Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

米国のオハイオ州等の包括保護法の立法動向から見た法規制の在り方、法遵守や消費者保護の観点から見た容易性、理解のしやすさ等につきGDPRとの比較結果(その2完)

2021-08-02 16:16:04 | 個人情報保護法制

(ⅵ)データ主体のアクセス権

・Access Requests.

・45 days to respond.45日以内の

・No charge for information.費用負担なしの情報提供

・Justification for failure to act管理者がアクセス要求を拒否する時の説明義務

・Denial of requests 管理者のアクセス拒否権

・Right to appeal.

・Minors.データ主体が未成年者(13歳~16歳)の場合の親権者の同意

・Data Protection Assessments.以下の場合の調査義務

 以下のとおり、コロラド州が詳しい

 1. Targeted advertising where profiling presents a risk of

  a.Unfair or deceptive treatment of, or unlawful or disparate impact on

    consumers.

  1. Financial or physical injury to consumers.
  2. An intrusion upon a consumer’s solitude or seclusion, or the

private affairs or concerns of the consumer if such an intrusion would

be offensive to a reasonable person.

  1. Other substantial injury to consumers.
  2. Selling personal data.
  3. Processing sensitive data.

(ⅶ)法施行権者および制裁金額

・Attorney General Investigative and Enforcement Authority 司法長官等

 のみに法執行権を与える。

 カリフォルニア州(CCPA/CPRA)のみ私権行使権Private Right of Action.を定める。

3.プライバシー保護立法の在り方(私見)

  前述した米国の各州の適用例外規定に対し、GDPRは第9条(特別な種類の個人データの取扱い )で極めて限定した定めをおいている。

  しかし、これだけを見て米国の立法は不十分とはいえない。たとえば、具体的にGLBAやSafeguard Ruleの運用をめぐる連邦取引委員会(FTC)の最近時の取組みやEU加盟国のDPAの制裁の動向を以下で見ておく。

(1)FTCの”Vemo”GLBAおよびセーフガード規則違反の制裁告訴と和解

A.2018年2月27日FTC発表「FTCは、VenmoによるGLBAのプライバシーおよびセーフガード規則違反の申し立てに対する和解を発表 」

  連邦取引委員会(「FTC」)は、PayPal.Incが提供するVenmoピアツーピア決済サービスがプライバシーと消費者の金融口座の範囲に関して消費者を惑わしたという告発につき、同社と合意し、同時にその金融口座の安全性が確保された旨発表した。

 これは、これらの問題に対処した2017年12月20日TaxSlayer,LLCに対するFTCの措置に続く過去3か月で2番目の重要なFTCの和解であり、グラム・リーチ・ブライリー法のプライバシーおよびセーフガードルール違反に対するFTCの新たな焦点を示している。

  今回のFTCの告訴は、Venmoが3つの別々の方法でプライバシー・ルールに違反したと主張した。まず、第一にVenmoは、「通知の性質と性質の重要性に注意を喚起しなかった」という明確で目立つプライバシー通知を提供していなかった。むしろ、Venmoのモバイル・アプリケーション(「Venmoアプリ」)のプライバシーに関する通知は、Venmoユーザーには目立たない明るい灰色の背景に灰色のテキストで表示されていた。

 第二に、VenmoはVenmoがユーザーの個人情報を共有する方法を説明する正確な通知を提供していなかった。 Venmoのプライバシー通知には、ユーザーがアカウント・トランザクションを「公開」として指定した場合にのみ、ユーザーの個人情報をVenmoの「ソーシャル・ウェブ」のメンバーと共有すると記載されていた。しかし、Venmoは初期設定で、Venmoアカウントを持っていない個人を含むオンラインのすべての人とこの情報を共有していた。

 最後に、Venmoは、各顧客がそれを受け取ることが合理的に期待できる方法で最初のプライバシー通知を配信しなかった。プライバシー通知はVenmoアプリにハイパーリンクとして含まれていたが、ユーザーは「金融商品またはサービスを取得するために必要なステップとして」その受領を確認する必要はなかった、という内容であった。

B.和解内容

 FTCリリースから抜粋する。

 FTCとの和解の一環として、Venmoは、サービスの使用に関する重要な制限、プライバシー設定によって提供される制御の範囲およびVenmoが特定のレベルのセキュリティを実装または遵守する範囲を不実表示することが禁じらた。

