Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

「中国のサイバーセキュリティ監視機関が国内人気オンラインサービス10社のプライバシーポリシーの監査計画を発表(その2)」

2017-08-11 08:00:00 | 個人情報保護法制

Last Updated: feburary 13 ,2019

3.CAC,MIIT,SAC等による個人情報保護の改善キャンペーン

  7月26日の新華社通信は、中国サイバースペース管理局(国家互联网信息办公室:Cyberspace Administration of China (以下「CAC」という)、産業・情報・技術部(中华人民共和国工业和信息化部:Ministry of Industry and Information Technology:MIIT)、公安部(中华人民共和国公安部)(Ministry of Public Security:MoPS))、国家標準化委員会(国家标准化管理委员会:SAC) は、個人情報の保護を改善するための政府キャンペーンを開始する計画であると報じた。

 「個人情報保護を改善する行動計画」と呼ばれるこのキャンペーンは、中国で最も人気のある10のオンラインサービス会社のプライバシー・ポリシーの監査から始まる。 

 CACのサイバーセキュリティー調整局の担当官吏は、プライバシーポリシー監査は、2017年6月1日に発効した中国の新しい「サイバーセキュリティー法(中华人民共和国网络安全法:以下「CL」という)」を実施するための重要なステップであると指摘した。このプロセスを通じて、規制当局は個人情報の保護と中国のユーザーの情報使用によるサービス改善とのバランスをとることになろうと述べている。

  今回の計画の導入は、政府機関における企業のデータ保護実務への関心の高まりを示している。中国で事業を行う企業は、法的要件やベスト・プラクティスに合致するため、プライバシー・ポリシーとデータ取扱実務(data protection practices)を見直し、検討することを行う必要がある。

(1) CACの行動の背景:個人情報標準化ドラフト 

 前回のInside Privacy記事 (第2節)で説明したように、CACは包括的なデータ保護の国家規格、すなわち情報セキュリティ技術-個人情報セキュリティ仕様 (「個人情報標準化草案)を開発する努力面でリードしている。CACは、2017年1月に個人情報標準草案に関する一般市民等のコメントを公募しており、この標準化草案は間もなく完成する予定である。 

 EU「一般データ保護規制(GDPR)」などの他の最新のデータ保護基準に相当する範囲で、個人情報標準化草案は、個人情報の「収集(collection)」、「使用(use)」、「保管(storage)」および「処理(processing)」を規制する。個人情報管理者(personal information controllers)および処理者(personal information processors )は、そこに規定されている諸原則、プロトコル、およびセキュリティ要件を遵守することが求められる。とりわけ、個人情報標準化草案では、個人情報管理者がプライバシー・ポリシーを策定のうえ、公開することが求められており、具体的に企業のプライバシーポリシーを評価するため、この監査で使用される可能性が高いプライバシーポリシー・テンプレートが提供される。 

 (2) 主要10社のプライバシーポリシーの監査 

新華社通信(Xinhua)の記事によると、微信(WeChat)(筆者注11)、新浪微博(Sina Weibo ) (筆者注12)(筆者注13)(筆者注14)、淘宝网(Taobao)  (筆者注15)京东JD.com  (筆者注16)支付宝(Alipay)(筆者注17)、高德地图:AMAP (筆者注18)百度地图:Baidu Maps  (筆者注19)滴滴出行:Didi Chuxing  (筆者注20)航旅纵横(Umetrip) (筆者注21)携程(Ctrip )  (筆者注22)の10社の中国のオンラインサービス会社が最初に監査されることになる。これらの企業のサービスは、ソーシャルメディア、電子商取引、オンライン決済、デジタル・マッピング、チケット予約サイトなど、個人情報が積極的に収集される分野を対象としている。

 監査項目としては、「個人情報がどのように収集され、どのような個人情報がどのように収集されているか」、「ユーザーのデータ利用の状況(たとえば、ユーザープロファイリングの目的に使用されるかどうか」、「個人情報へのアクセス権や削除権、およびこれらの権利に制限があるかどうかについてユーザーにどの程度明確に通知されているか」などの情報が含まれている。 

 CAC等の規制当局は、2017年9月中旬〜後半にかけて今回の監査の結果を要約し、公表することを目指し、個人情報の保護を業界全体で推進することを奨励している。  

 監査の結果、不十分なプライバシーポリシーに対する罰則は現在予想されていないが、オンラインサービスを提供する中国の大企業はプライバシーポリシーにもっと注意を払うようである。例えば、、中国最大のデジタル地図プロバイダーである高德地图(AMAP)(筆者注18)は、7月28日に個人情報保護草案の最新版に従って、プライバシーポリシーの新しいバージョンをリリースした。

