あの頃(新入生)19

2020-07-04 08:16:40 | 日記
その後の稽古も順調だ。

あゆみは、どんなに暑くとも、相変わらず長袖を着ている。

チラッと見えたあゆみのアザ、大丈夫だろうか?

すると、暑さのあまり足を出した時、また違うアザ…というか、怪我を見つけた。

大きめの絆創膏を貼っている。



次の日、ジャズの喫茶店に来ていた。

少し遅れてあゆみも走り込んで来た。

「おはよー!暑いね~!」

他愛もない話をしながら、思いきって聞いてみた。

「アザ…?怪我…?どうしたの?」

「あ、これ?」

アザを見せてくれた。

「武道を習っているの。それでちょっと…」

「そうなんだ…。どうしたのかと思った…。」

とても明るく振る舞っているようで、実は謎をたくさん抱えているんじゃないか…と思わせるあゆみ。

最近、この店に来て、珈琲を飲みケーキを食べながら、思いっきり笑うことが多いけど、時々、ふっと暗い表情を見せる。

それが、謎を抱えているように見せるのかも知れない。

「武道は、何を?」

「え?…いろいろ」

「へぇ…、そうなんだ…。カッコいいね」

帰り道、ひとりになった時、やっぱり違和感を感じた。

…武道は何を?

と聞いたとき、少し間があって、悩んだ気がする…。

…いや、それだけじゃなく…。

とことん仕事をしてお金を貯めて、そのあと、とことん芝居に集中できるのが楽しい…と言っていたけど、今の作品への集中ではなく、いつ役に立つかわからない武道に"浮気"をするのが、あゆみらしくない気がする。

それは、端役だから?

だけど、そんなあゆみでは無い気がするし…。

…やっぱり謎だ。