 またVenmoは、その取引およびプライバシー慣行について消費者に特定の開示を行うことを義務付けられており、GLBAのプライバシー規則およびセーフガード規則に違反することが禁じられた。 GLBA規則の違反を含む過去の事例と同様、Venmoは、これらの規則への準拠について、隔年で第三者による評価を10年間受ける必要があるとされた。 

(2)GAFAに対する制裁方法の有効性

 他方、米国の場合、GAFAに対する規制や制裁は可能か。EU加盟国のDPAによる民亊制裁は筆者のブログ(その1) (その2完)で取り上げたとおり、フランスのデータ保護当局CNIL(情報処理と自由に関する国家委員会)が2019年1月21日、Google(グーグル)に対して、GDPR(EU一般データ保護規則)違反を理由に5,000万ユーロ(約62億円)の制裁金の支払いを命じた。GDPR違反による巨額制裁金が米大手企業に課された、初めてのケースである。

 では、米国のGAFAに対する規制はどちらかというと反競争法の適用が優先しているように思える。以下のレポートなどを参照されたい。この傾向はEU加盟国でも同様である。

「欧米のデジタルプラットフォーム規制の現状(後編)米国(アメリカ)」

「ビッグテックは持続するには大きすぎるか? 米国とヨーロッパで進行中の反トラスト事件のリストを概観 」

4.全米各州の立法のトラッキングサイト”LegiScan”の無料利用者登録の手順と実際の使い方

”LegiScan”はiappもハイパーリンクでリンクさせている。HP画面を見ておく。

左下で州を選択、法案番号HB 376→376を入力する。

以下の画面が出る。(https://legiscan.com/OH/bill/HB376/2021)

************************************************************

(注7-2)イリノイ州は包括保護法ではないが家庭内に限った保護法を可決し、知事の署名により成立した。対象が極めて限定された保護法であり、包括保護法の範疇外であるが参考までにあげる。

Fox Rothchild LLP記事仮訳する。「2021年8月27日、イリノイ州知事JBプリツカーは、家庭プライバシー保護法に署名した。2022年1月1日に施行される。

下院法案2553  は、イリノイ州の法執行機関が家庭の電子データを取得したり、民間の第三者から家庭用電子データを取得することを原則禁止する。

これには、パーソナル コンピュータ デバイス (パーソナル コンピュータ、携帯電話、スマートフォン、タブレットなど) およびデジタル ゲートウェイ デバイス (モデム、ルーター、ワイヤレス アクセス ポイント、ケーブル セットトップ ボックスなど)を除く、電子通信を促進できる家庭内で主に使用できるデバイスに対してユーザーが提供する情報または入力デバイスが含まれる。

 令状が取得された場合、または家庭用電子機器の所有者または実際または建設的な所持人が同意を与える場合、特定の緊急事態を含む、この禁止には例外があう。

 法執行機関が例外なくそのような情報を取得した場合、取得した情報を開示することはできない。しかし、例外があります。すなわちその機関の監督者は、他の政府機関、政府機関の従業員、またはいくつかの条件を持つ重要な証人に特定の情報を開示することができる。

 この法案に基づく法執行機関からの要請に応じて家庭の電子データを提供する個人または団体は、あらゆる法執行機関への送信中に、家庭の電子データの機密性、完全性、およびセキュリティを確保するために合理的な措置を講じるものとする。また、家庭の電子データの作成は、法執行機関の要請に応じて応答する情報に制限するものとする。

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1.100%原データに基づく翻訳と内容に即した権威にこだわらない正確な訳語づくり

2.本ブログで取り下げてきたテーマ、内容はすべて電子書籍も含め公表時から即内容の陳腐化が始まるものである。筆者は本ブログの閲覧されるテーマを毎日フォローしているが、10年以上前のブログの閲覧も毎日発生している。

