未然 57

2022-05-09 09:51:07 | 日記
結局、利奈さんは沙友理さんの存在も真央さんの存在も知っていた。

「私って、彼からしたら母親みたいなものなんでしょうね」

「…そうなのかな?」

たぶん、そうなんだと思う…。

だけど、最後に自分のところに帰ってくる…という不確かな自信もあるのかも知れない。

「たくさん浮気して、最後は自分のところに帰ってくる…なんて思ってないです。」

「……。」

…見透かされた?💦

「例えば彼が、最終的に他の人を選んでも仕方ないかな…と思うんです。春が長過ぎますものね。だけど、春をたっぷり過ごせて良かった…と思うようにしてます。例えば彼が私を母親のように思っていたとしても…、息子だって母親の思うようにならないじゃないですか…。彼もひとりの人間ですから、いくら長い時間を一緒に過ごしても、私の"物"ではないですし、彼はひとりの男性として彼の思う道を進むと思います。」

さすが…と思った。長く付き合ってこんな考えにたどり着くなんて…、人間が出来ている…。



未然 56

2022-05-08 07:49:41 | 日記
なんと、利奈さんは、彼氏の優太さんの浮気を知っていた。

どのくらいのことを知ってるのか?

沙友理さんのことも、真央さんのことも、知っているのか…。

「どのくらい、スマホチェックしていたの?」

「たまにです。そもそも、あまり会えなかったので、そうそうスマホチェックは出来てませんでしたけど…」

「浮気は…確実なの?」

思わず、核心な迫った質問をしてしまった。

「はい。ある女性は、同じ会社の人のようです」

…沙友理さんだ💦

「またある女性とは、趣味の集まりで仲良くなった、みたいでした。」

…真央さん?💦

「ふ、ふたりも?」

やはり、利奈さんの方がうわてのようだ💦

「たぶん、ふたりだと思います。」

「平気なの?

「平気じゃありません。でも、モテる人なので、仕方ないです」

「仕方ない…と言えるなんて、凄いね💦」






未然 55

2022-05-06 10:02:53 | 日記
それからしばらくは、沙友理さんも真央さんも来なかった。

いろいろあって、気持ちを立て直すのに時間が必要なんだろう…と思った。


そんなタイミングで利奈さんが来た。

「こんにちは!」

利奈さんは相変わらず元気で明るい。

「彼とは、順調ですか?」

思わず聞いてしまった。

「はい。順調です。付き合ってもう、6年目突入ですけど、マメに連絡もくれますし、彼は今、仕事が大変みたいなので、あまり『会いたい』と言わないようにしてます」

順調なんだ…💦

実際のところ、お付き合いが一番長い彼女が幸せになるべきだと思う。

だけど、いろいろと遊んだ彼は、元々の鞘に収まって幸せになることに、少し違和感を感じたが、だからと言って、何の罪もない利奈さんを不幸にするのことは望まない。

「『会いたい』と言わないなんて、優しいですね。」

「長年彼と付き合って学んだことです」

優太さんは、幸せだよなぁ…と、思った。

「たぶん、浮気もしてるんじゃないかと思うんです」

「…え?」

「実は、いけないと思いながらも、こっそりスマホをみました。彼、ロック掛けてるから安心してるんでしょうね。だけど、時々ロックを外すところを見てたから、簡単に外せるんです。」

「……。」

「それで、誰かと会ってるのを知ってるんです」

「え?…それで、彼を問い詰めたりしないの?」

「最初は問い詰めてたんですけど、もう諦めました。騒げば騒ぐほど、彼の心が離れていくだけだと思うので…」



未然 54

2022-05-05 10:17:41 | 日記
優太さんの浮気、三又を知ってしまって、なんとかそれぞれが傷付かないように、未然に防げないか…と思ってはみたものの、実際はサラッと事実を告げるということが出来ない。

しかし、真央さんによって、事実を知ることになって、事が動き出した。

謎のメールは、真央さんと優太さん、そして沙友理さんも知る人だった。

謎のメールの主は、なぜ匿名で、使い捨てのアドレスでメールを送ったのか…、そこは少し疑問があったが、おそらくこの件にしゃしゃり出て、トラブルに巻き込まれたく無かったんだろう…。だけど、正義感が優太さんを許せなかったんだろう…と予想した。



少しして、意気消沈した沙友理さんが来た。

「優太さんの本当の顔を見ることが出来ました。」

「……」

「真央さんって人から…。
……真央さん、ここへ来てたんですね」

「…はい。」

「真央さんが、ここへ来て相談してたことを聞きました。だけども、私の事を知っていても彼女に話さなかったこと、ありがとうございます」

「……」

「私の件も、早い段階で彼女に知られていたら、もっと早く解決してたのかも知れませんが、おそらく私のメンタルの事を心配してくれたんですよね。
自分で言うのもなんですが、私が真央さんを知った時、彼女の方が順調な状態だったら、たぶん抱えきれなかったと思います。」

「ごめんなさい」

「時間は掛かったけども、こうして謎が解けて良かったです。」

「…どうするんですか?」

「考えているところです。…だけど、たぶん別れます。」

沙友理さんは、真央さんと会って、突然聞かされた事実を受け止めるのにやっとだった。

ほんの短い時間でも頬が痩けてげっそりとしていた。