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バーボングラス片手のロックな毎日

CMソングは商品名入りが多い

2021-05-23 16:53:41 | MUSIC/TV/MOVIE

「この木 なんの木 気になる木」

作詞家の伊藤アキラさんが亡くなられた。

といってもこの方の名前、存じ上げてなかったの。

お亡くなりになられたという訃報が、生前お作りになられた歌詞のあれこれと共に発表され、「あぁあの曲の詞を書いた人なのか」「伊藤アキラさんという方なのだね」と知ったくらいである。

 

普段何気に聞き流してしまう、テレビで流れるCMソング。

70年代のCMソングは企業名・商品名をメロディにのせたものが多かった。

有名なのはロート製薬。鳩が飛び立つバックで「ロート ロート ロ〜ォ〜トー」と繰り返される。

「ハウスバーモンドカレーだよ〜」「カルビーのかっぱえびせん」「しょ〜ちくばい(松竹梅)」「サッポロいちばん みそらーぁめん」

「ミルキーはママの味」とか「あ〜らよっ出前一丁」といったように、ちょっとイレギュラーでも基本的には、会社名や商品名をメロディにのせる。

商品名をメロディにのせることによって耳障りをよくし、知らない間に覚えてる。気がついたら口ずさんでるといった、まるで悪魔の白い粉のような中毒性で、知名度や認知度をあげようって狙い。

それが当時のCMソングの王道だ。

 

伊藤アキラさんのCMソングにはそれが無い。

代表作にあげられる「この木 なんの木 気になる木」は、日立のCMソング「日立の樹」だが、別に商品名も企業名も出てこない。

ライバルのナショナル(現:Panasonic)が、「あっかるいナショナル あっかるいナショナル 家中(うちじゅう)みんな 何でもナショナル〜」と企業名(ブランド名)を連呼してたのとえらい違いだ。

 

吉村大阪府知事の血迷ったかのような「ポビドンヨードがコロナに効く」発言によって、一気に品切れになったうがい薬「イソジン」のCMソングも伊藤さん作詞だ。

「ただいまのあとは ガラガラジンジン」

これも商品名は連呼されない。

タイトルが「ただいまのあとで」というこの曲は、家に帰ってきて「ただいま〜」って言ったら次はうがいだぞっと、まるで今の新型コロナ禍を見越してたかのような内容だが、商品名の「イソジン」はハッキリとは出てこない。

 

お線香の「星雲」のCMソング「幸せの青い雲」。

「星雲 それは君が見た光」とさとう宗幸が歌うのだが、この歌詞の中の「星雲」が商品名だとは思われていないだろう。「青葉城恋歌」のさとう宗幸が歌うフォークソングをCMソングにしたと、ほぼ勘違いされてると思う。確か映像は連凧が連なって靡いてような気がする。

 

とは言っても伊藤さんの作品でも、「きのこの山は食べ盛り」(きのこの山)とか、「おいしいシウマイ崎陽軒」(崎陽軒)など、ズバリそのまま商品名CMソングってのもある。

15秒や30秒という限られた時間では、やっぱり商品名や企業名を入れた方が効果的だものね。

 

伊藤さんの作品には「ゆったり たっぷり のんびり 旅ゆけば三日月 ホテル三日月」ってのもある。 

この頃の深夜放送(特にサンテレビ)ではホテルのCMが多かったな。ホテルのCMソングはホテル名をメロディにのせたやつが多い。

CM、いやCMソングのせいで、「伊東に行くならハトヤだね」と刷り込まれてる。

「琵琶湖おんせ〜ん〜ホテルこうよう〜」と、琵琶湖で温泉ならホテル紅葉でしょと、思わされてる。

「有馬温泉東洋閣へ」「ホテルにゅーあ〜わ〜じ〜」と、どこも行ったことも泊まったことないのに、ホテル名だけは覚えてしまってる。

だから後年、仕事や旅行で行った時に現地で実際の建物や看板を見つけた時は「おう、ここにあったのか」と感動してしまったりする。「初めまして」なのに「久しぶりだな」って、なんだか長年会えなかった友達に逢えたような気持ちになる。

 

「とれとれぴちぴちカニ料理〜」など、関西ローカルCMソングを多数作曲してる難波のモーツアルト・キダタローさんの名作に「京橋はええとこでっせ グランシャトーがおまっせ」がある。