このため、その内容のチェックを含め完全なリンクのチェック、確保に努めてきた。

3.上記2.のメンテナンス作業につき従来から約4人態勢で当たってきた。すなわち、海外の主要メディア、主要大学(ロースクールを含む)および関係機関、シンクタンク、主要国の国家機関(連邦、州など)、EU機関や加盟国の国家機関、情報保護監督機関、消費者保護機関、大手ローファーム、サイバーセキュリテイ機関、人権擁護団体等を毎日仕分け後、翻訳分担などを行い、最終的にアップ時に責任者が最終チェックする作業過程を毎日行ってきた。

 このような経験を踏まえデータの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。

 なお、海外のメディアを読まれている読者は気がつかれていると思うが、特に米国メディアは大多数が有料読者以外に情報を出さず、それに依存するわが国メデイアの情報の内容の薄さが気になる。

 本ブログは、上記のように公的機関等から直接受信による取材解析・補足作業リンク・翻訳作業ブログの公開(著作権問題もクリアー)が行える「わが国の唯一の海外情報専門ブログ」を目指す。

4.他にない本ブログの特性:すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を踏まえ掲載の採否などを行ってきた。また法令などの引用にあたっては必ずリンクを張るなど精度の高い正確な内容の確保に努めた。

その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

他方、原データの文法ミス、ミススペリングなどを指摘して感謝されることも多々あった。

5.内外の読者数、閲覧画面数の急増に伴うブログ数の拡大を図りたい。特に寄付いただいた方で希望される方があれば今後公開する筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中である。

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                                                                                                                       Civilian Watchdog in Japan 代表

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米国のオハイオ州等の包括保護法の立法動向から見た法規制の在り方、法遵守や消費者保護の観点から見た容易性、理解のしやすさ等につきGDPRとの比較結果(その1)

2021-08-02 15:23:49 | 個人情報保護法制

 Last Updated:September 2,2021

 筆者は,これまでカリフォルニア州やバージニア州の情報保護法の立法動向をフォローしてきたが、この問題についてはわが国でも多くのレポートがあることは言うまでもない。(注1)

 他方、わが国では全州の立法の取組動向となると一転して正確、最新かつ詳細な情報は皆無である。そのような中で最近オハイオ州の法案が上程されたというニュースが手に入った。 

 今回のブログは、まず(1)7月12日に上程されたオハイオ州の法案(H.B.376)の内容をひととおり解析し、(2)各州の立法動向を調査している”International Association of Privacy Professionals(iapp)”の”US State Privacy Legislation Tracker Bills introduced 2021”および”National Conference of State Legislatures(NSCL)”にもとづき法案内容を比較しながら、各州がいかに適格な立法を目指しているかを読んでみたい。

 なお、H.B.376の原文を読んでみると極めて難解である。(注2)一方、UniLaw 企業法務研究所​代表 浅井敏雄氏がカリフォルニア州”California Consumer Privacy Act of 2018:CCPA”および"California Privacy Rights Act of 2020 ::CCRA"を私訳されている。補足説明を加えながらの解説であり貴重な文献である。

 同時に法律の構成、内容、理解度、わかりやすさから見て、EUの「一般データ保護規則(GDPR) 」と比較されたい。従来のような米国のような個別・分野別立法に頼るだけでなく、モデル法としての連邦包括保護法の議論も中断したままである。

 国民や事業者の保護法遵守の徹底を図るうえでこの点は見逃せない点であると思うし、今後でてくるであろう新たな州保護法案がどこまで大幅な見直しの上に出てくるかを期待したい。最後に、筆者なりにEUのGDPRを受けた加盟国のDPAの取組と米国のGLBAや規則の運用を含めた比較を行った。 

 また、参考までに、これらに関連し、iappやNSCLのレポートを調べるうえで重要となる全米各州の立法のトラッキングサイト”LegiScan”の無料利用者登録の手順と実際の使い方の解説を試みるものである。

  言うまでもないが、今回の立法動向を正確に理解するうえで州議会の立法用語集の使い方にも言及した。この点は比較法ゼミの内容に該当するものであるが、折角の機会なので丁寧に説明することとした。

  2回に分けて掲載する。

 1.オハイオ州OPPA(H.B.376)の概要

 JD Supra, LLCレポート「Privacy Bill Essentials: Ohio Personal Privacy Act」を抜粋、仮訳する。

  オハイオ州では新しいデータ保護およびプライバシー法案(H.B. 376)が最近で上程された。オハイオ個人プライバシー法(Enact Ohio Personal Privacy Act:OPPA)は、カリフォルニア州、バージニア州、コロラド州での最近の立法に似ているが、3つ法律のうち、この法案はバージニア「消費者データ保護法(Consumer Data Protection Act )」に最もよく似ている。制定された場合、OPPAは州民のデータ保護権利をあらたに確立し、オハイオ州の消費者の個人データを収集する州内外の企業に複数の具体的義務を課すことになる。

(1)誰に適用されるのか?

