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11年前(2009年)に世界的にパンデミックとなった新型インフルエンザA(H1N1)発生時のわが国の反省はどうなったのか?(新型コロナウイルス対応:その1)

2020-03-01 09:28:58 | 海外の医療最前線

 新型コロナウィルス感染症が世界的かつ急速に拡散が進む中で、わが国政府をはじめ関係機関の対応は極めて遅々とした内容で、さらには在宅勤務、全国一斉の休校措置による混乱、また流通面ではマスクやトイレットペーパーの店頭からの消滅現象など上げれば切りがない。

 ところで、筆者は2009年6月以降の新型インフルエンザA(H1N1)のパンデミック時に米国や海外関係機関の取り組み内容を専門外ではあるが、できる限りフォローすべく、本ブログで取り上げた(その関係もあり、アクセス数が2月中旬以降、急増している)。

 そこで見られた注目すべき点をピックアップすると、例えば、1)米国では連邦議会調査局(CRS)は2009年10月29日に「2009年新型インフルエンザに関する主な法的問題の概要報告(CRS報告7-5700)」を公表(筆者注1)した。


  その他、筆者ブログでは、2) WHO事務局長マーガレット・チャン氏が新型インフルエンザ大流行について再度の警告、3)米国の新型インフルエンザの第二波への準備状況やワクチン開発の最新動向、4)海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向や新たな研究・開発への取組み、5)WHOの第3回国際保健規則緊急委員会の動向、6)EUのおける新型インフルエンザA(H1N1)の疫学面の研究動向等を取り上げた。

 なお、特記すべきは3)である。記憶の良い方は覚えておられるであろうが、新型インフルエンザA(H1N1)の世界レベルの拡散は約半年続いたのである。その筆者ブログ連載の最終回(全16回連載)は2009年11月24日の最終回の前文で「わが国の優先者への新型インフルエンザ・ワクチン接種が11月から始まり、一部では死亡事例の報告が聞かれるが(当時の厚生労働省の発表では死者198人(死亡率0.15))、前倒しスケジュールも発表されるなど、具体的な対応は進んでいる。」(以下は略す)と述べている。

 特に、わが国の死者数は本年2月28日現在で11名(クルーズ6名、国内5名)であり、H1N1の時と比較して決して致死率が低いとは言えないきわめて危険な肺炎であることを念頭に置き、かつ長期戦を覚悟で取り組まざるを得ない点を、政府・関係機関だけでなく国民も理解すべきである。

 今回の新型コロナウィルスの世界的拡散について、米国疾病対策センター(CDC)はほぼ毎日更新しているサイト「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」(筆者注2)で取り上げるとともに、検査キットの開発やワクチン開発動向を積極的に行っている。

 今回のブログは、前段で2009年に筆者が取り上げたブログのテーマに即してリンクを張った。なお、時間の関係で各ブログのリンクは100%メンテナンスできていない。時間を見てメンテナンスを行う予定ではいる。また。後段でCDCの「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」の重要項目を仮訳する。

 なお、2009年の時と同様に、今後とも筆者の理解できる範囲で海外の関連する動き等を連載でフォローアップしたいと考える。

1.2009年6月以降の新型インフルエンザA(H1N1)のパンデミック時に米国や海外関係機関の取組み内容
(1) 連邦議会調査局(CRS)の 2009年10月29日に「2009年新型インフルエンザに関する主な法的問題の概要報告(CRS報告7-5700)」(その1)同(その2完)

(2)米国の新型インフルエンザA(H1N1)の第二波への準備状況とワクチン開発の最新動向(その1)同(その2完)

(3) 海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(その1)同(その2)同(その3)同(その4)同(その5)同(その6)同(その7)同(その8)同(その9)同(その10)同(その11)同(その12-1)同(その12-2)同(その13)同(その14)海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな課題などへの疫学・臨床戦略(その15)同(その16完)


(4) WHO事務局長マーガレット・チャン氏が新型インフルエンザ大流行について再度の警告(その1)同(その2完)

(5) WHOの第3回国際保健規則緊急委員会の動向

(6) EUのおける新型インフルエンザA(H1N1)の疫学面の研究動向

2.CDCの「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」の重要項目(仮訳)
 CDC(筆者注2-2)の各研究所は、以下を含むCOVID-19対応をサポートしている。
CDC laboratories have supported the COVID-19 response, including:

