私のガルパン戦車プラモデルの第75作目は、上図のシャーマンファイアフライとなりました。サンダース大付属高校チーム副長のナオミが砲手として搭乗する車輌です。その58.3口径17ポンド対戦車砲は、史実ではミハエル・ヴイットマンのティーガーⅠを仕留めたほどの強力さを誇り、ガルパンにおいてもその威力のさまが随所で表されています。これを操るナオミが、ガルパンでも一、二位を争う名スナイパーであることも、この戦車の存在感を高めています。
周知のように、ガルパンにおけるシャーマンファイアフライは、テレビ版と劇場版との二種の仕様が存在します。私の製作では2016年8月に劇場版仕様を仕上げていますので、今回はテレビ版の仕様に作ることになります。
ですが、シャーマンファイアフライのテレビ版仕様というのは、プラモでの再現が非常に難しいとされてきました。そのためか、劇中車を忠実に再現した先行作例をネット上においても未だに見かけません。
その一番の理由として、上図に挙げたように、車体サイズはICタイプだが外見はVCタイプという、実在の車輌には有り得ない謎仕様である点が知られています。ICはM4がベースであり、VCはM4A4がベースであるために車長が異なりますが、ガルパンの劇中車は両者を合わせたデザインでの3Dデータになっているため、外見にも色々と無理が生じています。
例えば、ICタイプは車体前部が鋳造であり、曲面ラインで構成されますが、劇中車はVCタイプの溶接での角ばった輪郭の前部を持ちます。しかも足回りはケイのM4、アリサのM4A1と共通であり、転輪は5本スポークタイプという、実際の車輌ではごく少数しか存在しなかった転輪になっています。
このように実車には存在しなかった仕様になっているため、ズバリの適応キットがある筈は無く、従来はICタイプのキットを無理矢理改造するという選択肢しかありませんでした。
それで私自身も「これはハードルが高い」と感じてずっと手をつけないままでした。無理矢理に改造しないといけない、という点にどうしても向き合うことが出来なかったからです。いざ作ると、もともと無理があるだけに失敗するのでは、という懸念が大きかったからです。
しかし、2019年秋に同じサンダース大付属高校チームのM4A6という、これまたプラモでの再現が非常に難しいとされてきた車輌を製作対象に含めていった経緯のなかで、シャーマンファイアフライのテレビ版仕様をどうするかという問題に再び直面することになりました。サンダース大付属高校チームの劇中車は全て作って再現する、という方針でしたから、いつまでも避けている訳にはゆかなかったのでした。
ただ、その時点でM4A6とシャーマンファイアフライテレビ版とが、ベース車輌で考えるとM4A4とM4との関係に同じであることに気付いていましたので、ひょっとしたら出来るかもしれない、という感触はありました。
そこで、これらの対応キットを色々調べて検討した結果、ニコイチの感覚でM4A4とICファイアフライのベースキットの車体前部を交換するという方法にたどり着きました。M4A6とICファイアフライの車体図面をパソコンに落とし込んで寸法を調べ、描画ソフト等を用いて車体前部の交換シュミレーションを試みたところ、無理せずに双方の劇中車を再現出来ることが判明したからです。
その見地をふまえて10月にドラゴンのM4A4をベースとしてM4A6を再現製作しましたが、懸念された諸々の誤差やミスは発生せず、むしろ寸法の現物合わせだけで大方出来てしまった形となりました。
その経験によって、シャーマンファイアフライの制作のモチベーションも高まったため、劇場版仕様を作って3年余りを経てのテレビ版仕様への製作にようやく踏み込めることになりました。
ベースキットには、上図のドラゴンの9104番のシャーマンファイアフライICハイブリッドハルタイプを使用しました。既にその車体パーツの前半分はカットしてM4A6の製作に供しましたので、入れ替わりにM4A4の車体パーツの前半分が箱におさまっていました。それと元の車体の後半分をあわせれば、劇中車の基本輪郭が成立するわけです。
ステップ1では車輪とサスペンションVVSSを組み立てます。転輪は5本スポークタイプのパーツがキットに無いため、アスカモデルの余剰パーツに差し替えます。
左がドラゴン本来のパーツ群、右がアスカモデルの余剰パーツにあった5本スポークタイプの転輪です。
シャーマンファイアフライのキットはタミヤ、ドラゴン、アスカモデルなどから出ていますが、タミヤとドラゴンの製品の転輪パーツは穴無しスポークタイプなので、劇中車とは異なります。最新のキットをリリースしたライフィールドモデルも同様ですので、これらのキットで劇中車に仕上げるには、穴あき5本スポークタイプの転輪を他から調達する必要があります。
アスカモデルの製品では穴無し、穴あきの両方の転輪パーツが入っていますので、むしろこれをベースキットにしても良さそうに思えるのですが、もともと品薄傾向が強いため、今回はどこを探しても入手出来ませんでした。今回のベースキットにドラゴン製品を選んだのは、そういう理由からでもありました。
組み立ててゆきました。アスカモデルの転輪は軸穴がやや大きいので、ドラゴンのサスペンションパーツに難なく組み合わせられます。サスペンション自体の組み立ては、アスカモデルの製品では細かくパーツが分かれていて手間取りますが、ドラゴンのは一体成型パーツになっていますので楽に組めます。
あわせて起動輪も作りました。
全て組み上がりました。 (続く)