  OPPAは、オハイオ州で事業を行う企業、または州内の消費者を対象とする企業に適用され、次のいずれかに適用される。

①州で2,500万ドル(約27億5,000万円)を超える年間総収入がある企業。

②暦年中に100,000人以上の消費者の個人データを管理または処理する企業。

または、

③ 総収入の50%以上を個人データの販売から得て、暦年中に25,000人以上のオハイオ州の消費者の個人データを処理または管理する企業。

 一方、OPPAは以下には適用されない。

①全米連邦等の公的機関または州の下部機関。(注3)

②グラム・リーチ・ブライリー法のタイトルVに準拠する金融機関または金融機関の関連会社。

③高等教育機関。

④企業間取引(いわゆるBtoB)。

⑤オハイオ州改正法令集(Ohio Revised Code)(注4)の第3905.49節で定義されている保険会社または独立した保険代理店。

⑥保険関連の犯罪または詐欺を検出または防止するために設立された非営利団体。

⑦オハイオ州改正法令集(Ohio Revised Code)の第3937.09節および第3937.05節に記載されている諮問機関または格付け機関。

(2)どのような種類の情報をカバーするか?

 OPPAは、個人または世帯の関連でオハイオ州に居住する消費者の「個人データ」を保護する。従業員、請負業者、求職者、役員、取締役、および事業主は、事業または雇用の立場で行動する場合は消費者とは見なされない。

 個人データとは、「営利目的で企業が処理する特定または特定可能な消費者に関連する情報」と定義されている。この定義は、公的に利用可能なソースから処理されたデータ、および「仮名化(pseudonymize))、匿名化(anonymize )、または集約されたデータ」を除く。

(3)それは消費者にどのような権利を生み出すか?

 OPPAは、次の権利を含むさまざまな消費者の権利を新たに作り出す。

 ① 消費者に関して収集されている個人データを把握する。

 ②消費者に収集された消費者の個人データへのアクセス権を与える。

 ③個人データの削除を要求する権利を与える。

 ④消費者の個人データの販売を拒否またはオプトアウトする権利を与える。

(4)それは事業者にどのような義務を課すか?

 OPPAは、対象となる事業者に対して、合理的にアクセス可能で、明確で、かつ目立つ方法で、以下を含むプライバシー・ポリシーを表示することを要求する。

① プライバシーおよびデータセキュリティに関する問い合わせのための事業者の連絡先を含む、事業者のIDおよび連絡先情報、および事業者が個人データを転送する可能性のある関連会社のID。

②ビジネス・プロセスにおける個人データのカテゴリー。

③個人データの各カテゴリの処理の目的。

④個人データを収集または販売する目的。

⑤個人データが収集されるソースのカテゴリー。

⑥事業者が個人データを開示する処理者のカテゴリー。

⑦事業者が個人データを販売するかどうか、事業者が個人データを販売する第三者のカテゴリー、および販売の目的。

⑧ 個人データに関する事業者のデータ保持実務慣行およびそのような保持の目的の説明。

⑨このポリシーに基づいて個人がどのように権利を行使できるか。

⑩ 事業者のデータ・セキュリティ実務慣行の一般的な説明。

⑪ プライバシー・ポリシーの発効日。

⑫ プライバシー・ポリシーに重要な変更を加えた場合、またはプライバシー・ポリシーと互換性のない目的で個人データを処理することを決定した場合に、企業が消費者に通知する方法の説明。

 事業者のデータ・プライバシー慣行を反映するプライバシ・ーポリシーを維持しないことは、不公正で欺瞞的な実務慣行と見なされるが、消費者に私的な訴因(民亊告訴)を与える権利はない。

 また可能であれば、改定実施の60日前に、企業のプライバシー・ポリシーに重大な変更があった場合は消費者に直接通知する必要がある。

(5)それはどのように実施されるか?