関西人なら誰もが知ってるCMソングだが、ここも行ったことのある人は少ない。

京橋(大阪の京阪沿線/JR環状線のよ)で、実際にグランシャトーを見つけた人は「あれ?ここにあったん?」とか「実物はこんなのだったんだ」と思うだろう。アニメファンの聖地巡礼ではないが、「グランシャトーって、実際にあったんだぁ」って。実存したんだぁとなんか不思議な変な気持ちになる。

まぁ関西ローカルのCMだから、これ読んでる人が関西以外の人ならなんのこっちゃ意味不明だろうね。

だが、「あーらよっ出前一丁!」のフレーズで長年親しまれている出前一丁のCMソングも、伊藤アキラ作詞でキダ・タロー作曲なのですよ。(大瀧詠一さん作と勘違いされてるが、大瀧さんのは別バージョン)

 

CMには「わんぱくでもいい たくましく育ってほしい」(丸大ハム)や「24時間戦えますか」(リゲイン)のように、インパクトあるキャッチコピーで攻めるものもあるが、基本は商品・企業名をメロディに乗せたものが多い。

「あいてます あなたのローソン」「セブンイレブンいい気分」「あなたとコンビにファミリーマート」と三大コンビエンスストアはどれも王道パターンだ。

「メタルインドカレー」「いいことあるぞ ミスタードーナッツ」のようにショートなものから、「チョッコレイト チョッコレイト チョコレイトは明治」などミドルバージョン、「赤ちゃん夜泣きで困ったな かん虫乳吐き困ったな ヒヤヒヤひやの樋屋奇応丸」のようなロングバージョンまで多種多様。

伊藤さんの作品にも「パッ!とさいでりあ パッ!とさいでりあ 大好きな街だから 離れられない」というミディアムバージョンもある。

 

商品名や会社名を出さずとも、「白黒抹茶あがりコーヒーゆず桜」とメロディに乗せたCMソング戦略で、「ういろうといえば名古屋」と勘違いさせるのに成功した青柳の外郎のような例もある。

「北の国から」のテーマ曲のように「ダ〜バーダァ〜バダバダァー」とコーラスだけのネスカフェ・ゴールドブレンドや、「パッパラッパッパッパラッパ〜」とトランペットの音色だけの大鵬薬品の正露丸のようなCMソングもあるから、必ずしも商品名や企業名をメロディに載せる必要はないのかもしれないけどね。

 

替え歌バージョンってのもあるね。

最近のなら「Pana Home」「UQモバイル」などね。既存のヒット曲に企業名や商品名を替え歌で載せるってのは、安易だが効果的だからやるんだろうけど、俺に言わせりゃ手抜きだな。

一時期やたらと替え歌に合わせてダンスしたり、みんなで踊ったりするCMが多かったけど、最近はちょっと少なくなって安心してる(俺が心配することではないが)。

今のポカリスウェットのように芸術的なCMや、au「三太郎シリーズ」やsoftbank「白戸家」のようなショートコメディものもいいけど、やっぱりオリジナルCMソング入りがいいなぁ。

「みんな揃ってタケモトピアノ」のように、聞かせると泣いてぐずってた赤ちゃんが泣き止むといわれるCMソングもあるくらいだからね。(実際泣き止む)

アーティストの楽曲とコラボ・タイアップするのもいいけど、やはりオリジナルのCMソングでしょう。

 

CMソングではあまり商品名や企業名を連呼するものを作らなかった伊藤さんだが、歌謡曲の歌詞では恐ろしいまでに連呼するものがある。

渡辺真知子さんの「かもめが翔んだ日」だ。

「ハーバーライトが朝日に変わる その時 一羽の かもめが翔んだ」で始まる有名な曲だ。サビで「かもめが翔んだ〜」「かもめが翔んだ〜」って狂ったように続く。ちょっと怖い。狂気だ。

「あなた一人で生きられるのね」と続くのだが、そのあなたは彼のことなのか、かもめのことなのか、それとも私のことなのかよくわからん。

でも、港や船上でカモメを見るたびに、かもめが翔んだと連呼されるこの曲を思い出してしまうのだよ。

 

まぁ「春という字は 三人の日と書きます」(石野真子/春ラ!ラ!ラ!)や「ニッチもサッチもどうにもブルドッグ」(フォーリーブス/ブルドッグ)なんて歌詞を書く人だ。

凡人にはわからない世界なのでしょうね。

 



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