4.附則:「高德地图(AMAP:autonavi) の隐私权政策(プライバシーポリシー)」

 2017年7月27日付けの改正「高德地图(AMAP:autonavi) の隐私权政策(プライバシーポリシー)」を全仮訳する。なお、AMAPのプライバシーポリシーは2019年3月4日付けで改正8/11(40)されている。

 なお、原文における下線の箇所および筆者においてキーワードと思われる箇所はこの仮訳では極力原文を併記した。

 また、(筆者注16)で述べた「京東商城(JD.com)」のプライバシーポリシーも高徳のものに近い内容であり、ここではあえて訳さないが中国語に自信のある読者はチャレンジされたい。 

 このプライバシーポリシーは、コンピュータ、携帯モバイル情報端末、カーナビゲーション・システム、スマート・ミラー(smart mirrors) (筆者注23)、運転記録機器およびサービスおよびオープンプラットフォーム製品とサービスを含むがこれらに限定されないソフトウェア、ウェブサイトおよびサービス(総称して「高德の製品またはサービス」という)に適用する。 

 このポリシーは、以下のことを理解するのに役立つであろう。  

(1)当社は、あなたの個人情報を如何に収集および使用するか。(我们如何收集和使用您的个人信息)

(2)当社は、クッキーおよび同様の技術を如何に使用するか(我们如何使用Cookie和同类技术。) 

(3)当社は、あなたの個人情報を如何に共有、移転および公開するか。(我们如何共享、转让、公开披露您的个人信息。)  

(4) 当社は、あなたの個人情報を如何に保存、保護するか。(我们如何保存及保护您的个人信息。)  

(5)当社は、あなたの個人情報を如何に管理するか。(您如何管理您的个人信息。)

(6) あなたの個人情報を誰と共有するか。(您共享的信息。) 

(7) 個人情報の取扱いの準拠法および紛争解決方法。(适用法律与争议解决。)

(8) 未成年者の保護施策。(未成年人保护。) 

(9) 本ポリシーの改正(变更。) 

(10) 問い合わせ窓口(联系我们。) 

  あなたが高德の高品質の製品またはサービスを利用する場合、あなたは当社があなたの個人情報をどのように扱うかにつき信頼する。高德は個人情報の重要性を理解し、あなたの個人情報を安全かつ制御可能なよう適切なセキュリティ対策を講ずるように努める。あなたは、注意深くこのポリシーを読み、完全に理解し、同意を確認した後に高德の製品またはサービスの使用されたい。あなたが高德の製品またはサービスの利用を開始したときは、このポリシーに同意し、また当社の本ポリシーに従い、収集、使用、共有、転送、公開およびて個人情報の保護につき「同意」したものとする。(请您务必认真阅读本政策,在确认充分了解并同意后使用高德产品或服务。一旦您开始使用高德产品或服务,即表示您已同意本政策并同意我们按照本政策收集、使用、共享、转让、公开及保护您的信息) 

**************************************************************************************************************** 

(筆者注11) 微信(中国語読み:ウェイシン、WeChat)は中国大手IT企業テンセント(中国名:騰訊)が作った無料インスタントメッセンジャーアプリである。「微信」とは、微少の文字数の手紙を意味する。(Wikipedia から一部抜粋)

 なお、WeChatの日本法人サイトのプライバシー・ポリシーを必ず参照されたい。ここで指摘すべき基本的問題点をあえて挙げる。

① 技術・専門用語が多すぎる。

② 利用者の同意条件が多すぎる。 

(筆者注12) 新浪微博(シナウェイボー、NASDAQ: WB)は、中華人民共和国・新浪公司の運営するミニブログサイトである。TwitterとFacebookの要素を併せ持ち、中国全体のミニブログユーザーのうちの57%、投稿数にして87%を占める。現在、中国で最も人気のあるウェブサイトの一つ。SINA Corporationは2009年8月に発足し、2016年9月時点で全世界6億人以上ユーザーを抱える中国圏最大のソーシャル・メディアである。(Wikipedia から一部抜粋) 

(筆者注13) 2017年7月7日『新浪日本微博』サイトは、以下の告示を行った。中国のソーシャルメディアのわが国への浸透度を測るうえで見逃がせないメッセージ例である。 

『新浪日本微博』は強力なインターネットメディア「新浪(SINA)」の日本における広告・PRの独占販売権と「微博(Weibo)」の日本における広告・PRの販売権を取得し事業を開始いたしました。