 OPPAは、州司法長官事務局(AG)に調査権限と独占的な法執行権限を付与する。 AGが、企業がOPPAに違反する行為または慣行に従事している、または従事していると信じる合理的な理由がある場合、AGは、郡裁判所に訴訟を提起し、確認判決、差止命令による救済、罰則(3倍額損害賠償(treiple damages)を含む)(注5)、および弁護士費用を含む民事訴訟を求めることができる。ただし、そうする前に、AGは訴訟の開始前に企業に対し、30日間の是正(修正)期間を提供する必要がある。

  同様の他州の制定法とは異なり、OPPAは米国国立標準技術研究所(NIST)のプライバシーフレームワーク(注6)に準拠する企業にセーフハーバーを提供する。

(6)法案OPPAはどこにあるか?

 OPPAは、オハイオ州知事のリチャード・マケル・デワィン(Richard Michael „Mike“ DeWine)の支援を受けて2021年7月12日に上程されたが、発効日は含まれていない。

Richard Michael DeWine知事

2.各州の立法動向を検索・調査している”iapp”の”US State Privacy Legislation Tracker Bills introduced 2021”および”National Conference of State Legislatures(NSCL)”の内容の比較

  個別ローファームのレポートは成立済の個別立法の解説を行っているが、各州の立法動向を調査・比較している”International Association of Privacy Professionals(iapp)””US State Privacy Legislation Tracker Bills introduced 2021”および”National Conference of State Legislatures(NSCL)”を具体的に比較してみた。

(1)iapp

”US Sate Privacy legistlation Tracker”(2021.5.26現在)が全州の上程された全法案をトラッキングしている。なお下記の各州の状況についてのグルーピング結果(特に②、③)は定義の説明がないがゆえに正確に見るとやや疑問がある。

①知事の署名により成立したのが4州

ネバダ(2019.10.1 施行)(注7)

カリフォルニア(2本:CCPA;CPRA)、バージニア(SB 1392)、コロラド(SB 190:2021.7.7に州知事が署名済)

 ②委員会等で審議中が5州(active bills)

コネチカット(SB 893 2021.6 .9 委員会で審議終了)、イリノイ(HB3910:House Rules Committeeで継続審議)(注7-2)、マサチューセッツ(Bill S.46 :Massachusetts Information Privacy Act: Referred to Joint Committee on Advanced Information Technology, the Internet and Cybersecurity)、ニューヨーク(3法案):

Assembly Bill(議会法案) 680(New York Privacy Act):Assembly Consumer Affairs and Protection Committee

A6042(Digital Fairness Act)

 SB 567 Senate Consumer Affairs and Protection Committee

 テキサスHouse Bill 3741 (Prior Session Legislation)委員会審議で中断

 ③上程されたが委員会等で継続審議や時間切れの州(failed bill)

アラバマ、アラスカ、アリゾナ、フロリダ(HB969:2法案)、ケンタッキー、メリーランド、ミネソタ(HB 1492;HF 36の2法案)、ミシシッピー(SB 2612)、ノースダコタ(HB 1330)、オクラホマ(HB 1602)、ユタ(SB 200 :無期休会)、ワシントン(HB 1433;SB5062の2法案)、ウェストバージニア(BS3159 :無期休会)

 計21州

 (2)iappのカルフォルニア(CCPA,CPRA)、バージニア、コロラドの3州の計4つの保護法の内容比較

 2021.7 作成 著者はCathy Cosgrove &  Sarah Rippy「Comparison of Comprehensive:Data Privacy Laws in Virginia,California and Colorado」である。全18頁にわたる比較資料(あくまで公式資料にあたることと注記されている)

Cathy Cosgrove 氏

Sarah Rippy 氏

 主な比較項目について概要を説明のうえ、特徴点をあげる。なお、3州+ネバダ州法、GDPR,Uniform Law Commission 統一法委員会のUPDPA(Uniform Personal Data Protection Act (UPDPA)につき消費者の権利を詳細に比較したレポートもある。

(ⅰ)適用となる事業者の規模(scope)

