翌日、佐々木は北館主任教授に政府のプロジェクトに
参加したい旨を伝えに行った。北館主任教授は、
「ありがとうございます。私の役目を果たすことが出来ま
した。早速政府の担当者にその旨を伝えます。政府の仕
事、特にこの仕事をやるようになりますとかなり頻繁に
会議が開かれることになるように聞いています。そこで
授業のことですが、今何コマ授業を担当していますか」
「はい、講義の方は毎週2回です。それと大学院生の研
究指導、これはゼミナールも含まれていますがと卒業研
究の四年生のぜミナールがあります。それぞれ毎週1回
です」
「結構授業を担当していますね。わかりました、授業の方
は佐々木先生の推薦される方がいましたらその方にお願
いしましょう。しかし大学院生の研究指導は先生に担当
して頂かなければならないでしょう。時間割の都合があ
るようでしたら申し出て下さい。それと四年生のゼミナ
ールは...」
「四年生のゼミナールは大学院生に見て貰うことも可能で
すが」
「そうお願いできるようでしたらそうしていただけるとた
すかりますね。肝心なところは先生に押さえて頂かなけ
ればならないでしょうが、大きな問題がないようですね。
授業に関しては全面的に支援することが出来るでしょう。
ご安心下さい」
佐々木は政府プロジェクトがそんなに急に発足するとは
思っていなかったし、かなり切迫している問題が発生して
いるのかもしれないと思った。それはそうだろう。優秀な
若手の研究者が何の理由も無く数十人が失踪すること自体
があり得ない話なのだから。それにしてもこんなにとんと
ん拍子にことが進行するとは思ってもいなかった。いった
い何が起きているのだろうか。少し不安を感じたが、未知
なるものへ挑戦することにはなれているし、訳の分からな
い変事を解明してやろうという気持ちの方が強かった。
「北館先生よろしくお願いします」
「佐々木先生、あなたは自然科学者だから未知なるものへ
の挑戦を恐れることはないでしょうが、何かとんでもない
ことが起こりつつあると言うことはいえると思います。言
うまでもないことですが常に冷静に行動することを期待し
ています。それではこの資料に目を通しておいて下さい。
今週中か来週初めには政府の方から招集があるとおもいま
す。よろしくお願いします」
北館主任教授は分厚い資料の綴じ込みファイルを佐々木
に渡した。
「できる限りの努力をしますのでよろしくお願いします」
「お願いしますよ」
佐々木澄夫は渡された資料を持って立ち上がった。
「それでは、失礼します」
と言って主任教授室を後にした。