイケメンという、小説ならではの設定で、
これまた白石小説にお約束の、絶世の美女が恋人。
お金はたっぷりあって、飲み食いなんかは
月に30~40万くらいは経費で処理できちゃう!
英語もフランス語も話せる、クールで完璧男が主人公。
「すげ~~~~っ!!そんな人がこの世に存在するんだね~!」
事実は小説より奇なり、だから小説のような人は案外
すんなりと存在しているはず!私はそう思って読んでいるので
こんな主人公の背景に、大きく反応してしまいます(笑)
そんな完璧な彼も、生い立ちは決して明るくなく、
たまたま知り合った、短大生の中平香折は、
家庭内で、おぞましいほどの虐待受けて成長していて、
その影響は、傍目に見ても恐怖を感じるほど。
浩介華々しさと、香折の持つ悲壮感が
前半部分コントラストを生み出していましたが、
物語は次第に、“生きること” “愛すること” について
深くなって行きます。
この作品がデビュー作ということですが、
1ページに2段組みで、383ページという超大作。
人が生きるということに向き合っている、
作者らしい作品だと思いました。