 取扱う年間個人顧客数や年間総売上高(CCRA)を定め、一定規模以下の事業者は適応除外とする。

(ⅱ)適用の例外機関

 バージニア州やコロラド州は以下の点でほぼ同じ 内容である。

:State government entities, nonprofits,institutions of higher education,

financial institutions or data subject to Title V of Gramm-Leach-Bliley Act,covered entities or business associates subject to the Health Insurance Portability and Accountability Act and the Health Information Technology for Economic Clinical Health Act(注8)

 (ⅲ)消費者の権利

以下の項目はほぼ共通しているが、CPRAは見直された方だけにより厳格内容を有している。

・Right to Know whether a controller is processing the consumer’s personal data.

・Right to Access personal data processed by a controller.

・Right to Correct.

・Right to Delete.

・Right to Data Portability.

・Right to Opt Out of targeted advertising, the sale of personal data or profiling

CPRAの項目

・Right to Know what PersonalInformation is Being Collected and

・Right to Access personal information.Section 1798.110.

・Right to Know what Personal Information is Sold or Shared and to Whom. Section 1798.115.

・Right to Correct. Section 1798.106.

・Right to Delete. Section 1798.105, subject to certain exceptions.

・Right to Data Portability.Section 1798.130(a)(3)(B)(iii).

・Right to Opt Out of Sale or Sharing.Section 1798.120. Definition of sharing includes “cross-context behavioral advertising,” a separately

defined term.

・Right to Limit Use and Disclosure of Sensitive Personal Information.

Section 1798.121.

(ⅳ)事業者controller の責務 

・Data Minimization.

・Purpose Limitation.

・Reasonable Data Security

・Sensitive Data

・Privacy Notice Required. 

・No Discrimination

・Required disclosure of sale

コロラド州はDuty of Purpose Specification、Duty to avoid secondary use.

バージニア州やコロラド州はRequired disclosure of saleを入れている。

(ⅴ)処理者の任務/サービス・プロバイダー/第三者および契約上の要求(ROLE OF PROCESSOR/SERVICE PROVIDER/THIRD PARTY AND CONTRACTUAL REQUIREMENTS)

・Role of Processors

・Service Provider and Third Party. definition

 なお、コロラド州はProcessor Obligationsにつき、規定が細かい。

*******************************************************************************************:

(注1)3州の包括保護立法内容についてはiappの個別の解説もある。

(注2)各州法の規定内容の理解のむずかしさの最大の理由は、①立法の背景、②基本的考え、③総論規定、④各論が項目が整理されていないことであろう。このような点がローファームやiapp等の解説が利用される理由であろう。

(1)ネバダ州 Nevada Privacy of Information Collected on the Internet from Consumers Act (NPICICA),ただし、内容がいわゆる包括法ではないためか(?)各解説ではあえて同州は除かれていることが多い。しかし、筆者が専門解説の内容を読む限り実質的な差はないと思う。

(2-1)カリフォルニア州CCPA

CIVIL CODE - CIV

DIVISION 3. OBLIGATIONS [1427 - 3273.16]  ( Heading of Division 3 amended by Stats. 1988, Ch. 160, Sec. 14. )

PART 4. OBLIGATIONS ARISING FROM PARTICULAR TRANSACTIONS [1738 - 3273.16]  ( Part 4 enacted 1872. )

TITLE 1.81.5. California Consumer Privacy Act of 2018 [1798.100 - 1798.199.100]  

(2-2)カリフォルニア州CPRA

・ CPRA は、カリフォルニア州民法典(Civil Code)中の独立の編(Title)"Title 1.81.5 - CALIFORNIA PRIVACY RIGHTS ACT OF 2020"である。従って、CPRA の条文中における"this title"とは CPRA 自体を指す。そこで、訳注ではこれを「CPRA」と訳出した。

(3)バージニア州Consumer Data Protection Act(CDPA).