さらに「新浪(SINA)」の<海外旅行サイト><海外不動産サイト>などの、日本情報サイトを日本国内で編集し運用する権利を獲得。

企業や自治体のみなさまのPRや広告、プロモーションのご要望を日本国内でお聞きし中国語で編集。中国の新浪サイトにダイレクトにアップすることが可能になりました。中国の人々への効果的なコミュニケーションツールとしてスポットの当たるインターネットメディアにワンストップで応えられるサービスを目指してまいります。

637万人※を超える訪日中国人の日本の観光やショッピング、スポーツやエンターティンメントへの関心が高まっています。訪日前の情報収集を行うタイミングでの効果的な広告・PRや、KOL(キー・オピニオン・リーダー)による「微博(Weibo)」投稿を通じた第三者評価の拡散が、より日本の商品・サービス・文化への深い共感を作っています。また百貨店やドラッグストア店頭で見られる、商品購入に伴う口コミ、撮影した写真の発信・拡散が大きな力、ブームを作っていることも事実です。

訪日時の購買だけにとどまらない、帰国後の越境ECでのリピート購入促進など、ターゲットの各ステージに合わせて総合的にコミュニケーションを図っていくことを可能にするサービスなどを企画しています。

私達『新浪国際・日本グループ』は、求められる日本発の質の高い最新の情報を、「新浪(SINA)」と「微博(Weibo)」という膨大な利用者数を誇る中国最大級のインターネットメディアを通じて「日本と中国をつなげるインターネットメディア」会社として中国と訪日中国人に向け発信してまいります。 

(筆者注14) 新浪微博日本法人サイト(新浪微博株式会社)のプライバシー・ポリシーを見ておく必要がある(一部のみここで引用する、原文に当たられたい)。

(筆者注15) 淘宝網(Taobao、タオバオ)は、中華人民共和国のオンラインモール。2003年にジャック・マーが創業したアリババ・グループによって設立された。本社は浙江省杭州市。法人名は浙江淘宝網絡有限公司(簡体字:浙江淘宝网络有限公司)(Wikipediaから一部抜粋)

(筆者注16) 京東商城 (JD.com)は、中国で360buyを経営していた劉強東が設立したWebサービス会社。中国北京市朝陽区に本社を置き、同社のECサイトである「JD.com」では、家電・PC・家具・衣類・食品・書籍などの商品をネット販売している。(Wikipediaから一部抜粋)

(筆者注17) 中国では2018年モバイル決済金額が約4,709兆円にものぼり、2013年からの5年間で約27倍に規模が拡大しています。そのうち、アリペイが占める決済額シェアは54%に達しており、中国消費者に最も使われているモバイル決済サービスとなっています。ショッピング・食事代・交通費はもちろん、屋台でのお買い物やお小遣いのやりとりまで、生活のあらゆるシーンでアリペイが浸透しています。(出典:新華網ニュース (2019年3月21日)から抜粋)

(筆者注18) 高徳地図は中国のアリババグループが運営している地図アプリで、今では中国でシェアがNo.1の地図アプリとも言われている。.「百度地図」アプリより多く利用されているようだ。

(筆者注19)「百度地図(バイドゥマップ)」は、中国の大手検索エンジンである「百度(バイドゥ)」が提供する地図検索サービスである。

Web、アプリの両方で利用可能で、ユーザーは百度地図で地図を検索できるほか、混雑状況や交通情報、気象情報、周辺の施設情報など、さまざまな情報を得られる。

(筆者注20) 滴滴出行 - DiDi、は、北京に本社を置き、5億5000万人以上のユーザーと数千万人のドライバーを抱える中国のハイヤー企業である。 以前の名称は 嘀嘀打车と、滴滴快的。滴滴

 (筆者注21)中国の民間航空情報の公式リアルタイム航空券旅程管理である、世界中の710,933便に関するリアルタイム情報を提供する。 信頼できるデータ、タイムリーな情報、および包括的なカバレッジ。 飛行機に乗る人、乗車する人、旅行する人、旅行する人には、完全な旅程管理、チケット検索、フライト状況、空港情報、地図ナビゲーションなどの機能が必要である。

 (筆者注22) 携程(Ctrip)は中国最大のオンライン旅行エージェンシー(OTA)。中国国内でCtripのブランドで認知されるが、海外ではTrip.comでブランド展開する。スカイスキャナー、Qunar(去哪儿)も運営する。

(筆者注30)で引用した微信(ウェイシン、WeChat)に比べ、内容、構成等がわが国や欧米のプライバシーポリシーに比較的類似しているが、技術的な面からみると説明不足の感はある。

************************************************************************************************

Copyright © 2006-2021 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「中国のサイバーセキュリテ... | トップ | 「中国のサイバーセキュリテ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

個人情報保護法制」カテゴリの最新記事