 CDCは、臨床検体からの呼吸サンプル中のCOVID-19を診断できるリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(real time Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction (rRT-PCR) )(筆者注3)テストを開発した。 1月24日に、CDCはこのテストの試験プロトコルを公開した。 

 2月26日に、CDCと保健福祉省・食品医薬品局(FDA)は、オリジナルのCDCテストキットの3つのコンポーネントのうち2つを使用してCOVID-19を引き起こすウイルスを検出するプロトコルを開発した。 これにより、少なくとも40の公衆衛生研究所がテストを開始できるようになる。
 CDCは、シーケンス(sequencing) (筆者注4)が完成したときに、米国で報告された症例からGenBank(筆者注5)にウイルスのゲノム全体をアップロードした。
 CDCは、細胞培養(cell culture)でCOVID-19ウイルスを増殖させた。これは、追加の遺伝的特性評価を含むさらなる研究に必要であり、 細胞増殖ウイルスは国立衛生研究所(NIH)のBEIリソースリポジトリ(倉庫)( Biodefense and Emerging Infections Research Resources Repository (BEI Resources) に送られた。

3.CDC の新型コロナウィルスの検査キットの使用開始に関する米国のメデイア情報
 CNNによると、CDCは新型コロナウイルスに関し、感染を診断する検査キットを開発し、国内外の検査機関2月6日に配布を始めたと発表した。検査キットは通常のインフルエンザの診断で使用する機器で利用でき、4時間で結果が出ると報じた。
 しかし、2月13日CNNは新型肺炎の検査キットに不具合、作り直しへといった情報を報じている。

4.新型コロナウィルスの治療薬の開発動向
 わが国では、エボラウイルス治療薬アビガン錠を開発した富士フィルム富山化学の例が取り上げられている。

 一方、米国ではどうであろうか。
米国衛生研究所(NIH)に属する米国アレルギー・感染症研究所(NIAID)は、新型コロナウイルス感染の治療薬としての効果と安全性を調べるため、抗ウイルス薬の「レムデシビル(Remdesvir)」のランダム化二重盲検比較試験を、ネブラスカ大学医療センターで開始した。 

 現時点では新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の治療薬として、米食品医薬品局(FDA)承認を受けた薬はなく、COVID-19の治療に関する臨床試験はこれが初めて。 
 レムデシビルは、米バイオ医薬品大手のギリアド・サイエンシズにより開発された治験薬。これまでエボラ出血熱の治療で試験的に使用されたほか、動物実験ではコロナウイルスが原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)で有望な試験結果を示している。Yahoo Japan news~抜粋
 より詳細は、NIHリリース「NIH clinical trial of remdesivir to treat COVID-19 begins Study enrolling hospitalized adults with COVID-19 in Nebraska.」等を参照されたい。
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(筆者注1)  米国連邦議会調査局(CRS)が新型インフルエンザにかかる主要法律問題の概括報告の具体的な内容は2010年2月1日の筆者ブログで確認されたいが、わが国の政府、関係機関、研究機関等は以下掲げる項目につき11年前の大混乱の実態を踏まえ整理されているはずと考えるのは筆者のみであろうか。
[目次]
1.序論
2.非常時の措置 
(1).非常時担当政府機関 
・公衆衛生担当局 
・国家非常時事態宣言 
・スタッフォー法に基づく宣言
・社会保障法1135条の国民の受診権放棄または制限措置
・緊急使用認可(Emergency Use Authorizations(承認していない対策のための)
(2)国際保健規則(International Health Regulations:IHR)
・IHRの概観
・「国際的懸念発生時における公衆衛生緊急事態」宣言 
(3)患者の隔離と孤立措置担当の当局
・連邦機関
・連邦と州の調整機関
・連邦規則案
(4)国境入国問題 
・感染した在留外国人の非容認措置
・国民や在留外国人の隔離措置 
・国境の封鎖 
(5)航空と旅行制限
・ 航空会社の緊急時対策ポリシー 
・公衆衛生上の「国境または航空禁止者リスト(“Do Not Board” List)」
・連邦領空局(Federal Airspace Authority)
(7)学校閉鎖
3.ワクチン接種(Vaccinations)
(1)接種実施の背景
(2)ワクチンの配分
・概観
・2009年に先立つ選別的連邦の活動
・インフルエンザA(H1N1)緊急事態後の連邦の活動
・法的問題
(3)強制的ワクチン接種
・歴史と先例
・医療機関受持者と強制的ワクチン接種
・公衆衛生緊急事態時のワクチン接種命令
・モデル州非常事態における保健管理法(The Model State Emergency Health Powers Act)
・連邦政府の役割
4.公民権(Civil Rights)
(1)はじめに
(2)適正手続(Due Process)および保護の平等(Equal Protection)に関する憲法上の権利
(3)連邦無差別保証法(Federal Nondiscrimination Laws)
 ・「1973年リハビリテーション法(Rehabilitation Act)」504条(筆者注8)
 ・「1990年米国障害者法(Americans with Disabilities Act of 1990 :ADA)」
 ・「1986年航空バリアフリー法(Air Carrier Access Act )」
5.民事損害賠償責任問題
(1)「2005年災害危機管理および緊急事態準備法(Public Readiness and 
Emergency Preparedness Act :PREP Act)
(2)一般ボランティアおよび医療専門家ボランティアの民事責任問題
・「1997年ボランティア保護法(VVolunteer Protection Act of 1997)」
・緊急事態時における責任制限
・州等における災害相互応援協定(Emergency Mutual Aid Agreements)
6.雇用問題
(1)はじめに
(2)公共政策に違反する不当解雇(Wrongful Discharge)
(3) 「1993年介護休暇法(Family and Medical Leave Act of 1993:FMLA)」
(4)従業員保護法に関する州および連邦法