 州内の個人データを管理および処理するための法的フレームワークを確立した。この法案は、州内で事業を行い、(i)少なくとも100,000人の消費者の個人データを管理または処理するか、(ii)総収入の50%以上を個人データの販売から得て、少なくとも25,000人の消費者の個人データを管理または処理するすべての者に適用される。この法案は、データ管理者と処理者の責任とプライバシー保護基準の概要を示す。この法案は、州または地方自治体等公的機関には適用されず、連邦法に準拠する特定の種類のデータおよび情報の例外が含まれる。この法案は、個人データへのアクセス、修正、削除、コピーの取得、およびターゲットを絞った広告の目的での個人データの処理をオプトアウトする権利を消費者に付与する。この法案は、司法長官が法律違反を法執行する独占的な権限を持っていることを規定しており、消費者プライバシー基金はこの取り組みを支援するために設立された。この法案の施行日は2023年1月1日である。

(4)コロラド州:Colorado Privacy Act (CPA) 

 2021年7月8日、コロラド州は、コロラド州ジャレッドポリス知事が法案に署名した後、コロラドプライバシー法を正式に制定した(施行は2023年7月1日)。 法律を可決することで、コロラド州は、2018年のカリフォルニア州と今年初めのバージニア州に続いて、包括的なプライバシー法を制定する3番目の米国州になった。 

(注3)全米連邦等の公的機関または州の下部機関が一律適用除外としている理由がいまいち理解できない。EUのGDPRでは実際2019年8月29日、ベルギーのNational Revenue Agency(国家歳入庁)が検査過程での個人情報の漏えい事件で、GDPR第32条に基づき技術面、組織面で十分な情報キュリテイ対策取らず個人情報を扱ったことを理由に情報保護委員会(Комисия за защита на личните данни)から260万ユーロ(約3億3800万円)の制裁金を命じられた例がある。

 ブルガリア情報保護委員会のリリースを以下で仮訳して引用する。なお、漏えいした機微情報の範囲、被害者数が極めて多い点などが制裁金額の多さに影響していることは明らかである。

「国家歳入庁(NRA)が1か月以内に実施した検査の過程で、NRAはその活動を実施するにあたり、個人データ管理者として適切な技術的および組織的措置を実施していないことが判明した。

 ブルガリア市民の名前、PIN、住所、電話番号、電子メールアドレス、その他の連絡先情報、個人の年次納税申告書のデータ、個人の支払所得に関するお問い合わせ、保険申告のデータ、健康保険料のデータ(ただし、医学的状態や市民の治療に関する情報は除く)、行政違反の発行された行為に関するデータ、ブルガリア郵便ADを介した税金と保険債務の支払いに関するデータ、および海外で支払われたVATの要求と払い戻しに関するデータ。

 インターネット上で違法にアクセスおよび流布された情報には、4,104,786人の生存する個人、ブルガリア人および外国人、および1,959,598人の死亡者を含む合計6,074,140人の個人データが含まれていることが確認されている。(以下、略す)」

(注4)オハイオ州改正法令集(Ohio Revised Code)には、恒久的かつ一般的な性質を有するオハイオ州議会の現在のすべての法令が含まれており、条項、編、章、および節に統合されている。 しかし、議会総会の制定案の唯一の公式出版物は「オハイオ州の法律」である。オハイオ州改正法令集は単なる参照である。

オハイオ州改正法令集は公式に印刷されていないが、いくつかの非公式であるが認定された(オハイオ州務長官による)商業出版物がある。

 (注5)一定の法令で認められているもので、3倍額損害賠償は、懲罰的損害賠償の対象となる被告に対する訴訟で陪審員が行った原告の実際の損害賠償額を決定の3倍額とする裁判官の決定である。懲罰的損害賠償は、被告の行為が悪意があった場合、または原告の権利を無謀に無視した場合に与えられる。懲罰的損害賠償は、特定の損失または傷害に対して原告を補償するのではなく、将来的に被告によるこのような不正行為を抑止するように設計されている。このような損害は、損害賠償を処罰しないことを補償するという規則の例外である。被告による不正行為があった場合、懲罰的損害賠償がしばしば与えられる。

 (注6)NRI 藤井 秀之「【 解説】】NIST プライバシーフレームワークの概要と位置づけ」が詳しく解説している。

 残念なことにNIST(National Institute of Standards and Technology)を「米国国立標準研究所」と訳されているは貴重なレポートだけに残念である。

(注7)ネバダ州のプライバシー法(Nevada Privacy of Information Collected on the Internet from Consumers Act (NPICICA) )

