昭和なカメラ、Nikon EMと高校野球 〜ポカリスエット

画像は大塚製薬POCARISWEATのスクリーンショット

 甲子園の結果を伝える新聞紙面の隅にポカリスエットのCMが連日掲出されている。どことなく昭和チックな色合いで野球部員のユニホームもそれっぽい感じ。そして中島セナさん扮する校内新聞の女子部員(勝手にそう思って見ているのだが)が持つカメラもまた昭和のカメラ。なんと我らがニコン(Nikon)のEMである。

 ニコン EMは名機である。なぜ名機かと云うと、それまでの一眼レフは高性能ではあっても大きく重たく(そして高価で)操作が難しく(機械に不慣れな)女性が扱うには不向きであったのだが、EMは世界で初めて女性が使用することを想定して作られた、軽量小型で操作が簡単(かつ廉価)なカメラなのだ。

 さらにそのボディは可愛らしく、それでいて精密機械である一眼レフであることことを忘れていない、実に巧妙にデザインされているのだ。このEMをデザインしたのは泣く子も黙る世界一の工業デザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ(1938-)である。ニコンは1980(昭和55)年に発売となるMF一眼レフの最高峰F3とEMのデザインを同時にジウジアーロに依頼しておりその結果、大きさも性格もまったく異なるモデルでありながら共通したテイストを感じる仕上がりとなっている。

 上の写真では判断が難しいが、レンズは鏡胴がやや長く「カニの爪」が有るように見えることからEMと同時に発売されたAi Nikkor 50mm F1.8Sではなく、ひと世代前(1977年発売)のAi Nikkor 50mm F2であるように見えるがどうだろうか。

 と云うわけで、昭和な時代の高校野球部の球児たちを撮る女子新聞部員が持つカメラとしてEMを選んだ制作会社のセンスは概ね褒めて良い。ただし、先にも書いた通りレンズがAi Nikkor 50mm F2であるとすると、このレンズはEM発売一年前の 1979年に発売終了となっているので時代考証的には正確ではないと云うことになってしまう。

 ちなみに、大塚製薬が製造販売するポカリスエットは1980年の発売のようなので、この点を考慮して時代設定したCMであったとしたら、それは結構大した作品と云えるだろうか。


 今日はもう一枚。本日の主役たるNikon EM(レンズは国内未発売のSeries E 50mm F1.8)とNikon F3P(レンズはAi Nikkor 50mm F1.4S)。いずれも郷秋<Gauche>のコレクションより。

 横浜の住宅と地の中に残された小さな里山の四季移ろいを毎週撮影しているblog「恩田の森Now」に、ただいまは8月6日に撮影した写真を6点掲載しております。真夏の森の様子をご覧いただけたら嬉しいです。
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