(筆者注2) COVID-19の世界的感染情報はジョンホプキンス大学のリアルタイムコロナのブレイク状況リアルタイム地図も参考になる。
Johns Hopkins Center for Systems Science and Engineering
Mapping 2019-nCoV
By Lauren Gardner, January 23, 2020

(筆者注2-2) CDCには1,700人を超える科学者、医師等がおり、アトランタからスポケーン、フォートコリンズ、シンシナティ、ピッツバーグ、モーガンタウン、アンカレッジ、サンファンに至るまで、米国中の200以上の最先端の研究所で働いている。 CDCの研究所は、その機能と専門知識が多様ですが、重要な役割を果たしアメリカの国民の生活と健康を24時間365日保護するという1つのミッションによって統一されている。(CDC laboratoriesのHP仮訳)

職種:医師(感染症専門医)、歯科医師、インフェクションコントロールドクター、薬剤師(感染制御専門薬剤師)、獣医師、看護師(感染症対策看護師)、臨床検査技師(感染制御認定臨床微生物検査技師)、診療放射線技師、臨床工学技士、歯科衛生士(感染管理歯科衛生士(感染制御歯科衛生士))、滅菌技士(第一種・第二種)、歯科技工士、農学者、生化学者、遺伝子学者、病理学者、法医学者、疫学者、気象学者、統計学者、理学者、微生物学者、細菌学者、事務職、プログラマ、官僚、軍人など多種多様。本部7,000人、支部8,500人(Wikipedia~抜粋 )

CDCの2020年予算額は65億9,400万ドル(約7,253億4,000万円)

(筆者注3) 細胞内において、遺伝情報であるDNAからタンパク質が合成される過程では、まずRNAと呼ばれるDNA配列のコピーが作製され(転写)、このRNAを基にタンパク質が合成される。DNAを大量に複製するにはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)が汎用されるが(詳細はPCRを参照)、PCRではRNAを直接複製することができない。そこで、一度RNAからDNAへと変換する逆転写と呼ばれる反応を行い、得られたDNAを鋳型としてPCRを行うことで、RNAをDNAとして大量に複製する。このRNAからDNAへの逆転写反応、それに続くPCRという一連の過程を、RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ぶ。本手法により、細胞内でどのような機能を持つRNAがどのくらい発現しているのかを調べたり、rRNAを標的として高感度で細菌を検出したりすることができるようになった。

(筆者注4) シークエンシング◆DNAを構成しているヌクレオチドの塩基配列の決定(gene sequencing)、またはタンパク質のポリペプチド鎖内のアミノ酸配列の決定(protein sequencing)を行う手続き。(英辞郎から抜粋)

(筆者注5) GenBank(ジェンバンク)は、米国立生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供している、塩基配列データを蓄積・提供している世界的な公共の塩基配列データベースである。(Wikipediaから一部抜粋 )

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