 ネバダ州のプライバシー法は2019年5月29日に州知事により署名され、有名なCCPAの3か月前の2019年10月1日に施行された。法律の内容は非常に似ているが、「販売」の定義方法に大きな違いがある。ネバダ州の法律はより狭く、すべてのサービスプロバイダーを対象としているわけではなく、金融機関に対してより寛大である。CCPA法とネバダ州法はどちらも「企業は消費者のオプトアウト要求の正当性を検証するプロセスを考え出し、60日以内に要求に応答することを要求する」という点で類似しているが、カリフォルニア州と同様に、ネバダ州の法執行は司法長官の

(注8) 各国の適用例外規定に関し、GDPRは第9条で極めて限定した定めをおいている。

第9条 特別な種類の個人データの取扱い 

Art. 9 GDPR Processing of special categories of personal data

  1. Processing of personal data revealing racial or ethnic origin, political opinions, religious 

   or philosophical beliefs, or trade union membership, and the processing of genetic data,  

   biometric data for the purpose of uniquely identifying a natural person, data concerning

   health or data concerning a natural person’s sex life or sexual orientation shall be

   prohibited.

  1. Paragraph 1 shall not apply if one of the following applies:

   (a) the data subject has given explicit consent to the processing of those personal data for

     one or more specified purposes, except where Union or Member State law provide that 

     the prohibition referred to in paragraph 1 may not be lifted by the data subject;

   (b) processing is necessary for the purposes of carrying out the obligations and exercising 

      specific rights of the controller or of the data subject in the field of employment and 

      social security and social protection law in so far as it is authorised by Union or Member 

      State law or a collective agreement pursuant to Member State law providing for 

      appropriate safeguards for the fundamental rights and the interests of the data subject;

   (c) processing is necessary to protect the vital interests of the data subject or of another 

      natural person where the data subject is physically or legally incapable of giving 

      consent;

   (d) processing is carried out in the course of its legitimate activities with appropriate 

      safeguards by a foundation, association or any other not-for-profit body with a political, 

      philosophical, religious or trade union aim and on condition that the processing relates 

      solely to the members or to former members of the body or to persons who have 

      regular contact with it in connection with its purposes and that the personal data are 

      not disclosed outside that body without the consent of the data subjects;

   (e) processing relates to personal data which are manifestly made public by the data 

      subject;

   (f) processing is necessary for the establishment, exercise or defence of legal claims or 

     whenever courts are acting in their judicial capacity;

   (g) processing is necessary for reasons of substantial public interest, on the basis of Union 

      or Member State law which shall be proportionate to the aim pursued, respect the 

      essence of the right to data protection and provide for suitable and specific measures to 

      safeguard the fundamental rights and the interests of the data subject;

   (h) processing is necessary for the purposes of preventive or occupational medicine, for the 

      assessment of the working capacity of the employee, medical diagnosis, the provision of 

      health or social care or treatment or the management of health or social care systems 

      and services on the basis of Union or Member State law or pursuant to contract with a 

      health professional and subject to the conditions and safeguards referred to in 

      paragraph 3;

   (i) processing is necessary for reasons of public interest in the area of public health, such as 

     protecting against serious cross-border threats to health or ensuring high standards of 

       quality and safety of health care and of medicinal products or medical devices, on the 

       basis of Union or Member State law which provides for suitable and specific measures 

       to safeguard the rights and freedoms of the data subject, in particular professional 

       secrecy;

(j) processing is necessary for archiving purposes in the public interest, scientific or 

  historical research purposes or statistical purposes in accordance with Article 89(1) 

  based on Union or Member State law which shall be proportionate to the aim pursued, 

  respect the essence of the right to data protection and provide for suitable and specific 

  measures to safeguard the fundamental rights and the interests of the data subject.

  1. Personal data referred to in paragraph 1 may be processed for the purposes referred to in point (h) of paragraph 2 when those data are processed by or under the responsibility of a professional subject to the obligation of professional secrecy under Union or Member State law or rules established by national competent bodies or by another person also subject to an obligation of secrecy under Union or Member State law or rules established by national competent bodies.
  2. Member States may maintain or introduce further conditions, including limitations, with 

  regard to the processing of genetic data, biometric data or data concerning health.

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