黒笑小説

東野圭吾著　集英社文庫　2008年4月25日　初版

東野作品と言えば、さとぽん君に詳しいのだけど、お暇で手にとってしまったものだから、ごめんなさい。私も書くわ。

『黒笑小説』のタイトル通り、まっ、ブラックユーモア。
最初の方の、新人作家が賞を獲るとこ、編集者や出版社の思惑をまじえてじりじりと発表の瞬間を待つあたりなんか、本物の作家でなければ書けないだろうな、というシーンの連続（笑）

賞をとった作家が陥りやすいであろう罠、なんかもちゃんと書かれてあるし。
解説の奥田英朗さんは、それを東野氏の『諧謔性』と評している。まさに（笑）

売れてる作家さんというのは、本当に『目の付け所がシャープ』だと感じる。
なんでもないようなことを見事に弄ってみせる。
例えば、“インポグラ”これは察しのいい方はすぐに分かると思うけれど、“バイアグラ”の反対バージョン（笑）
世の男性諸氏は、バイアグラなら欲しがっても・・・ひょっとすると、そのパートナーであるご婦人方も・・・ダメにするほうの薬なんぞ欲しがるか？というのがテーマで。　また、それが売れちゃうわけだけど（爆）

“モテモテスプレー”もそう。
容姿も頭も悪くなくて、女性にも優しいのに、なぜか「お友達でいましょう」といわれる、ある種気の毒な男。　それは何故か、なんていうことが見事に腑に落ちるように説明されている。　ちょっと読ませたい人物が身近にいそうで（爆×∞）
その男のためにシュッとひと吹きすればたちまちもてるようになるスプレーが発明されて、目出度しめでたしだと思っていたら、最後にどんでんが待っていたりと。

とっつきが悪いけれど、読んだら作者の力量を感じてうなってしまう作品がある。
勿論、東野さんにもそういう作品はある。
けれど、このく〇暑い時期には、そんな重厚な本を手に取る気にはならない。

読んであははと笑って、お昼寝のお供、みたいな気軽な本が今の時期にはありがたい。　結構、笑えるよ。このほかに『怪笑小説』『毒笑小説』というのもあって、三部作になるのかな？　面白そう・・・。